製品ブランドの価値を構成する要素
製品ブランドの価値を構成する要素についてお話しましょう。具体的には次の3つになります。
1.素材価値
2.情報化価値
3.関係化価値
素材価値とは、例えば食品であれば「その製品の味そのもの/美味いかどうか」です。私のクライアント経験から日本酒、新潟清酒を例に説明しましょう。このブランドの素材価値は「淡麗辛口」となります。同時に特徴・味のキャラクターを示すものです。そのような味を体現するために、新潟県酒造組合では新潟清酒の「産地呼称(A・O・C)」を厳密に定めています。
米:原料はすべて新潟県産米
地:醸造地は新潟
水:仕込み水も新潟
質:精米具合60%以下の特定名称酒
技:品質管理委員会で定めたもの
これら5つの条件を満たしたものを「新潟清酒」と呼び、それを示す「産地呼称マーク」が各製品に付与されます。これは新潟清酒の素材価値を担保するものなのです。
情報化価値とは、コミュニケーションによって生じる価値のことです。ブランドにまつわるイメージやストーリーなどがそうです。新潟清酒を例にすれば、新潟が有名な米の産地であること。もちろん、酒造用には酒米(さかまい)や酒造好適米という特別な米を使用しますが、「米の品質と酒の品質」は美味しい酒造りにとって切っても切り離せないものだと、誰でもわかります。新潟の酒米の代表的なものは「五百万石(ごひゃくまんごく)」と言われる品種なのですが、新潟県酒造組合では県の醸造研究所と協力して「越淡麗」という、新たな酒米の開発にも成功。淡麗辛口の味わいはこうした「企業努力」から生まれています。これらのストーリーそのものを伝えることで、新潟清酒のブランド価値は素材以上に高まります。
関係化価値とは、「そのブランドをどこで売るか」です。同じ素材価値、情報化価値をもつ新潟清酒も、それが一流のすし屋や料理店、おしゃれな居酒屋で消費されるか、スーパーの特売棚で安売りされるかではブランドの価値に影響します。誤解を恐れずに言えば、新潟清酒の多くは「売ることを控える」をこころがけています。「知る人ぞ知るブランド」であること。新潟の蔵元は、あまりに有名になりすぎると「コモディティ化する」ことをよく知っています。「幻の○○」と言われるくらいがちょうどよく、そのような露出場所(売場)、露出の仕方を心がけています。
製品ブランドはこの3つ、「素材価値」「情報化価値」「関係化価値」の掛け算によって成り立っています。