男子校に舞い降りた教育実習生
高校は男子校だった。そこへ教育実習でやってきた女子大生のM先生。英語科目を担当したのだが、もちろん俺はM先生にイタズラをすることにした。
教壇に立ち、名簿が入ったクリアシートを片手に、M先生が授業はじめに出席の点呼を取る。そのときを狙って、そのクリアシートの裏側に、昨晩ペン入れまでして丁寧に描いた【やましい絵】を入れておいた。点呼が始まると、M先生は名前を間違えないように名簿側をまじまじと見ながら学生個々の名前を呼び始める。もちろん、そのクリアシートの裏側は男子学生側から丸見えで、学生たちから笑い声が上がる。間もなく、なぜ学生たちが笑ってるのか気づいたM先生は、そのクリアシートの裏側を見るなり、「誰の仕業?!」と、強く怒るでもなく、多少はにかんだ笑顔を見せながら学生たちに尋ねる。
「Nがやったー!!」、同級生たちは犯人が俺NであることをあっさりとM先生にばらした。
それから少し経って、その英語科目の中間テストがあった。俺は100点をとる自信があった。そのテストの結果が、M先生から手渡された。ほぼすべてが◯、1箇所だけ×が付いていた。結果は98点だった。そんなことよりも、その回答用紙の一番下に、「Nくんなら100点をとると思ってたのに…」と書かれていた。
ときはあっという間に過ぎ、教育実習も終わるという最後の期末テスト。俺は「絶対に100点をとってやる!!」と気合が入っていた。いつもよりさらに自信があった。そして、M先生から手渡された採点結果。同級生たちの採点結果には、問題ごとに◯や×がついているのに、俺のだけ紙面いっぱいに大きなハナマルが一つ、そして「よくできました♡」とだけ書かれていた。まさに俺は、M先生の手の平の上で…?!
いま俺は、教員をしている。教育って本当に奥深いものだ。