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嘉村賢州x小山龍介「イノベーションは一人から始まるー日本企業でイノベーションがおこらない本当の理由を探る」BMIAリスキリング・セッション(7)最終回

嘉村賢州x小山龍介「イノベーションは一人から始まるー日本企業でイノベーションがおこらない本当の理由を探る」BMIAリスキリング・セッション(6)の続きです


小山 ソースの話って、実は男性性、女性性の議論が重要なんですよね。今日はあんまりしてないですけど。

嘉村 すごく重要です。あえて英語ではhe とsheを入れ替えて使っていて。

小山 翻訳にはなかなか出しづらいですね。

嘉村 すごく難しかったですね。

小山 女性の観点からも伺ってみたいですね。依田さん、いかがですか?

依田 あんまり女性の観点を持っていないので(笑)、難しいですが……。

現状においては、たぶん、女性のほうが、いろいろな選択肢を持って、自立的に人生を生きる可能性が高い。というのは、先ほど来話題に出てきているような大きな組織のなかではまだまだ生きるのがむずかしいというところがあるので。自分の人生を選択していくときに、ソースになるのかとは自覚はしていないかもしれないけれど、知らない間にそういう選択をしながら、生きてることは多いんじゃないかなって思うんですね。気のせいかもしれないですけど。気のせいじゃないような気もします。

組織に属していても、家庭での母のほうが自分のソースであったりとか、母の役もしているんだけれど、実は仕事のなかに自分のソースがあったりとか、そういう複数のロール(っていういう言葉をここで使っていいかわかりませんけれど)、複数の役割をこなしながら、そのなかでソースになったり、サブソースになったり、ヘルパーになったり、女性は意外とやってるんじゃないかなっていうのが私の感覚です。

批判される前に耳を澄ます

参加者(女性) 小さなことですが、ソース的にやりたいことで動いてるんですけれども、自分がいる組織ではヒエラルキーが重視されていて、動くと、だんだん排除されていくんですけど、そのときはどういうふうにしたらいいんですかね。動き続けてると違うグループとつながって、そこで「これやってみないか」って提案されて、それをやってると、今度は「そっちに行きたいのか。異動したいのか」って言われてしまうので、どう動き続けるのが正しいのかなって、わからなくなっています。

小山 やっぱり、女性のほうがほかとのつながりをつくりやすいんですかね。男性の場合は、比較的会社のなかで完結しても、問題ないというか、退職するともうだれも友だちがいないみたいなことが起こりやすいんですけど。女性の場合は、比較的いろんなクリエイティブフィールドにつながりやすい。そのときにやっぱり既存の組織が離れちゃうっていう……。

嘉村 あるでしょうね。そういう、なんだろう……、いろんなものとつながっちゃうっていうのと、一直線じゃない、なにか、曲がりくねる感じが価値だったりとかするってのもあると思います。

ソース原理的に言うと、いったん、そのグローバルソースの物語にものすごく耳を澄ませる。自分のやりたいことをジャッジされる前に、きちっとそのグローバルソースが持ってる物語を聞くんです。

この行為を、みんなしてないんですよ。上司ってややこしいよなって、どっちかというと、ややこしいものをあまり聞かず、触らず、自分のやりたいことをどう実現するかにエネルギーを注いでる人が多いんですけど、いちばんいいのは、とことんまで、まずグローバルソースの物語に耳を済ませて、理解者になることです。

「ここまで俺のやりたい次の一歩とか、確信に耳を澄ましてくれるんだ」って思われるくらいの理解者になると、耳を澄ませてもらえるようになってくることが多い。みなさんの物語を語ったときに、「共鳴するし自分の物語広げることができるかもしれない」とか思ってもらえる可能性もあるんですが、耳を澄まさずに言うとだいたい駄目になることが多い。

小山 なるほど。おもしろいですね。こっちから耳を澄ますと相手からもちゃんと聞いてもらえる。そういう相互の関係があるんでしょうね。

家族形態が会社組織に転写する

小山 余談になるんですけど、エマニュエル・トッドの家族形態の議論がおもしろいので少し紹介しますね。
日本とかドイツは男系の長子が家を継ぐ、直系家族の形態をとってます。直系家族で特徴的なのは、まず識字率が高くなるんですよ。統計を取ると明らかに直系家族の国は識字率が高いんです。家族の文化度が上がるんですよ。でも共同体家族とかほかの形態では上がらないんです。核家族も駄目なんです。なんでだと思います?

