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「結局こういう料理が旨いねんな」とつぶやく

いわゆる「料理好き」というのとは違うと思う。
ただ「お酒のアテ」を作るのが好きだった。
だから、食卓はおしゃれ女子が好むような映えるものではない。晩酌にぴったりの「おじいさん料理」だ。

ある材料でちょこちょこっと簡単に作って、好きな日本酒を専用冷蔵庫から選んで。
ぐい呑みも数十個あるから、今日のお酒に合ったものや気分で選ぶ。

そういう一人晩酌のひとときが何より幸せだった。

今はまだ体調が万全ではないので、ほぼ飲めないけど、最近、お酒のアテは作ろうという気持ちになった。これもまた良い変化。
ずっと食欲がなかったし、なぜかジャンキーなものが食べたくて仕方なくなり、冷凍チャーハンばかり食べていたのだから。

せっかく料理をするきになったし、この間、お皿を割ったこともあるので、器を記録しておこうと思いついた。

まず、はまぐりの殻の形をした器は、徳岡圓心さんの唐津焼き。今はどこかのお寺の高僧になられているらしい。
はまぐりの形なので、ホタテのお刺身を盛り付けてみたところ、ぴったりだった。

小皿は京都の器屋さんで見つけた
作家さんの名前を忘れてしまった

次は、5分でできるネバネバのアテ。長芋の短冊切りとレンチンして切ったオクラに、味噌だれをかけて出来上がり。
味噌だれは、味噌、醤油、みりんを同量ずつ混ぜるだけ。
器は、佐藤けいさんの片口鉢。
この作家さんは釉薬を使わない焼き締めがとても素敵だ。ガス窯ではなく薪を燃やす登り窯で焼いているから、こんなふうに灰をかぶって自然な色味が出る。

灰被りの風合いが見事


鰯が安い時は、生姜煮を圧力鍋で作る。材料を入れて火にかけるだけで、骨まで柔らかく全部食べられる。
器は小川博久さんの角皿。確か栃木の益子焼きの辺りに窯を持たれていたと思う。
シンプルだけど、優しい薄緑がどんな料理にも合う。これも27年前から使っている。

白ご飯にもよく合う


今年の夏は野菜が高かったが、ピーマンだけは比較的安く買えた。
昔から、困った時はこの一品。
生姜汁、酒、醤油に豚肉を漬けておき、ピーマンを切ったら一緒に炒めるだけ。汁気がなくなって、ピーマンがしなっとするくらいまでしっかり炒めるのが好きだ。

器は作家ものではないが、有田焼の福寿窯のもの。芙蓉手双鹿図丸皿。
土物の陶器が多いので、たまにこういう絵付けの磁器を入れると食卓に色を添えられる。
この大きさは使いやすいので、大皿としておかずを盛り付けるほか、一人前のお好み焼き、焼きそば、パスタなどにも使える。

直径21センチ、使いやすい
真ん中に2匹の鹿が描かれている
(福寿窯の公式サイトより)


カブが好きだ。特に本体(?)よりカブの葉が好きだ。炒めると甘味が出る。
お揚げさんと一緒に炊いたんは定番だけど、飽きない。
「結局、こういうのが一番おいしいんだよな」と食べるたびにつぶやいてしまう。

器は、また佐藤けいさん。さっきと違って薄い青の釉薬をかけている。この大きさ、深さが使いやすいし、色味も地味な料理を引き立ててくれる。

一人分の煮物を盛り付けるのに
ちょうどいい深さ


取り皿は、織部焼。
理想的な織部ってなかなか見つからない。
昔、岐阜の多治見まで行って探したが、これというのがなかった。
あきらめかけていた時に出会ったお皿。作者は不明。一目惚れして買った。
織部はまたいいものに出会えれば欲しいなぁと思っている。

織部焼の特徴である深い緑がきれい。
描かれた玉模様との色合わせも好み。


レンビマ休薬のため、日本酒を45ミリだけ飲むことにした。
こういうアテがあると、やはり少しでもいいからお酒を飲みたくなってしまう。

親戚のおじさんが送ってくれた、徳島の「芳水」。
ぐい呑みは、大好きな河井久先生の作品。河井寛次郎氏の甥っ子にあたる方で、私の器コレクションの中でも一番多い作家さんだ。
使いやすいだけでなく、見ているだけで幸せになるほど美しい。
これは高台のぐい呑みで、45ミリ飲むのにちょうどいい。中の藍色が光の加減で微妙に色を変える。

このぐい呑みは形もかわいい
ぼってりとした丸い脚がある


こうやってアテをつまみながら日本酒を飲んでいると、日常生活が戻ってきたような気がする。

なんということもない料理とお酒。
だけど、お気に入りの器があれば、いつだって幸せな食卓になる。

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