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【治療日記31】「良くなる未来」だけを見ていよう

体が重い。眠い。
だけど、人のnoteを読んでいたら刺激されて、今日は書かないままで寝ることがどうしてもできなくなってしまった。
ハードな日だったから、丸太のように眠りたいのに、「書きたい」という心の火だけがふつふつと燃えている感じだ。

今日は検査のオンパレードだった。
(いつも思うけど、○○のオンパレードって、死語かなぁ?)

朝8時20分に出発 → 採血 → 心電図 → レントゲン → 検尿 → CT → 甲状腺機能の専門の先生に受診 → 主治医に受診 → 来週の入院の説明 → 入院の手続き → 会計 → 薬局で薬を処方してもらう → 14時過ぎに帰宅

夫に車で送り迎えしてもらったというのに、病院内の移動だけで4800歩も歩いていた。そりゃ、疲れるわ。

今日の診察室は静かだった。
特に結果が悪かったわけではない。大きな問題はなかった。
血液検査はバッチリで、3つの腫瘍マーカーはすべて正常値をキープ。
尿の蛋白はやや多かったが(プラス2)、ギリギリセーフ。
そして、2か月ぶりのCTは……というと、「変化なし」。
診察室が静かだったのは、たぶん……、いや絶対にこのCT結果が原因だ。

人間て、欲が深いなぁと思う。
CT検査のたびに腫瘍が大きくなっていた2月までは「小さくならなくてもいい。せめて現状維持であれば……」と願っていた。それなのに、3月から治療を始めて異常なほど効果があったものだから、「現状維持」ではもう満足できなくなってしまったのだ。

主治医が「まためっちゃ小さくなってたよ!」と言ってくれて、私と夫が「やったぁ!!」と喜ぶ。
「こんなに効く人、ほんまにいないよ~」とうれしそうな主治医を見て、私たちも笑う。
診察室には笑顔とほのぼのした空気が流れ……。

そう、こんなシーンを想像していたのだ。
だから、「うーん、今回は変化なかったね」という主治医の言葉を聞いて、私も夫も拍子抜けしたというか、「はぁ……そうですか」としょんぼりしてしまった。
主治医もなんとなく元気がなかった。
「まあ、わりと休薬してたしね」と慰めてくれたが、自分自身に言い聞かせていたようにも思える。

こんな時、どうしても嫌なイメージが頭に浮かんでしまう。

これ以上続けても無駄なんじゃないか?
これが治療の限界なのか?
やはり14mgで(今は10mg)、死にそうな副作用と闘うくらい頑張らないと、効き目がないんじゃないか?

イツカ キカナクナルンジャナイ?

そんな悪魔のささやきのようなネガティブな言葉を振り払い、「進行していなくてよかった!」と思い直す。
そうだ、進行していなくてよかった!
腫瘍マーカーも正常値だから、ガンの勢いはない。
2か月のうち2週間も休薬していたし、10mgに減らしたんだから、前みたいに奇跡的な効果がないのは仕方がない。
焦らずじっくりやると決めたんだから、こんなことでいちいち落ち込むなよ~私。

人って弱いなぁと思う。
「人」が、か?「私」が、か?

でも、入院の説明待ちで、ちょっとしょんぼりしている私に夫が言った。
「一喜一憂するのはやめよう。かおりは良くなってる。ちゃんとわかってるから大丈夫」

そうだ。私は良くなっている。数値は単なる「数値」にすぎない。
自分の感覚を大事にしよう。
痛みも減った。動ける時間が増えた。遠出もできるようになった。食欲も出た。減り続けるだけだった体重も2年ぶりに増加傾向にある。
元気になっている、良くなっていると、それを実感しているのはほかでもない、私自身だ。
その感覚を信じよう。
夫の言葉で我に返った。

2年間、悪くなる一方だったのに、この半年は確かに良くなっている。
この先も「良くなる未来」だけを見ていようと誓った。

実は、10月上旬に仕事を入れた。
まだ本決まりではないが、ほぼ確定で、あとは先方の予定の確認待ち。
8月のお盆前に私のホームページからお問い合わせをいただいた制作会社で、お仕事をさせてもらうのは初めての相手だ。
「休業中なんです」と断ることもできたが、取材日が10月とかなり先だったこと、単発の案件だったこと、内容が面白そうだったことなどが理由で、治療のことも休業のことも話さずに仕事を受けたい意向を伝えた。

実績を送ったら、すぐに「オンラインで面談をしたい」と返信があり、熱海の別荘にいる間にオンラインでお話させてもらった。
とても明るくハキハキした感じのよい方で、「この方と一緒にものづくりをするのは楽しそうだな」と思えた。
大阪で2時間くらいのインタビューだし、他に仕事を抱えていないから原稿も余裕をもって書けるし、納期もタイトではないので、何も問題はない。大丈夫だ。

それに、今回お問い合わせをもらったときに「やってみたい」と思えたことが、大きな進歩というか、自分の変化だと感じた。
7月までの自分なら、「やってみたい」より、「体が動かない。無理だ。不安だ」という気持ちの方が先に出たと思う。
それが、「やってみたい」「やりたい」「やれる!」に変わっていたことに自分でびっくりした。それくらい良くなっているということだ。自分の体調に自信が持てるようになったのだ。
久しぶりに仕事のことを考えるとワクワクした。まだそんな自分でいられたことも嬉しく思った。
私はもう絶望の中にいない。ちゃんと明るい未来を見ている。

ただ、案件の内容が流動的で、オンラインで話した時もまだ詳細は決まっていなかった。さらに、一時は「インタビュー自体がなくなるかも」という話にもなったのだが、その時も「たとえ発注されなくてもいいや」と思えた。
今回、「やりたい」「やれる!」と思えたことで、自分が良くなっていることを実感できたからだ。すでに得るものはあった。
もちろん発注されればうれしいし、今のところ「仮押さえ(私がされている)」の段階まできているので、可能性は十分にある。

2月末の秋田の取材が最後だったから、もし決まれば7か月ぶりの取材ということになる。インタビューの対象は誰もが知るレベルの元アスリートだ。(これが面白そうで引き受けた)
7か月ぶりにしてはいきなり高いハードルだが、これを乗り越えられたら、仕事復帰の大きな自信につながることは間違いない。
秋になれば酒造りも始まる。最初は月1、2本から始めて、体調を見ながら少しずつ増やしていければいいと思う。やってみて無理だと思えば、また休業してもいい。

そうだ。
結果が「現状維持」でも、すでに「取材をやってみよう」と思えるくらいまで私は元気になっているんだ。
数値ではなく、「良くなる未来」だけを見ていよう。

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