嘉村 うーん……、まったく想像つかないです。

小山 長男の質って、バラつくじゃないすか。でも、バラつかせないための要素がひとつあって、それが長男の嫁なんですね。嫁という要素は選べるんですよ。だから本家の長男の嫁ってめちゃくちゃ重要で、それなりの教養のある人に来てもらわないとならない。周りもいろいろ言いますよね。嫁にふさわしくないとかね。それで、読み書きそろばんができる奥さんが来る。当然、子どもに教育する。さらに女の子にも教育をしてそれなりの家に嫁がせるみたいなことが繰り返された結果、識字率が上がってくんです。

そうしたときに何が起こるかっていうと、奥さんのほうが賢いってことが起こる。そうなるとどうなるか。二重権力状態です。権威は、旦那さんです。だから外で偉そうにしてるんだけど、家のなかでは奥さんのほうが権力を持ってる。この家族形態が無意識のうちにあって、それが中間組織に転写していくんだというんです。

つまり会社でもそういうことが起こりやすい。たとえば政治の世界だったら権威は天皇に、権力は将軍が持っていた。いまも、政治家が偉そうにしてるんだけども実際には官僚が動かしてる。会社も、実際は事務方が動かしているんだけれども(権力)、社長は最終的に記者会見とかでかっこいいところを見せる(権威)、みたいな、二重権力状態が起こるんです。

家族の話に戻ると、奥さんというのは、自分はその家に嫁いできたので自分の物語じゃないわけですよね。でもその家のソースに耳を傾けることによって、乗っとっちゃうようなことも起こる。

なんていうことを、ちょっと話長くなりましたけど、聞いてて思い出しました。やっぱりその会社の物語に耳を傾けて、なにかしら共有する面積を増やしていくと、動きやすくなると思います。

創業者の物語につながっている人を探す

依田 たとえば一〇〇年前につくられた企業とかだと、もう創業者がいなくて、そのあとサラリーマン社長が続いている場合、市場からの声に応えて、どうしても利益率を上げていかなければいけない。だけど、その存在意義については言葉はつくるんだけれど、企業の戦略や、商品開発や、顧客との関係性のうえで本気で実現しようとしているかって考えると、してないんじゃないかっていうふうに思うことがあります。

もともとのグローバルソースのストーリーを生き生きと身体性を持って復活させるにはなにができるのか、っていうことをけっこう考えてるんです。

やっぱりオリジナルの起源のストーリーに戻っていくっていうことなのか。もしかすると自分なりにそれを感じている人がそのいまの経営陣のなかにいるかもしれないけれど、どうしても、取締役会では、そういった話はなんかしづらい。であれば、そういう話ができる場をつくっていくっていうことなのか。アドバイスがあったらお願いします。

嘉村 多くの組織でそれが起こっちゃってますね。物語じゃなくって秀才が取締役会のマジョリティーを占めてしまうことによって、MBA的な戦略で、それなりに答えが出そうなものでパーパスを策定したり、戦略を策定したり。外側の視点的なかたちでの戦略づくりになっていて、創業物語とか価値観とか、その物語に惹かれて集まった人の日々の経験とか現場からの感じたこととかっていうところを基にしたものじゃないので、結局どれも似たりよったりになる。企業のホームページに書いてあるいろんな項目全部、ロゴをライバル企業にすげ替えてもまったく同じだよね、っていうことがほぼ起こっちゃってる。

ひとつはその創業物語を全部思い出すってことかもしれない。そのときを体験してる人たちを集めて取り戻していくっていうことは、価値あるプロセスだと思いますけどね。

ソース原理的に言うと、本当はちゃんと継承し続けていればよかったのが、いつの間にか途切れて、秀才の集まりに乗っ取られてしまってる。やってる内容は変わっても、根底の価値は変わらないのがソースの継承のストーリーなので、やっぱり価値観を思い出していくっていうところ、やれる素材がどれだけ残ってるかっていうところだと思いますけどね。

依田 明治時代創業とかだと、それを体験してる人っていうのもいなくて、言葉で残っている物語を自分たちで復活、たどるしかないっていうか。でもいまのこの日本や、世界の環境を踏まえて、自分なりになにか持ってる人っていうのはいると思うんですよね。

嘉村 ソース役から始まってるはずなんですよ、創業者は。けっこう多いのが、ソース役の番頭役が二代目になっちゃうこと。ソース役のよき理解者、ソース役が言ってることをかたちにするのが得意な人が二番手になっていると、その人が二代目で引き継ぐ。ソース役が会長に残ってるときはまだいいんです。だけど、あくまでその人はビジョンの声を聞くんじゃなくて、ソース役の声を聞くのが得意なので、会長が亡くなられてしまうと、もうアクセスできなくなるんですよね。

