第2章まとめ#3-24
地域を維持するなめらかな経済の作り方
グランドデザイン策定及び産業創出のプロセスにおいて、地域は常に資金不足の状態にあるため、地域外から外貨を獲得し、域内に入ってきた資金の流出を防ぐ仕組みが必要不可欠である。 それは4つある。作る過程を楽しんでもらう「プロセスエコノミー」、つけ払いの「記帳経済」、域内消費の促進の「地域通貨」、社会保障費の削減のための「時間年金」である。
地域における種々の問題
地域開発の具体的な手法に入る前に、大きな問題についてあげておきたい。1つ目に、地域資源を保全する地元住人に対して、観光客価格が低すぎる問題である。通常海外では、地域住人と観光客価格に 10 倍の差があるところがほとんどだが、日本はそうではない。
2つ目に、地域の多様な関係者の期待値と時間軸の違いである。首長は、地域の最大母集団の高齢者を優遇する。行政は単年度の予算に則って滞りなく進行することを優先するし、市民は自身の生活 は保障されることを望み、地域を商圏とする企業は地域内の人々の民度と所得の向上を望む。これを 調整しながら進める必要がある。
地域開発の5戒
地域開発において、全地域共通で意識するポイントは5つある。
1つ目に、人口増加ではなく関係人口増加を狙ってゆく。定住ではなく年半分、年1回などグラデーションを設け、継続的に関与できる人口を増やしてゆく。
2つ目に、地域において日本初、世界一のたった一つに焦点を当て、産業を作る。ブランド化を進め消費者に直接提供できる体制を敷くことで、価格交渉力を持ってゆく。
3つ目に、完成品ではなくプロセスを売る。地域開発は 50 年以上かかるもの。過程で消費者を巻き込み、参加すること自体を価値として感じてもらう。
4つ目に、ロジスティクスの整備である。交通の要所に情報や人、物資が集まり発展していく。集めたい人や物資に合わせて、交通手段を選び整備してゆく。
5つ目に、新しい技術を使うこと。電気やガスが枯渇し料金が上がっていく中、さらに省コスト化が必要不可欠。地域電力から始め、電気や熱など資源の最適分配のための仕組みを導入してゆく。
地域開発のビジネスモデル
地域開発において投資回収をする際に、活用できる方法として4つある。全てに共通するものとして、投資し、地域の資産価値を向上させる施策である。
1つ目は、村民権方式である。「住民税」に似た方式により定期支払いを受け付け、地域の共有資産価値を向上させる。この場合において、リターンの分配は、共有資産の使用権を分配することによって行われる。
2つ目は、不動産方式である。地域において最も付加価値の高い不動産の再開発を目的としたファンドを組成し、最終的には地域の団体に売却する。こうすることで初期に投資した人たちには金銭的なリターンが得られ、地域には価値が向上した不動産が残る。
3つ目は、自治体方式である。民間や教育機関が着手しづらい地域の課題に対して予算を調達し、執行する。この場合、国が予算の出し手であり、社会保障費の削減や納税能力の向上によってリターンを出し、地域に対しては福祉や教育における保障の充実によってリターンを出す。
4つ目は、基金運用方式である。基金は、地域における開発や人材育成の持続化を目的として行われる。預金者の資産の運用や、人材育成対象者の所得分配によってリターンが提供されるが、ROI の最大化ではなく、維持継続に焦点が当てられる。
(次回へ続く)