【治療日記30】血圧203!計測しまくりの一夜
早いもので、この治療日記も30回目。そこそこのボリュームになったので、これが面白い連載小説ならよかったのだが、残念ながら内容はただの治療経過である。
でも自分の記録として、また同じ治療を受けている人にとって、何らかの参考になることを信じて、これからも書き綴っていこうと思う。早く最終回がきてほしいものだ。
さて、1週間レンビマを休薬した状態で、昨日は血液と尿の検査を受けた。
結果から言えば、前回基準値を上回っていた「尿蛋白/尿クレアチニン比」は1.7まで落ちていて、なんとか8回目のキイトルーダを受けることができた。レンビマも再開だ。
お盆休み明けだからか、とにかく病院の混み方が異常で、採血は70人待ち。結果が出てくるのも遅く、2時間待った。
また、主治医が夏休みだったので、別の先生に診断してもらった。何もかもが遅かったのは、病院側の夏休み事情もあったのかもしれない。
代わりの先生は、なんだか嫌な感じの女性だった。こちらを見ようともしないので、最初から最後まで一度も目が合わなかった。
パソコンとデータの用紙を見て、結果を告げるだけの役目だから、「私」を見る必要はなかったのかもしれないが、この人が主治医じゃなくてよかったと思った。
医者じゃなくても、人と話をする時は、きちんと人の目を見てほしい。少なくとも、この人には自分の命を預けられん、と思った。
いろんな手続きを終えて、やっと病棟へ辿り着くと、「今日は混んでました?」と看護師さんに聞かれた。「入院する方がみんな遅くて、まだ来ていない人もいるので」とのこと。やっぱりそうなのか。
病室に入るのと同時に昼食がテーブルに置かれた。9時半に病院に着いたのに、もう12時だったのだ。
今回は個室だった。希望は大部屋にしていたが、満室だったらしい。
このパターン、ありがたい。罪悪感なく、個室に泊まるという贅沢をできる。
点滴ルートも、前回からやっているように、最初から手の甲でとってもらうようにした。
「なんか、いけそうな血管ありますけどねぇ……」と、研修医は物欲しそうに私の腕を見つめてくる。腕で練習したいのだろうが、そうはさせない。
「ね、そう見えますよねー、でも、これまでこの血管で成功した人はいないんですよ」
私も慣れたもので、偉そうにそんなことを言う。
「そうなんですね……」
と言いながらもまだ私の腕を触る研修医さん。
「これなんて良さそう」
「あ、これね、これはよかったんですけど、使いすぎてこの間から使えなくなりました」
「はぁ…そうなんですね」
私の何がなんでも腕にはさせない!という態度に折れて、やっと手の甲でやってくれた。おかげで失敗なし!
長時間の点滴なら手の甲でやると邪魔になるし、動かして漏れるのが怖いが、キイトルーダは1時間もかからないので、途中でトイレに行くこともないし、全く問題なし。
点滴は何事もなく終わり、16時には解放された。
その後、夕食も食べ終わり、就寝時間まで暇になるので、持って来た本でも読もうかと思ったら、看護師さんが血圧を測りにきた。私はレンビマで血圧が上がりやすい。朝は高くなかったので降圧剤も飲んでいなかった。
測り終わると看護師さんが「えっ!」と声をあげた。
「高いですか?」
「190ありますよ!」
「えっ!」
今度は私が声をあげる番だった。
それから、深呼吸したり、横になったり、腕を変えたりして3回測ったが、毎回190を超えている。
「夜の分の降圧剤を飲んでみます」と私が言い、看護師さんも了解してくれたので、とりあえず持って来ていた降圧剤を飲んだ。
「本とか読まずに横になってリラックスしていてください」と言われたので、おとなしく横になる。
30分後に看護師さんが来て、また測ったが、変わらず190あった。
「頭痛くないですか?」「気持ち悪くないですか?」「目がチカチカしないですか?」など聞かれるが、そういうことはまったくない。もうこのまま寝ていたら下がるんじゃないかと思ったが、看護師さん的にはそういうわけにもいかないようで、「また30分後に来ます」と言って出ていった。
なんかテレビで、ふくらはぎの血流を良くしたら高血圧にいいって言ってたなぁとふと思い出し、ふくらはぎのマッサージなどもしてみた。
それが悪かったのかもしれない。
次に測ったら、看護師さんがまた「えっ!」と声をあげた。
おそるおそる表示を見てみると、なんと203!!
私も「ええっ!」とさっきより大きな声が出た。
200超えは初めてだ。
素人だから、脳の血管が切れているイメージしか湧かなくて、怖くなる。
「先輩に相談してきます!」と看護師さんも慌てて出て行った。
とりあえず横になったまま、気持ちを落ち着かせる。
リラックス、リラックス。
深呼吸、深呼吸。
しばらくすると別の看護師さんが来て、事情を知らないので、普通に「消灯しまーす」と言って部屋の電気を消した。
暗くなると、すでに睡眠導入剤も飲んでいたし、キイトルーダの影響もあって、いつの間にか眠っていた。
「すみません。起きてください」
声がして目が覚めたら、看護師さんではなく、医師の服を着た女性がいた。
「はい」
横になったままぼんやり答えると、その人はゆっくりしゃべった。
「これから、いつもとは違う降圧剤を持ってきます。それを飲んでみてください。たぶん、それで下がるはずです。頭痛いとかは、ないですね?」
「はい」
入れ替わりで看護師さんが来て、薬を一錠出してくれた。起き上がってそれを飲むと、「また後で測りにきます」とのこと。
私は夢うつつ状態だった。これも夢の中の出来事のようだった。
…と思ったら、寝ているところを起こされた。やっぱり夢じゃない。また計測。まだ高い。
2回目にようやく170まできたのでこれで朝まで眠れると思ったら、「まだダメです。後でまた来ます」と言う。
スパルタやん。
いや、違うか。なんと手厚い看護!!
しかし、寝ているところを何度も起こされるのは辛い。
そうして、寝て、起こされ、計測…を繰り返し、ようやく140台まで下がったのは3時前だった。
今度こそ解放されたとホッとしたが、降圧剤は利尿作用があるようで、飲むといつもトイレが近くなる。結局朝までにトイレだけでも五回起きた。
朝は6時過ぎるとすぐにまた「血圧測ります」と看護師さんが来た。もうコントみたい。
眠くて目が開かない。頭もぼーっとしている。
これでまた190になっていたらどうしようかと思ったが、なんとか140台をキープしていた。
ああ、怖い。血圧恐怖症になりそうだ。
と、そんな話を、迎えにきてくれた夫に車の中で話した。
全然眠れていないし、なんだか大変な一夜だったが、改めて話してみると、病院にいるって安心だなぁと思った。家で一人でいる時に200超えていたら、もっと怖かっただろうなと思う。
眠いのに起こされて…って文句を言っているが、看護師さんだって夜勤で起きていて、私のために何度も何度も足を運んでくれたり、先生に相談してくれたりしたのだ。本当にありがたいなぁと思う。
病気になると、お医者さんや看護師さん、薬剤師さん、いろんな医療機器機をつくってくれた人、掃除のおばちゃんなど、病院に関わっている人たちへ感謝の気持ちが自然に湧いてくる。
今回もおかげさまで、無事に点滴を終えて帰ってきた。レンビマも再開した。
あとは良くなっていくだけだ。