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会いたい人に会えることの尊さよ

昨日は、長い間会っていなかった友達、Kくんと飲んだ。夫のビールの店に来てくれた。

「何年ぶり?前に会ったのいつやった?」
2人で記憶を辿ったが、どうしても思い出せない。
「コロナの時期は会ってないでしょ?」
「私が1回目の抗がん剤でウィッグかぶってた?」
消去法と、わずかなヒントから考察したところ、2017年あたりが有力に。
「本町の日本酒おいしい店じゃない?」
なんとなく、それくらいで落ち着いた。

彼とは私が大学時代からやっていた学習塾のアルバイト先で出会った。
私が大学を卒業して、就職もせずにふらふらしていた24歳のとき、大学1年生のフレッシュな19歳の彼がアルバイトとして入ってきた。
当時ではまだ数少ない「Apple信者」で、私がWindowsのパソコンを買う時に反対された。

「さんのーさん、さんのーさん」と、私にすごく懐いてくれて、私は彼がかわいくて仕方なかった。
当時の5歳下は大きな差があるように感じて、勝手に「弟分」みたいな気持ちで接していた。

しかし、今や48歳と53歳。
ビールで乾杯してから30分くらいは「老化」や「病気」の話が続く。
時の流れは恐ろしい。
私は相変わらずお金もないし、病気の身だが、彼は着実に出世して偉くなっていた。
大学生の頃と変わらない気がするのに、「会社で部下の女の子が」なんて話すのが新鮮だ。
彼の顔を見ていたら、私も水色のワンピースをひらひらさせながら、塾の狭くて汚い階段を駆け降りていた頃の気持ちが一瞬戻ってきた。

ああ、若かった!!

毎日毎日、中学生とわちゃわちゃやっていた頃が懐かしい。
いつか塾の話もnoteに書いてみたい。小説になるくらいおかしな塾だったから。
あまり言いたくないけど、今でも私は時々、塾で教えている夢を見る。あの頃の私にとっては唯一の「居場所」だったんだなと思う。

しかし、7年も会っていなかったのに、こうやってまた会えて、昨日会ってたように親しく話せるのは、彼がこまめに連絡をとってくれていたからだ。
元気だった時は日本酒の話をLINEしてくれたり(今、こんなの飲んでます、とか)、病気になってからはnoteを読んでくれていて、時々「大丈夫ですか?」「元気になってよかった」などとLINEをくれた。
だから、長い間離れていても、そんなに「久しぶり」の感じがしなかったのだろう。

今回会っていろいろ話して思ったが、Kくんと私はあまり共通点がない。
彼は小説は読まない、漫画はギャグが好き、ドラマは見ない。映画は戦争かSFものが好き。
ほぼ真逆の趣味だから、「わかる、わかる!」の共感がないのだ。
しいて言えば共感できるのは、酒とキャンプくらいだろうか。

「名探偵コナンの映画、面白いよね!」と言うと、「全然おもしろくないです。子どもにつきあって観に行ったことはありますけど」と言う。
私は「あのねぇ、病気のときに寝てる人が見るのには、コナンはほんまにちょうどいいんよ」と、よくわからない力説をしたが、まったく同意を得られなかった。

終始そんな感じで、「わかる、わかる!」がない。
昔話もちょっとは出てくるが、共通の思い出に頼っているわけでもない。
でも話していて楽しい。

こういうのって、なんだろうな、と思う。
たぶんだけど、人として大事に思っていることとか、自分なりの常識とか、人生の楽しみ方とか、真面目さといい加減さのバランスとか、人への接し方とか、そういううまく言葉にできない何かが呼応し合っているのかな、と思った。

17時から飲んで、21時までいた。
4時間があっという間。

あー、そうか、彼は話を聞くのが上手だから、それも楽しい理由だ、と思った。
いつまでも私は「先輩」だから、何を話しても「はい、はい」と一生懸命聞いてくれる。
そういうところも、私が上機嫌でいられる理由なんだろう。たとえ「コナンは面白くないです」と言われようとも。決してイエスマンではないから、それが逆にいいんだ。

あと、やっぱりマメな人って貴重だ。
彼がずっと連絡をくれていたから、また会えた。
私もかなりマメなほうだが、病気になってからはどうしてもマメさを失いがちだったので、向こうから連絡してくれるのは本当にありがたかった。
離れていても「自分のことを気にかけてくれている」とわかることって、弱っている人間にとったらものすごく心強いものなのだ。

調子に乗って、3杯もビールを飲んだ。
治療を始めてからの最高記録かも。
夫の会社が造るビールは本当においしくて。
(さりげなくアピール。笑)

おかげで今日は朝からダウン。痛みと息切れがひどくて、午前中は寝て過ごした。
まあ、こうなることは想定済み。
年内にあと2回忘年会がある。当日はレンビマを休薬するし、翌日にはダウンを想定して予定を入れないようにしている。
そんなにしてまで参加しなくてもいいのでは?という人もいるだろう。
でも、会いたい人には、会えるうちに会っておきたいのだ。
私は、自分がいつどうなるかわからないことを知っているから。今は順調に回復しているけれど。

「人」がずっと自分の生きるエネルギー源だった。
人生は、いつも友達や仕事仲間と共にあった。
人が好きだし、人に救われてきた。
人間関係は時に面倒だけど、それ以上に得られるものが大きいと思っている。
ただ、もうこの歳になったら、嫌な人とは会わない。どんどん切っていく。時間は有限だから、その分、会いたい人に会っていく。
年内にまだ会いたい人が数人いるが、今の私はぎゅうぎゅうに予定を詰められないので、来年にまわしてしまったけれど。

今年は半年近く、誰にも会わずに寝て過ごしていたから、この3ヶ月は人と会う時間の尊さや、人から得られるパワーをしみじみと感じている。

「まだ続くけどさ、ほんま私の人生、いい人生やったと思うよ」
帰り道、誰に言うわけでもなく、ひとりごちた。

約30年前に出会った人との久しぶりの再会は、そんなことを実感させてくれた。

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