そういう、いわゆる実務担当的な番頭を二代目にしてしまうことによって途切れるってことがけっこう多いですよ。でも、そのとき、ちゃんと当初のクリエイティブフィールドがあれば、そのソース役だったらなんて言っただろうなって、つながれる人がいる可能性があって、その人って自然と会社のなかでも「説得力あるよね」とか、一目置かれてますよね。そういう人がいると、そこに戻せるんですけど、それ以外は先ほどの屋久杉モデルというか、もう過去のリソースを生かした新しいイニシアチブにせざるを得ないっていう感じはありますよね。

小山 私は能をやっているんですが、伝統芸能の世界では、家元っていう制度があって、そういう意味では家元がソースを体現していて、その下に優秀なその家元を支える人たちがいるっていう構造が常に継続してるので、六〇〇年とか続くんですよね。もともとの創設者の思いも文献で残っていて、それを解釈しながら続いている。グローバルソースがすごい明確ですね。今後三〇〇年続けるためのグローバルソースの明確化は欠かせないでしょうね。

身体感覚にそって生きる

小山 ほかにご質問がなさそうなので、冒頭の、ちょっと個人的な話、私はソースになれるんでしょうかっていう話をもう少し……

嘉村 なってるんじゃないですか。

小山 そういう感じはしてるんです。

嘉村 神話が始まったのは、いつだったんですか。

小山 最近起こってることをお話しすると、料理を始めたんですよ。家に自分がいるときは料理するし、今日みたいなときはうちの奥さんがやるんですけども、自分がいるときはいつもやるんですよ。なんか急にやりはじめたんですね。そういうふうに自分からなにか変えていくと、「やりたいからやる」みたいな状態が、ほかにも最近いくつか出てきてます。

ビジネスモデルイノベーション協会の代表理事も一回離れたんですけど、もう一度戻ってきた。なんとなく、もう一回、自分がソースとしてやってみようって思ったっていうのがあって。そういうモードが来たんですよね。

嘉村 どこか、身体感覚に合わないことはやらなくて、合うことをやるっていうのに切り替わってきてるんですかね。

小山 年齢ですかね……。自分のやりたいことにちょっとわがままになるみたいな。

嘉村 私たちって通常、コミュニティとか所属とか生きていくっていうなかで、自分の身体感覚じゃなくて、責任感とか、役目とか、「言ったからにはやらねば」みたいな話とかっていうものと生きていくじゃないですか。

ただ、それがそのままでずっと人生歩んでいく人と、身体が喜んでないってことに気づいてそれを手放していって、身体が喜ぶ方向の割合を増やしていくっていうことにいける人がいるとすると、どこかの段階でそこにシフトしたのか、と。

小山 なるほど。賢州さんが五年前に、もう一回自分で組織のソースになるんだって言ったときには身体感覚的なところがあったんですか?

嘉村 そうですね。ありますね。七年に一回ぐらい、身体が動かなくなるんですよね。病気とかじゃないんですけど、なんかもうエネルギーがわかない、モチベーションがわからない、みたいなことがあって。いま思うとありがたいことですけど。

やっぱりサラリーマン選手というか、「いや、モチベーション波なんてプロじゃないでしょ」みたいな世界でがんばれるみなさんは、そこに蓋されるんだと思うんですけど、僕はそこのごまかしができなくて、やれないときにはやれないんです。
なんでやらないんだろうなっていうなかで、次に自分がやりたいことがわかる体感覚があるんです。なので、さっきのティール的なところが行き過ぎて、自分のソース役ですら立たなかったっていうときは、身体的にも感情的にもすごく苦しかったですね。

小山 そうやって蓋していても、それなりに生きていけるじゃないですか。しかも、それが稼ぎ柱だとすると、「じゃあもうやめた」って言うと生活できない、みたいな、やっぱりマネーの問題が絡んでくるわけですよね。

ソースに自分がなっていくときの決断とか意思決定っていうのはやっぱり簡単ではないなって思いますね。

グローバルソースが去ることでイニシアチブが生き続けることもある

嘉村 そうですね。ただ、ソース原理の本にもあるんですけど、なにか立ち上げてやり始めて、ある一定段階で、ある程度来たかもっていう状態があって、それからそのイニシアチブを閉じていくっていうパターンもあれば、自分は役目じゃなくなったから、次の代に渡して離れていくっていうパターンもあるんです。でも、多くの人は立ち上げた責任があるからやり続けないといけないって思ってしまう。自分の気持ちはそこにはないけど、ビジネスとしてはここからがお金の旨味のあるところだと……

