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【治療日記32】もしや、ハゲるのか……!?

私は過去に2回「脱毛」を経験したことがある。
脱毛といっても、エステに行ってきれいになるためのムダ毛処理の「脱毛」ではない。抗がん剤の副作用による、抜けなくてもいい毛の「脱毛」だ。

一般的に、「抗がん剤」=「ハゲて帽子かぶってる人」のイメージは強いと思うが、実際、抗がん剤は副作用に「脱毛」の項目があるものが多い。
女性特有のガン(乳がん、子宮がん、卵巣がん)に使用することが多いパクリタキセルは必ず脱毛する。女性特有のガンこそ、脱毛しない抗がん剤だといいのにと何度も思った。

私は3年あけて再発しているから、脱毛→伸びる→脱毛→伸びるという「ハゲてから元通り」を人生で2回も経験した珍しい人だ。なかなか2回はいない。(ちなみに最後の抗がん剤から約8か月でウィッグなしで外に出られるくらいの長さになる。個人差あり)

2回経験してみて思うのは「もう脱毛はこりごりだ!」ということだ。
「髪は女の命」「悲しい」とか、そういう気持ちではない。もちろんそんな気持ちになったことも多少はあったが、それ以上にこりごりだと思うのは「面倒くさいから」だ。その一言に尽きる。

世の中にはウィッグをかぶっていること(脱毛していること)を必死に隠す人もいるし、なぜか「ちょっとワクワクする~!」と明るい人もいる。
私はどちらでもなかった。家族や友達だけでなく、何度も顔を合わせる仕事仲間には自分からウィッグのことを話しておいた。ハゲるのは仕方がないことだし、別に恥ずかしいことでも何でもない。(かといって、ワクワクもしなかった。シャンプーがラク、くらいしか良いことはない)
それより話しておいて「味方」になってほしかった。たとえば一緒にいる時に「ちょっとズレてるよ」と教えてもらうとか。知っておいてもらうほうが気が楽だしメリットも多いと思っていた。

ただ、私の場合、取材の仕事が多かったから「初対面」で「向かい合って1時間以上、じっくり話をする」けど、「二度と会わない」という人がたくさんいた。
こういう人が一番やっかいで、それくらいの距離感の人にいきなり「私これウィッグなんですよ」と言うわけにもいかないし、かといって、取材中に「この人、カツラかなぁ……」と疑念を抱かせるのもよくない。頭に気が(目が)いって、取材に集中できないだろうから。
というわけで、私は2回目の時は20数万円かけて、結構いいウィッグを買った。人工毛と人毛のミックスで、本物に見えるけど手入れはしやすいというものだった。(人毛は本物に見えるが高くて手入れが面倒。人工毛は人形の毛みたいでニセモノ感がすごいけど、安いし扱いやすい)
とにかく取材中、初対面の人が私の頭に注目しないことを目指したのだ。

ウィッグというのはとにかく暑い。薄い人工毛のものは涼しいけど、風が吹くとめくれて中のメッシュのようなものが見えてしまうことがある。ある程度、ホンモノ感を出すためには髪の毛のボリュームが必要だが、暑い。夏は蒸れるし汗だくになるしで、外出先のトイレで外して頭皮を拭いてかぶり直すなど、本当に大変だった。

それでもまだウィッグはいい。頭はいいんだ。なんとかなる。
一番困ったのは、まつ毛だ。
知らない人のためにお伝えしておくと、副作用の脱毛というのは髪の毛だけでなく、体中の毛がなくなる。眉毛、まつ毛、手足や脇のムダ毛、VIOラインなど、すべての毛がなくなる(もしくは薄くなる。個人差あり)。
処理したいようなムダ毛なら、なくなってラッキー♪だが、眉毛とまつ毛はないと困る。人間って、眉毛とまつ毛がないと、めっちゃ怖い顔になるから!これほんと。
で、眉毛は私の場合、数本残ったし、ウィッグの前髪を分厚くしておいたので、メイクの「眉毛を描く」ことでなんとかなった。(眉毛が全部抜けた人は、まず『描く場所』がわからなくて苦労するという)
でも、まつ毛はごまかせない。なるべく自然に見えるつけまつ毛を買ってきて、一番強力なノリで貼り付けていたが、ツケマって「本物のまつ毛があるから」それをベースに乗せるものであって、何の支えもないところにつけるのはかなり大変なのだ。いくら強力なノリでも時間が経ったり汗をかいたり、何かでひっかけたりするとすぐに取れてしまう。
これが恐ろしかった。

取材しながらも、「今、私のまつ毛、ちゃんとついてるやろか」と気になってしょうがなかった。つけるのに時間もかかるし、どこかに出かける前はまつ毛、眉毛、ウィッグの三点セットを完成させるのに1時間近くかかっていた。もう面倒!ストレス!

さらに、私は酒蔵取材が多いのだが、衛生管理のために蔵に入る前にキャップをかぶらせるところが結構あるのだ。
ウィッグの上からあのシャワーキャップみたいなのをかぶって、前髪からすべて中に収めないといけないというのだから、どれほど憂鬱だったか。
もっと怖いのはそれを取る時だ。みんながさっさとキャップをはずして捨てているのに、私はウィッグが一緒に取れないように押さえつつ、そぉっとはずす。あの緊張感といったら……!!

