リブランディングで再生した老舗ブランドの秘密
長年のブランドや老舗企業のブランド担当者、マーケティングマネージャー、経営層にとってリブランディングは「変えたい・変えられない」のジレンマが課題です。彼らは、ブランドの古さや時代遅れ感が課題になっている一方で、歴史や信頼を重視してブランドイメージを変えすぎたくないという悩みを抱えています。そうしているうちに、現代のデジタル化や消費者の価値観の変化に適応しきれず、ブランドの存在感が失われているケースも多いでしょう。今回はこんなジレンマとその解消について考えてみましょう。
「過去のブランド資産を活かしつつ、新しい方向性をどう設定するか?」
これこそが老舗ブランドの担当者の適切な設問と思われます。そこでブランドメッセージ、パッケージデザイン、広告表現やタレント(ブランドキャラクター)を変えてブランドの一新を図ります。これは一時的な効果を生みますが、残念ながら長続きしません。なぜなら消費者との関係性はなんら変わらないことが多いからです。消費者にとっては一時的な刺激に過ぎず、ブランド自体の経年劣化は解決されないことが多いのです。
アディダスのリブランディング、ストリートカルチャーとの新たな融合
リブランディングの本質的な成功例として、体験価値の一新を通じて顧客との関係性が劇的に変化した事例を紹介しましょう。アディダスはもともとスポーツ用品のブランドとして世界的に知られていましたが、2010年代に入り、ストリートカルチャーやファッションシーンと強く結びついたリブランディングを行いました。この新しい方向性により、顧客の体験価値が大きく変わり、従来のスポーツ愛好者層に加えて、ファッションや音楽を愛する若年層に支持されるようになりました。
従来のスポーツブランドからファッションアイコンへのリブランディングです。アディダスは、カニエ・ウェストとのコラボレーションや「YEEZY」シリーズを通じ、スポーツからファッションへとブランド体験を大幅に転換。消費者にとってアディダスは「パフォーマンス」の象徴から「個性表現」の手段へと変化しました。
そしてブランド体験の一新です。アディダス・ストアのデザインや、オンラインでのユーザーエンゲージメントを強化し、スポーツブランドとしての体験を越えた「ライフスタイルブランド」としての地位を確立しました。このリブランディングは、アディダスの従来の顧客に加えて、新しい消費者層のニーズに応えることに成功し、ブランドの存在感を大きく変える結果をもたらしました。
真のリブランディングにおける体験価値の変化
アディダスの事例から、リブランディングで重要なのは、顧客がブランドとの接点で得られる体験価値を根本から変えることと言えます。単なるデザイン変更やコンセプトの刷新ではなく、顧客がそのブランドを通じてどんな体験を得られるかを再構築し、「自分にとっての価値が一新される」ように感じさせることが、リブランディングの成功につながります。
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