今日からできる直感トレーニングの方法
直感というのは、身体感覚に基づくものだ。その身体感覚をいかに繊細に捉えるか、というところに、直感を鍛えるポイントがある。
先日、台湾に行ったときに、アポイントまでにすこし時間があったので誠品書店に立ち寄った。そこで、台湾で出版されている本をプレゼントしたら喜ばれるだろうなと思いついた。数年前に、繁体字の翻訳がでていたのである。そこで探し始める前に、「ここに小山龍介の本があるか」ということを自分自身に問うてみた。答えは、「ここにはない。お前の本はもう古いから、あるはずないだろう」というなんとも取り付く島のない結論だった。
しかし実際に探してみたら、なんと、山田真哉さんとの共著である『会計HACKS!』の繁体字版が見つかったのである。直感の敗北である。それを購入して、アポイントでお会いした方にプレゼントした。まだ本屋にあるなんて、びっくりした。
いや、びっくりしたで終わらせてはいけない。なぜ直感が敗北したのか、そこに雑念が入っていなかったか。それを検証しないといけない。これは、「事前に書棚に本があるかなんてわかるはずがない」というようなことではない。台北都心の誠品書店で、ざっと書店規模も把握したうえで、そこに自分の本が置かれているか、直感できなくはない。どんな些細なきっかけでも直感は働く。
振り返ってみて、このとき直感を阻害したのが、「自分の本はもう古いから置かれている確率は極めて低い」という論理的思考だった。加えて、「自分の本があってほしい」という願望を排除しようとした結果、直感まで排除してしまったのである。
論理的思考が直感を曇らせるということは、よく起こる。それから、願望が直感を曇らせることもある。宝くじを買おうとするときには、みな「当たりそうだ」という直感をもっているが、これは願望と直感を取り違えただけである。また、恐怖心も直感を曇らせる。
今回、名古屋での授業で、新幹線が止まってしまったため、武蔵小杉から名古屋までレンタカーで移動したが、そのときの直感で注意したのが恐怖心だ。昔から、武道でも茶道でも、そして能楽でも、中立的なフラットな状態でいることが重視されてきた。そのときに直感が働くからだ。しかし残念ながら、今回、少しの論理と願望を排除しようとする気持ちが直感を曇らせた。
こうして自分の直感が間違ったときの振り返りを繰り返していくと、直感の精度は高まっていく。小さな違和感にきづけるようになる。個人的な最終目標としては、「胸騒ぎがするから、一便遅らせよう」というような種類の、命に関わる直感を磨きたい。達人となればできるはずだ。「そんなことは論理的に無理だ」と思う人はそれでいいと思う。
小山龍介
BMIA総合研究所 所長
名古屋商科大学ビジネススクール 教授
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小山龍介のビジネスモデルノート
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