人の行動は予想通りに不合理
ブルーツ・リーです。
人間の行動の原理を知ることができれば、自分の毎日の行動と決断をよりよいものにし、仕事や人生が好転します。
そこで知っておくべきことは、私たちが普段おこなっている行動や判断は必ずしも合理的ではない、ということです。
例えば、以下は誰にもあてはまるのではないでしょうか?
・健康のためにダイエットをする、と心に決めたはずなのに目の前のお菓子に手を伸ばしたりつい食べすぎてしまう。
・早起きをして勉強や朝活をすると決心したはずなのに、睡魔に負けて二度寝をしてしまう。
・計画的に作業をこなすと決めたはずなのに、締め切りギリギリまで放置する。
もっとも私たち人間は機械やシステムではないので当たり前の話ではありますが、私たちがどんなふうに不合理かを追求したベストセラー本が「予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」。
著者のダン・アリエリーは行動経済学研究の第一人者で、TEDでは大人気のプレゼンテーターです。
著者がかつて不慮の事故で全身やけどして入院したとき、入浴治療に疑問をもったといいます。
看護師は患者を想い、痛みが一瞬で終わるように強く素早く包帯をとっていたが、患者である著者はゆっくり時間をかけるほうが痛みがおさえられてよいと思っていたようです。
患者を気にかけているにも関わらず、患者にとっての現実を取り違えてしまうのだとしたら、ほかの人も同じように自分の行動の結果を取り違えたり、そのせいで繰り返し判断を誤ったりするのではないでしょうか。
このように私たちは実際に不合理なだけでなく、「予想どおりに不合理」であり、私たちはいつも同じように不合理に行動し、それは何度でも繰り返されます。
この本を通じて著者の目的は、自分のまわりの人たちを動かしているものはなにかを理解することで、生活を改善するための出発点になるといいます。
本書では15のテーマで実験をおこない私たちの不合理な行動や判断を明らかにしていきます。
そして本書の実験で明らかになった人間の行動の原理が自分の人生にどう関わるか私たち自身が考えてみる必要があると言います。
そんな本書の実験テーマから、特に身近な仕事にも役立つ内容を抜粋しました。
ほかにも「性的興奮時に不合理な判断をするのはなぜか」や「価格が高い栄養ドリンクのほうが、効果が高いと感じてしまうのはなぜか」などを実験の結果とともに解説しています。
興味がある方は本書を一読することをおすすめします!
相対性の真相
大半の人は「自分の求めているものが何かわからずにいて、状況と絡めて見たときに初めてそれが何なのかを知る」そうです。
例えば、家電量販店でテレビを買うとした場合、あなたならどれを選びますか?
1.パナソニック 36インチ 69,800円
2.東芝 42インチ 95,800円
3.フィリップス 51インチ 148,000円
選択肢が3つあると、大抵の人が「真ん中」を選ぶ特性があり、販売員はそれを心得ているようです。
レストランのメニューでも、料金の高いメインメニューを1つ載せると、たとえそれを注文する人がいなくてもレストラン全体の収入が増えるようです。
なぜなら大抵の人は、メニューの中で1番高い料理は注文しなくても、次に高い料理なら注文するからです。
そのため、値段の高い料理を1つ載せておくことで2番目に高い料理を注文するよう、お客を誘うことができます。
また、学生たちに新聞の購読メニューの選択を以下のA・Bパターンにした場合で、購読者数にどう影響するか実験しました。
【A】
① ウェブ版の購読 5,900円 ⇒ 購読者 16人
② 印刷版の購読 12,500円 ⇒ 0人
③ 印刷版およびウェブ版のセット購入 12,500円 ⇒ 84人
【B】
① ウェブ版の購読 5,900円 ⇒ 購読者 68人
② 印刷版およびウェブ版のセット購入 12,500円 ⇒ 32人
【A】②を選択メニューとして入れるか入れないかで、購読者数が変わるという結果です。
学生たちは一体なぜ考えを変えたのか?明らかに合理的な理由ではありません。
【A】③で84人が印刷版とウェブ版のセットを選んで、そして【A】①で16人がウェブ版単独を選んだのは、単におとり(【A】②)があったせいに過ぎません。
おとりがないと選び方も変わり、セットが32人、ウェブ版単独は68人になるということは、まさに不合理、それも予想通りの不合理です。
この実験から、実際に私たちは、身の回りのものを常に他の物との関係で捉えていることがわかります。
社会規範と市場規範
たとえば、100人いるオフィスのなかで、100コあるクッキーを「無料でいくつでもどうぞ」と言われたら、他の人に行き渡るように考えて1コしかもらわないのではないでしょうか。
しかし、「1コあたり10円」と言われたら、複数個買うはずです。
これは、お金を求めることで市場規範が働き、社会規範を追いやったからです。 「経済的交流」の場では、私たちは利己的で不公平になるようです。
スマホやメールを頻繁にみる理由
スマホやメールを頻繁にみてしまうのは「ギャンブル」と似たようなものであると言います。
ラットがレバーを何回か押すと報酬(えさ)がでてくる実験を行い、これを定期的に報酬を与えるのと、不定期に報酬を与えるのとでどう行動が変わってくるかをみたところ、途中で報酬を与えなくなると、定期的に報酬がでる方のラットは行動をやめるが、不定期のラットはいつまでもレバーを押していたといいます。
これはメールやスマホのSNSも同様で、大抵の情報は自分にとっては不要で興味のない情報で好きが、たまに自分にとって有益な情報であったり重要な情報が入ってくるため、ギャンブルと同じような感覚で何度も頻度高くみてしまうようです。
所有意識
人は自分が所有しているものを過大評価する傾向があります。
そして人はなにかを得るよりも、失うほうが強い意識が働きます。
実験でバスケットボールの試合観戦チケットを喉から手がでるほど欲しい学生たちに対して抽選を行い、当選した人と外れた人にいくらでチケットを売り買いするかを質問しました。
抽選に外れた人は最大175ドルで買うといい、
当選した人は最低2,400ドルで売るといいました。なんと「14倍」もの価格の差があったようです。
またネットオークションでも長い期間自分の入札額が最高額であると、すでに所有している気になります。
そしてオークションが終わる直前でオークションをみてみると、どこかのやからがさらに高い額で入札をしてしまったら、あなたは当初の予算よりオーバーしてでも入札額を上げてしまうでしょう。
この部分的な所有意識がオークションで入札額が上がり続ける原因のようです。
ほかにもこの所有意識を応用したビジネスが「30日間返金保証」です。
たとえば一度購入したソファーを、30日後に返すことが損失ととらえるため、手放さなくなる傾向にあるようです。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
ほんの一部分の紹介ですが、本書では長年にわたって研究してきた実験に基づいて、さまざまな人間の行動原理を明らかにしてくれます。
ほかにも人間理解として、
・冷静な状態と熱くなった状態では行動が全く変わってしまう
・激しい感情におそわれたときには誤った決断をしてしまいがち
など、こうした自分自身の両面について知るための努力をし、自覚をするだけも、日々の活動に活かす助けになります。
本書ではすべて実験に基づいて人の不合理性を明らかにし、それに対処するための具体的な方法が記されています。
どのテーマも実際の仕事の現場や日々の生活で感じられる不合理として身に覚えのあるものばかりです。
ぜひ本書で取り扱っている15の研究テーマ全てに触れていただいて、自分の行動や判断の不合理を理解しながら、人生に役立ててもらえたら幸いです。