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偶然を必然に変える力

台風10号の影響で、急遽、レンタカーで名古屋に向かうことになった。このときの判断も記事が一つ書けそうなくらいで、静岡市の24時間降水量などとにらめっこしながら、JR東海が運休を発表するよりも早くレンタカーを予約した。ともかく、不可抗力によって車で行くことになった。

帰りは9月2日。今回のゆっくりとした台風は、予報ではまだ名古屋にとどまっているという。雨雲レーダーの予測では大きな雲は見えなかったが、ここは大事を取って、帰りもレンタカーで移動する判断をした。これが8月30日のことだった。

結果的に、9月2日は晴れ間も広がり、新幹線は再開した。振り返ってみると、8月30日のときの直感も、「帰りは大丈夫ではないか」という印象だった。しかし、なんとなく、ワンウェイではなく車で帰るほうがよいという、別の直感が働いた。

さて、9月2日午前9時。車で往復すべきというその直感は、なにを意味していたのか。その理由を探索するタイミングがやってきた。まず、東名高速ではなく中央自動車道で帰ることにした。諏訪湖をめぐる経路に、呼ばれるような感覚もある。今回の授業の中で、縄文、出雲、大和の三層に積み重なった諏訪文化に触れたことも、この判断に影響した。

思えば、諏訪あたりには何度も行っているが、それは東京―諏訪の経路ばかりで、名古屋から諏訪のあいだはノーマークだった。なぜか中津川あたりが気になり、とりあえず恵那峡に向かった。

恵那峡は、大井ダムによってできた人工的な景勝地だ。昔ながらの観光スポットで、正直、ホテルなどは老朽化が激しい。遊覧船もでていたが、平日のこの日、ビジターセンターあたりに観光客は、私以外、何度数えても4人しかいかなった。売店に入るとおばちゃんがでてきて、何も買うつもりも買うものもないので、気まずくなって店を出た。涼しくなったとはいえ、恵那峡の自然公園内を歩いているとジッと汗がでる。

ここで遊覧船に乗っている時間的余裕も、精神的余裕もないので、Google Mapであたりを検索していると、奇岩の集まる星ケ見公園を見つけた。これがすごい場所だった。うっそうと草が茂っている丘を登ると、そこら中に巨大な石がゴロゴロと転がっている。頂上には、御嶽神社がある。あきらかに縄文から続く信仰の場所であっただろう。やはり、巨石をテーマに写真を撮り続けるべきなのかもしれないとも思った。

つまり、台風がやってきたことによって奇岩に出会い、撮り続けるべき写真のテーマが見つかったのだ。必然とは、当然起こるべくして起こった出来事ではない。偶然が積み重さなることなのだ。

小山龍介
BMIA総合研究所 所長
名古屋商科大学ビジネススクール 教授

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