もう私はあの面倒で神経を使う作業を二度としたくない。
だから、もし副作用に脱毛がある治療をしなければならなくなったら、今度は治療が終わってすべて生え変わるまで取材の仕事は休業すると決めていた。もうあのストレスを抱えたままで取材なんて絶対にしたくないと思っていた。
だから、今やっているキイトルーダとレンビマの併用療法の副作用一覧を見た時、「脱毛」の文字がなかったことに心からホッとしたのだ。先生にも確かめたが「脱毛はない」という。数ページにわたるほど副作用があるのに、脱毛だけはないというのだ。私がこの治療に乗り気になったのは、そのことも大きな要因だ。

ふぅ、ここまで説明するの長かった!

ここから本題なのだが、タイトルにもあるように、最近ちょっと髪の毛が気になっている。2か月前くらいからシャンプーするとやたら抜けるようになり、「あれ?抜け毛多いなぁ」と思っていたのだ。
ある時、夫がじいっと私を見て「……かおり、ハゲてる?」と言ったので、大慌てで鏡を見に行った。
ハゲてはいない。いや、でも、ちょっとハゲかけ?薄毛?
そして、恐ろしいことに気づいた。
私、2月に美容院行ったきりだけど、まったく髪の毛が伸びてない!!
ひぃぃぃ~!!

それから気になって、できるだけ頭皮に刺激を与えないようにシャンプーは2日に一度に減らし、ドライヤーも「スカルプモード」にして乾かすようにし(これまで使ったことのないモード)、ブラッシングも気を付けるようにしていた。
副作用の時のようにドバっと抜けることはないのだが、やはり抜け毛が気になる。でも、気にし過ぎなだけかもしれない、とも思ってみる。そうだ、気にするな。

少し前、久しぶりに友達に会うことがあり、思い切って聞いてみた。
「私さー、ちょっとハゲてる?」
友達Fはハッとしたように私の頭を見て、それから言いにくそうに、でもはっきりとこう言った。
「……うん、今日会った時、なんとなくそう思った」
「やっぱりか!」

その後、別の友達に会うことがあったので、また聞いてみた。
「私、ちょっとハゲてるかな?」
その友達Nもとても言いづらそうに、でもちゃんとこう言った。
「……うん、なんとなくそう思ってた」
「やっぱりか!」

なぜだ?副作用に脱毛はないのに、なぜ抜けるんだ?
最初は単純に「加齢」だと思ったのだ。もともと髪の毛は人の二倍あるくらい多いほうだし、早めに白髪も出てきたので、「薄毛ではなく白髪タイプ」だと思っていたのだが、もしかして高齢になると「薄毛になる人」だったのか、と。
でも、しばらくして、加齢ではないと気づくことになる。それはあの副作用の時のようにムダ毛も抜け始めたからだ。眉毛とまつ毛に変化はないが、それもこれからどうなるかわからない。

この間、主治医に聞いてみた。
「この治療は副作用に脱毛ってないんでしたよね?」
「うん、ないよ」
「でも、なんか抜け毛が多いんです。同じ治療している人でそういう症状の人っていませんか?」
主治医はじっと私を見て「いや、そんなん聞いたことないけどなぁ」と言った。
いないのか。
じゃあ副作用じゃない?
加齢?
単に薄毛のオバチャンになろうとしてるだけ?

なんとなく納得がいかず、いろいろと調べてみた。そして、「もしかしてこれかな?」という原因にたどり着いた。
私は2か月くらい前から甲状腺機能が低下している。これは副作用によるものだ。そして、この「甲状腺機能の低下の症状」に「抜け毛」があったのだ。時期も合っているし、これかもしれない。

ということで、甲状腺機能の専門の先生に受診する機会があったので聞いてみた。
「甲状腺機能が低下すると、抜け毛ってありますか?最近、すごく毛が抜けるんですけど……」
すると先生は「うん、そうね、そういう症状はあるかもね」という、なんともはっきりしない返答。どうやら「必ずしもある」ということではないが、甲状腺ホルモンの乱れによって抜け毛があってもおかしくはないから、それが原因と考えてもいいだろう、ということらしい。

なんとなくモヤっとしたままだったが、キイトルーダとレンビマの副作用ではないことは確かだし、今は甲状腺機能のせいだと考えておくことにした。
甲状腺ホルモンを調整する薬も飲んでいるので、安定すれば抜け毛もなくなるかもしれない。
ただ、少しでも抜け毛が減るように、毎日対策はしている。
友達にすすめられたヘッドマッサージャーを購入し、頭皮を柔らかくしている。育毛剤も買おうと思ったが、いろんなメーカーから出ていて、今まで自分が薄毛になるなんて考えたこともなかったから、何がいいのかわからない。
結局、信頼のアデランスで女性用のシャンプー、トリートメント、育毛剤のセットを買った。(高かった!!)

甲状腺の先生に「あ、抜け毛が気になっても、海藻とか海苔とか、食べすぎないでね」と忠告された。海藻類に入っているヨードを摂りすぎると甲状腺に良くないらしいのだ。あぶなかった。海苔をバリバリ食べようと思っていたところだった。

とりあえず、今はやれる育毛対策をやり、甲状腺機能が良くなれば髪の毛も復活すると信じて待つしかない。
なんとかハゲる前に治ったらいいのだけど……。
人生で2回もハゲたらもういいでしょ、さすがに3回目はいらんよ……。

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切実なKaoriの叫び

そして、治療についての報告。
昨日、9回目のキイトルーダ点滴が終わった。順調……と言いたいところだが、相変わらず尿の蛋白が多いため、レンビマは5日間休薬。月曜にもう一度採血と採尿をして、それでOKが出ればレンビマも再開となる。
あんまり休薬したくないのだが、体と相談していかないと。いつも言うように、焦らずゆっくり、で。
(でも、抜け毛は焦る!)

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