若い療法士の為のMBO−S講座〜1,目標設定と管理術〜
リハビリテーションにおいてクライエントと共に目標を設定しそれを達成、実現することの重要性が強調されます。最近ではCOPM、ADOCなどの目標設定を支援するツールもあるのですが、その具体的な考え方、戦略、管理方法についての教育は卒前も卒後も十分でないと感じています。
ビジネス領域の書籍には、自身のキャリアを形成する、そして人生設計のための目標設定、目標管理に関する書籍が豊富にあります。
そこに書かれている内容は自分自身のキャリアを形成するため、そしてクライエントの目標を設定、達成する上でも非常に役立つ内容であると感じています。
今回は以下にあげる書籍に共通する内容をまとめていこうと思います。
参考文献(書籍)は以下の通りです。特に⑴と⑵はおすすめです(^-^)
⑴アランピース&バーバラピース:ブレインプログラミング サンマーク出版
⑵豊福公平:達成する力 きずな出版
⑶青木仁志:目標達成の技術 achievement pubuling
⑷五十嵐英憲:個人、チーム、組織を伸ばす目標管理の教科書 ダイヤモンド社
⑸佐藤耕一 :あらゆる目標を達成するすごいシート 日本実業出版社
◯目標設定の戦略その1〜自身の価値感に基づいて「なりたい自分」、「やりたいこと」を明確にする〜
至極基本的なことですが、〜価値観に基づいて〜がキーワードになります。価値観とは簡単に表現すると「大切にしてしていること」「重要視しているとこと」と表現できることです。
自身の価値観を把握する上で役に立つリストがあります。ジョンマクスウェルによる38のアイデンティティです。価値観を把握するとなりたい自分、やりたいことが、より明確になり動機づけられます。ぜひ上記のリストを活用して自身の価値観を把握してキャリアや人生の目標を考えてみましょう(^-^)クライエントについても38のアイデンティティに基づいてインタビューや観察をすることで、価値観に基づいた目標設定の一助になると思います。
◯目標設定の戦略その2〜目標を紙に書いて掲示する〜
価値観に基づく目標、つまり「なりたい自分」「やりたいこと」が決まったら、それを手書きでリスト化し、掲示することです。
心理学の領域では目標達成率を手書き群とパソコンでキーボード入力した群で比較対照試験すると、手書き群が優位に目標達成率が高かったという結果を報告しているものがあります。
手書きは自身の行動や価値観のコミットメントと一貫性を保ち高めることに繋がります。その事が目標達成をするための強力な動機付けになるのです。そういえばCI療法のトランスファーパッケージの中にも患者さんに手書きで目標を書いてもらうという戦略が含まれています(医学書院から出版されている上肢機能回復アプローチを参照)。
自分自身の目標達成そして患者さんの目標達成を実現するためにも、手書きで自身の部屋に貼る戦略を実践してみましょう。
◯目標設定の戦略その3〜目標は肯定的な表現にする〜
目標を否定的な表現、「〜しない」とする場合も少なくないようです。否定的な表現は視覚化、イメージしにくいことでうまく動機付けにならないとされています。目標は如何に具体的になりたい自分、やりたいことを実現させている姿をイメージできることが大事であるとされています。まさに思考は現実化するです。頭の中でイメージできることは、それを達成できると考えて目標を具体的にイメージし、文字や絵=視覚化してみましょう。
◯目標管理の戦略その1〜とにかく始める、やってみる、そしてやめない〜
目標を具体的に視覚化できたら、とにかくそれに関連する行動を起こすことです。小さな行動で構いません。そして続けることよりも、やめないことが大事になります。
一念発起して目標に向かって大きな行動を起こそうとしますが、継続することが難しいことを多くの方々が経験するのではないでしょか?そして自分の意志の弱さにへこむ…。これは意志の問題ではなく目標設定の難易度が高いと考えましょう。より小さな行動に難易度を下げる、そして「継続する」ではなく「やめない」と設定を表現を変えてみましょう。
療法士であれば、目標に至るまでの階段をスモールステップで難易度を調整する、段階づけることができるはずです。
◯目標管理の戦略その2 〜アファメーションの活用〜
アファメーションとは、自分が達成しようとしていること、これからやろうとしていることを繰り返し自分に言い聞かせること、つまり自己暗示をかけることです。自分にはできると思い込ませることで達成への動機付けがなされます。自分自身に向かって肯定的な言葉かけ、つまりコーチングで言えばストロークをすることでマインドセットが変わり、より積極的な行動をとることに繋がります。
OTとして20年余り仕事をしていますが、時に関係作りがうまくいかない事例もあります。そんな時は消極的な関わりになってしまいます。そういった時は「もっといい治療が自分には提供できる」と言い聞かせることで、状況を打開できることを、すべての事例ではないですが経験しています。
クライエントとの関わりや日々生きているなかで起こる様々な問題にも、自分を勇気付ける声かけを自分自身に行うことで逃げずに前進するための力を、アファメーションは与えてくれると思います。
◯目標管理の戦略その3〜タイムマネジメントと習慣化〜
目標達成のためには、新しい習慣を身につける、習慣を変える必要があります。先にも述べたように小さな行動を実践して、続けることができなくてもやめないことです。
小さい行動は、努力や意欲に左右されないくらいのもの、時間、頻度を設定します。勉強のための読書であれば、最初は2ページから始めるといったように設定します。
また新しい習慣の形成のために、現在定着している習慣に接木をするように新しい行動を付け加える方法も提唱されています。たとえば通勤の時に、オーディオブックを聞く、マインドフルネス瞑想するなどです。
新しい習慣形成には3週間かかるという言説がありますが、あまり明確な根拠はないそうです。とにかく続けなくてもやめないことが肝要です。
最後に思考の習慣を変えることも大事です。肯定的な言葉を自分自身に、そして他者にもかける。そして肯定的な側面を探すように生活することで、行動の選択肢は広がり、目標に近づくはずです。
以上、ビジネス領域から目標設定と目標管理に関する知見をまとめてみました。自分自身のキャリア形成だけでなく、クライエントの目標達成にも応用できる内容であると思っています。
次回の若い療法士の為のMBO−S講座は、2〜強みを活かす仕事術〜ついて、若い療法士向けにnoteしていきます。
#リハビリテーション #作業療法 #新人療法士 #ジョンマクスウェル #目標設定 #マネジメント
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