酵素風呂で、ととのう。
この1ヵ月ほど、週に1回ペース(たまに2回)で酵素風呂に通っている。
すすめてくれたのは、私のセカンドドクターだ。
セカンドドクターについてはまた別の記事で詳しく触れるが、私は某医科大学附属病院でのがん治療だけでなく、統合医療のクリニックにも通っていた。そこでは保険適用外の治療やメンタル的な相談のほか、瞑想も専門の先生について学ぶことができた。
このクリニックの存在がこれまで私を生かしてくれていると言っても過言ではない。
ただ、そこは1年半前に卒業した。
もう必要がなくなったとクリニック側で判断されたのだ。とはいえ、いつでも通えるし、瞑想の先生とはLINEでのやりとりが続いている。
すべての治療をやめて2年以上経つが、ずっと体調はよかった。ところが、半年前から体調を崩す日が増えた。これはがんというよりも冬の間に単発で受けた仕事のストレスが原因だと自分では思っている。とにかく伏せってばかりの日々を送っていた。
なんとかせねばと考えた時、ふとクリニックのドクターに「ここの酵素温浴、いいですよ」とすすめられたことを思い出した。家から少し遠いことや、基本的に「風呂」の類が好きではないこともあり、当初はすすめられても気持ちが動かなかったが、今回は直感で「行くべきだ」と思えた。
すぐに予約の電話を入れて、初めて体験したのが4月下旬。ゴールデンウィーク前だった。
初めての酵素風呂。電話で持ち物を聞いたら「バスタオルとシャワーキャップ」だけでいいという。化粧はどうすればいいんだろうかと悩んだが、遠方だし電車にも乗るのですっぴんで行く勇気はなく、とりあえず薄化粧をしてメイク道具もカバンに入れた。
場所は、駅から徒歩12分ほどのビルの中。エステ感覚でもう少しスタイリッシュな店を想像していたが、わりと年季が入っている。
オーナーのおじさんと女性スタッフが出迎えてくれ、さっそく酵素風呂の入り方を説明してくれた。
個室のシャワー付き更衣室に案内され、そこで「紙パンツ」を渡される。更衣室を出てすぐ横の部屋に酵素風呂があるので、着替えてシャワーキャップを付けたらそこへ来てください、とのこと。
「あの、化粧はどうしたら?」と聞くと、「そのままでも大丈夫ですよ」と言うので、とりあえず落とさないことにした。
さて、更衣室で一人になり、紙パンツに着替え、シャワーキャップをかぶってみたものの、出ていくのには抵抗があった。胸を隠すものがなかったからだ。上下のビキニのようなものを想像していたので、黒いトランクスのような紙パンツ1枚しか身に付けられないことに戸惑った。
完全予約制で人と顔を合わせる心配はないが、さすがにパンツ一丁で飛び出す気持ちになれず、バスタオルで胸を隠して温浴部屋へと移動した。
薄暗い部屋に、木製の大きな箱のようなものがあり、その中に見た目は「ガーデニングの土」みたいなものがぎっしり詰まっている。これが発酵している「米ぬか」らしい。
女性スタッフが浅く穴を掘ってくれているので、そこに仰向きになるようにいわれた。
そうか、結局ここでバスタオルはとらないといけないのだから、意味がなかった。
バスタオルを横に置き、パンツ一丁の姿で穴の中に寝転ぶ。
銭湯や温泉なら見知らぬ人同士が裸でも平気なのに、不思議なもので、「相手は服を着ている」のに「自分だけ裸(パンツ一丁)」というシチュエーションって、なんだか恥ずかしい。
まだ恥じらっている私の気持ちなどおかまいなしで、女性スタッフは私の上に米ぬかをどんどんかけていく。最終的に顔だけ出して埋まった状態になった。
熱い。けど、気持ちいい。感覚としては、ちょっと熱めのお風呂くらいだ。
ヒーターなどの温度を上げる仕掛けはなく、これは米ぬかが自然発酵する時に出る熱で、60℃くらいになっているという。ただ、空気の層を含むので、体感としては40~42℃くらいになる。
説明を聞きながら、日本酒の麹のことを思い出していた。麹も菌が育っていくと熱を出す。微生物の力って本当に計り知れないなぁと、そんなことを思っていたら、じわっと汗が出始めた。