小山 それはわかりますね。

嘉村 これからお金の旨味があるのに、立ち上げのときなんてお金費やしただけで、ようやくここから稼げるのに、だけど気持ち的には、イニシアチブをある程度成した、もう、やることはやったっていう人が居続けると、不幸なんですよ。

グローバルソースが、次のビジョンの声を聞けてない状態でも居座ることになってしまうので、どんどんクリエイティブフィールドが濁っていって、そのイニシアチブがうまくいかなくなる。

小山 すると本人もそんなに楽しくないわけで。

嘉村 そうそう。いなくなるほうが絶対うまくいくんですよ。そういうメカニズムに素直になったほうが、結局みんなにとってもハッピーっていうところが、実はあるんですけど。でも、我慢し続けるとか、責任を果たせ、みたいな空気がそれをさせない。みんな本当は愛すべきところで自分が活躍でき、仲間が集まって、辞めるときには自然に辞めていってなんの問題もない世界のはずなのに、責任果たせとか、お互いをがんじがらめにしてるっていう感じなのかなっていう気はしますけどね。

小山 なるほど。

嘉村 っていうのが取れてきてるっていう感じなんですけど、いまの小山さんは。

小山 そうですね……。そうなんでしょうね。自分のなかでちょっと切り替わってきてる感じは、あります。

嘉村 身体が元気になってきてるとか、毎日たのしいとか、なにか変化あるんですか。

小山 そういう意味では、義務でやらなきゃいけないところを、かなり手放してる感じもありますね。たとえば、子どもの野球の練習につき合ったり。子どもが、早いと二時半ころに帰ってくるんですよ。それで、三時から五時ぐらいまで野球の練習につき合うわけです。以前は、平日の昼間にそういうことやっちゃ駄目だっていうことに、暗黙のうちに僕は縛られていて、子どもはiPad見て、テレビ見て、自分は仕事してる。それが当たり前だと思ってました。でもよくよく考えたら別に仕事は夜やってもいいじゃんって思えて。午後三時から五時、野球の練習を一緒にすると非常に健康的なんですね。子どもにとっても親がつき合ってくれるし、夜は寝るだけなのでそのとき親が仕事してても関係ないわけですよね。

こういうことが自分のなかで、ひとつひとつOKになっていったみたいなことがあります。

嘉村 いいですね。マシーン化してる世界からちょっとだけ取り戻してる感じありますよね。ふつうに、自然にソース的になってきてる気がします。

小山 そうですね。「自然になってる」っていうことが重要で、よくよく振り返ってみると、たとえばこのイベントについても、過去やったときには、やっぱりどこかタイミングが早すぎたり、自分のなかでまだピュアになってなかったり、焦りがあったり……。端的に言うと、これで稼ごうと思ってたり。そうするとなんかちょっとうまくいかなかった。

嘉村 コントロールしようとしますからね。

小山 そうなんです。収支計画立てて、これで儲かるとか儲からないっていう話になって。でもそれは、いま思うとちょっと違うなって。究極はマネーワークっていうところにやっぱり行き着くんだなと、改めて思いました。

言葉に出して身体で感じる

小山 マネーワークって、個人ではどんなワークができますか。

嘉村 そうですね、ひとつ例を挙げましょうか。

トムが来日したときに、ある経営を譲られた会長的な女性がいたんですけど、その方の話です。

女性「ある地域活動で、すぐに営業行為をする人がいる。みんなは思いがあって集まってるのに、がめつい人がいる。本当にムカつくのよ」
トム「一言で言うとどんな感じなんですか」
女性「金の亡者」
トム「じゃ、ちょっと『私は金の亡者だ』自分で言ってみてもらえる?」

自分で言ってみて身体でどう感じるか聞いてみてくださいって、トムは言ったんです。

女性が「私は金の亡者だ」って言ってみると、なんだか居心地が悪い、と。じゃあ「私の金の亡者だ。最高!」はどうですか? って。「私は金の亡者。それって最高!」って言った瞬間、その女性は笑い出した。「これ、私のことだ!」
「私、お金が大好きで、でもそれじゃ駄目ってずっと自分に言い聞かせたから、それをフルに出してる人がいて腹が立ったんであって、実は私が金の亡者でした」と。

トムはこう言うんです。「多くの人が、自分はこうでなければならないっていうことを自分に課してるから、それに蓋したり、抑えたり、否定したりしている。金の亡者であることは事実なんだから、それを否定するんじゃなくて、引き出しに入れといて、出しても出さなくてもいいんです。もしかしたら、使うべきときもあるかもしれない。それを否定しちゃうと暴れちゃうっていうところを、まず取り戻すんですよ」って。

