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カップ焼きそばといえば……、何?

岩手県出身の友達がいる。
大阪で生まれ育った私のまわりは関西人ばかりなので、岩手出身の彼女と話しているといろいろな気づきがある。

たとえば、方言。
といっても、「物を片付ける・しまう」ことを「なおす」と表現するような「言葉の違い」というよりは、大阪弁ネイティブの私が当たり前のように使っている言葉の「ニュアンス違い」のようなもの。

印象に残っているのは、「また~しよう」だ。
「大阪の人って、一度もご飯一緒に食べてないのに、『またご飯行こうね』って言うよね?」
彼女にそう言われて、なるほど、と思った。
確かに初対面の人にも「また行きましょう!」などと言っている。彼女に言わせれば、「また」というのは「再び、三度」のような意味合いがあり、初めての相手に使うことに違和感を覚えるのだとか。
じっくり意味を考えると彼女のほうが正しいのだが、なぜか自然に「また~」を使ってしまっている。

「行けたら行くわ」もそうだ。
「大阪の人が『行けたら行くわ』って言う時は、どれくらいの確率で来てくれるの?」と聞かれ、「行けたら行くわ、は、『ほぼ行けないよ、ごめんね』の意味だよ。来る可能性はほぼないと思っといて」と教える。
彼女にとったらこういうのはもう「?」でしかない。

「つぶれる」という言葉を指摘された時も、なるほどなと思った。
大阪人は物が「壊れる」ことを「つぶれる」と言うことがある。
家電が壊れた時など、「これ、つぶれてんねん」と。
でも、彼女にとったら「つぶれる」というのは、押しつぶされてぺちゃんこになっているような、そういうイメージで、単に物が壊れた時には使わないのだという。

こういう例は挙げだしたらキリがなく、互いに方言や言葉のニュアンスの違いを言い合っては、面白がって笑っていた。

その彼女と7月にランチをした。
会う直前に見ていたテレビで、西日本では「カップ焼きそば」といえば「UFO」だが、東日本では「ペヤング」らしいと知ったので、彼女に会った時にこの話題を振ってみようと考えた。
岩手出身の彼女に「カップ焼きそばといえば、何?」と聞いたら、きっと「ペヤング」と答えるだろう。そうしたら、関西人は「UFO」なんだよ、そう教えてあげようと思っていた。

大阪の街を一望できる眺めの良いお店で、おしゃれな二色のカレーランチを食べながら、仕事や体調のことなど一通り近況報告をし合ったところで、カップ焼きそばのことを思い出して聞いてみた。

「ねーねー、カップ焼きそばといえば、何?」
すると彼女はこう言った。

バゴォーン

「……へ?何?」
「だから、カップ焼きそばでしょ?バゴォーンだよ」
「バ、バゴーン……?」

ペヤングでもUFOでもない、聞いたこともない響きの言葉に頭がついていかない。
「バゴーンって何?」
「東北ではバゴォーンっていうカップ焼きそばが人気なの。ペヤングとかUFOもあるけど、やっぱりバゴォーンだよ」
なんと!!
そんな東北限定のカップ焼きそばがあったとは!!
意外な答えと「バゴォーン」を連発する彼女が面白く、私は大笑い。
「バゴォーンにはスープも付いてるんだよ」と教えてもらい、ますます興味が出てきてしまった。

そんな一件があってから4ヶ月経った先日、彼女から宅配便が届いた。
何だろうかと開けてみると……

わーい!バゴォーンだ~!!

BAGOOOONと書くのか!!
確かに「東北・信越限定」とある

どうやら彼女が私との話を岩手に住む妹さんにしたところ、妹さんがわざわざ送ってくれたらしい。
2つ入っていたので、夫と一緒に翌日のお昼ごはんにとして食べた。
話のとおり、わかめスープもついていた。

おいしい!
キャベツが大きくて歯ごたえがあり、四角い肉みたいなのも入っている。
ただ、残念ながらペヤングやUFOとの違いがよくわからない。
なぜなら私は昔からあまりインスタントラーメン類を口にしないので、生まれてから一度もペヤングを食べたことがないし、UFOも子供の頃はよく食べていた記憶があるが、もう20年、30年と口にしたことがないのだ。

そこで、横にいたラーメン大好き夫に「どう?違いある?」と聞いてみると、「なんか、UFOとか一平ちゃんよりお上品。UFOってもっと味が濃いねん」と言う。(ちなみに夫もペヤングは食べない。UFOか一平ちゃん派、らしい)

それを彼女にLINEして伝えると、「やっぱり(東北人の)奥ゆかしさが出てしまうのでしょうか笑」と返信が来た。
うん、そんな感じだ。なんだか思っていたより優しい味がした。それに、スープ付きというのがちょっとうれしい。ほっこりするね!

それから、私が「バゴーン、ありがとう」と書いていたのに対して、指摘まではされなかったものの、彼女は「バゴォーン」と書いていたのを見て、きっとこの小さな「ォ」の存在は大事なんだろうなと思った。
なんたって正確な表記は「BAGOOOON」なんだから。

同じ日本でも地域によって言葉や食べ物がこんなに違うって面白い。
来月、彼女とはまた忘年会ランチに行く予定だから、今度はどんな話で盛り上がれるのか楽しみだ。
それまでに、ペヤングとUFOを買って食べ比べしておかなければ。

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