さらに、スタッフが私の顔の上にシートをのせ、その上から米ぬかをどさっと置く。疲れた目元が温まって気持ちいい。
そんな状態で、最初は3~5分置きに様子を見にきてくれた。顔の米ぬかは10分程度で取り除いてくれ、あとは我慢できるところまで入ればいいとのこと。暑くて我慢ができなくなれば、手足を外に出してもいいと言うので、途中から埋まっている手足をズボっと出し、合計20分くらい入っていた。
「もう出ます」と言うと、ブラシを渡され、これで体に付いた米ぬかを適当に落とし、更衣室へ戻ってシャワーで流すようにとのこと。
体を起こしてみると、水に濡らしてから砂場に飛び込んだみたいになっている。体中が米ぬかだらけだ。
きりがないので適当に落とし、バスタオルを持って元の更衣室へ戻った。
シャワーを浴びると、シャワー室が狭いので、体についた米ぬかが飛び散り、壁も泥を散らしたようになる。性格上、それが気になってなかなかシャワーが進まない。(気にせず最後に壁も洗い流せばいいのに)
そして、シャワーキャップを取ってびっくりした。それこそ頭から水でもかぶったようにびっしょり濡れていたからだ。もちろん自分の汗だ。
一つに縛っていた太目のゴムまで濡れていて、髪を絞ると汗が滴った。たった20分でこんなに出るんだと驚いた。
シャワーを終えて体を拭こうとした時、しまった!と思った。
恥じらってバスタオルを持って行ったから、米ぬかで汚れてしまっている。移動は数秒だし、どうせ女性スタッフの前で仰向けになるのだから、こんなものはいらなかったのだとようやく気づいた。
バスタオルの汚れを避けて体を拭き、ドライヤーをかけたりメイクを直したりしたが、これもほぼ意味なし。後から後から汗が出てくる。
もういいやと、適当なところで終わらせて着替え、更衣室を出た。
「よく汗が出ましたね~」とにこやかな女性スタッフ。
「ほんますごいな、何回目?」と目を見張るオーナー。
「今日初めてです」と答えると、「初めてでそんな出るんや。すごいな」とオーナーはびっくりして私を見ていた。
「え?こんなもんじゃないんですか?」と尋ねてわかったのだが、酵素風呂に来る人は、冷え性だったり体温が低かったりで、汗腺も開いていない汗をかきにくい体質の人が多く、3回、4回と繰り返し通うことでようやく汗腺が開き、汗をかけるようになっていくのだという。
私はもともと体温も高いし、汗腺は開きまくって、とんでもない汗かきなので、最初から汗だくになってしまったのだが。
次の予約をとって、店を出ると、風が冷たくて心地よかった。
体がスッキリして軽い。
あ、もしかしてこれがサウナでいうところの「ととのう」ってやつ?
しばらく通ってみようと思った。
そして、現在、8回通った。
化粧もバスタオルで胸を隠すことも意味がないとわかったので、現在はほぼすっぴんで行き(マスクがあってセーフ!)、堂々とパンツ一丁で温浴部屋まで歩いている。
ちなみに、調べてみると、店によっては紙製の下着上下を付けさせてくれるところもあるようだが、私の通っているところは少しでも米ぬかを身体に浸透させたいということで、最低限の下着(パンツ)だけにしているようだ。
さて、肝心の酵素風呂の効能だが、血流が良くなる、新陳代謝促進、免疫力アップ、大量の汗によるデトックスなどが挙げられる。体を温めるだけでなく、酵素を身体に吸収するのも良いようだ。温泉みたいなものだ。
初回はスッキリした感覚が強かったが、3回目くらいから疲労感のほうが強くなってきた。そして、最近は体中に発疹が出るようになった。発疹といってもほとんど痒みも赤みもなく、数日すると消えてしまう。これらは好転反応で、免疫力が上がって毒素が体から出ているのだという。
確かに体調はだんだん良くなっている。昔のように体が軽く、元気が漲っている日が増えた。
これから夏なので、大量の汗がさらにどうなるのかちょっと怖いが、まだしばらくは通ってみるつもりだ。
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