そして、「その人は、金の亡者の反対側に表現したいことがあったんだ」とも言うんです。反対側って、たとえば、応援し合う関係で、とか、仲間に優しい自分でありたいってことかもしれない。そこで「私は仲間に優しい」って言ってみる。

「お金があったら優しくできるって思ってませんか」という問いかけもします。
お金があろうがなかろうが、優しくできるんじゃないか、と、蓋をして追いやってた「金の亡者」と「優しくありたい」の両方ともを自分が持ってることを身体に感じさせる。

はじめは違和感があったりするんですが、それも全部感じながら、両方とも否定しないっていうことを語りかけると、いままで自分に課してたなにかが、一枚剥がれていく、みたいなことが起こる。
日々、ムカつく人がいるとか、そういうようなことがあったら、いまみたいな感じで、二極を見ていくことを習慣づけていくと、どんどん剥がれていきます。

お金をきっかけに蓋をしているものに気づく

小山 自分の気持ちに蓋をする大きな要因が、お金にあるってことですね。そのためにはこうしなきゃいけないとか。

嘉村 だいたい、なにかに腹を立ててるとか、ムカつくとかって、そういうことですね。

たとえば、今日みたいな講演会にいって、「なんかこの人の言ってることに反発したくなる」みたいな気持ちになったとき。その人は単にひとつの説を言ってるだけなので、「この人はこの説だよね」って思ったらいいだけなのに、論破したくなるっていうのは、絶対その人のなにかに触れてるわけですよ。そうした瞬間に、自分はこっちを過剰にやってて、こっちは許せないと思っている。許せないことは、自分に対して厳しく課している。それを見ていってクリアしていく、みたいなことです。

小山 あぁ、なるほど。お金っていうのはある種、いちばん簡単で、本人も傷つきにくい。内面を掘り出されるのは怖いけど。入り口としてよく使われるというところで、結果として、自分が蓋をしてるものが明らかになる。それがソースを見つけるひとつのきっかけになるっていうことですよね。

嘉村 そうやって追いやっているものを、お金という安全なものから剥がしていくことによって、実はお金欲しいっていうのも事実だとわかる。蓋を開けると子どもの頃に自由奔放にやってた、あの感覚を取り戻したみたいな感じになる。その感覚にあるなかで、このプロジェクトで僕はなにをしたかったんだっけ、一回、お金が稼げるってところを置いといて、本当になにがしたかったんだっけっていうものを探求するソースワークのほうに移っていく、と。

小山 なるほど。そういう意味では自分自身にこの問いを投げかけると同時に、部下にもこういうある種のソースをどう感じてもらうか、引き出すのかという観点でやっていくことで、このイノベーションの組織を日本企業のなかでもつくっていけるんじゃないか。

嘉村 本のなかにも、マネーワークは書いてあるので、やり方わかると思います。

小山 ぜひ読んでください。超オススメです。けっこう具体的なワークが書いてあるんですよね。それがすごいおもしろいんですよ。概念じゃなくて、具体的な実例があるのでね。

『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』英治出版 (2022/10/26)

小山 今日はこのあたりで、終了としたいと思います。オンラインの方も、会場の方も、夜遅くまでどうもありがとうございました。賢州さんに拍手、ありがとうございました。

嘉村 すごく楽しかったです。ありがとうございました。


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嘉村賢州 
場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi 代表理事
東京工業大学リーダーシップ教育院 特任准教授
令三社取締役
「ティール組織(英治出版)」解説者
コクリ! プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)
京都市未来まちづくり100人委員会 元運営事務局長

集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外を問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、今に至る。2022年10月に英治出版より『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』を翻訳出版。

小山龍介
一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会(BMIA)代表理事
株式会社ブルームコンセプト 代表取締役 CEO, Bloom Concept, Inc.
名古屋商科大学大学院ビジネススクール 准教授 Associate Professor, NUCB Business School
FORTHイノベーション・メソッド公認ファシリテーター

京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。卒業後は、大手企業のキャンペーンサイトを統括、2006年からは松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに新規事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』に基づくビジネスモデル構築ワークショップを実施、多くの企業で新商品、新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。インプロヴィゼーション(即興劇)と組み合わせたコンセプト開発メソッドの普及にも取り組んでいる。
ビジネス、哲学、芸術など人間の幅を感じさせる、エネルギーあふれる講演会、自分自身の知性を呼び覚ます開発型体験セミナーは好評を博す。そのテーマは創造的思考法(小山式)、時間管理術、勉強術、整理術と多岐に渡り、大手企業の企業内研修としても継続的に取り入れられている。

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