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島三部作から、都市へ上陸。ありのままの東京を優しく包んでくれるYogee New Wavesの新譜。

「現行のバンドで1番好きなアーティストは?」
そう尋ねられたときに、私はかれこれ2年半以上、声を大にして「Yogee New Wavesっていうバンドが大好きです!!」と答えるくらいこのバンドを愛している。

そんな私の愛してやまないYogee New Waves(ヨギーニューウェーブス:通称はヨギー)の待望の2年半ぶりの!4th Album 『WINDORGAN』が10月13日に発売された。

今回はこの新譜が良すぎて、全曲について語りたくなってしまったので自分なりの感想を記していこうと思う。

※私がヨギーを好きになった経緯につきましては、また後日。
とりあえず聴きたてほやほやの、まだレコードから湯気が出ているような新譜についてのレビューを読んでいただけたら嬉しいです。

4th Album WINDORGANの全体の雰囲気

ヨギーは前作のアルバムまでは「島三部作」という都会の喧騒からエスケープできるような音楽を中心にアルバムを作っていたそう。

深海に深く潜り込むようなディープな音楽が多かった前作と比べると、今回のアルバムは島から都市へと戻り、東京の陸で暮らす私たちに寄り添ってくれるような曲が多いように感じる。歌詞中にも東京の固有名詞がちらちらと…。

そして、旅好きなヨギーのメンバーが旅先で感じたことも、このアルバムの曲内で表現されていて、1枚のアルバムの中でも色々なジャンルの音楽が味わえる。
全曲良すぎて、単曲で聴くのではなくアルバムをフルで流して聴き込みたい、そんなアルバム。

特に、今作は歌詞が優しく前向きにさせてくれるようなパワーを秘めた曲が多いので、ぜひ歌詞カードを読みながら自宅でゆっくりレコードを楽しんでほしい。
次からは、各曲の感想を述べます。

1曲目:SISSOU

ヨギー史上、最も速いテンポで短い曲であると、バンドメンバーも語っていた1曲目。
イントロのギターカッティングからも感じられる、疾走感。
この曲の歌詞では、世界の言葉で別れを告げているフレーズがある。

「さらば ADIOS GOOD BYE 再見 またね」

この歌詞がアジアツアーなどでアジア圏中心に世界を旅したヨギーらしくて、
とても耳に残る。旅先での別れは、また新たな自分の人生のはじまりだ。

今作は初回限定のBOXセットも発売され、その中にはヨギーのメンバーが作った『yogzine』というzineも入っていた。
そのzineには、ボーカルの角舘健悟さんのライナーノーツも全曲あるので、そちらも読んでみると、さらにこの曲の深さを知ることができると思う。

また、この曲のMVが、今までのMVで訪れたロケ地で撮影されているのがとても感慨深い。

過去を振り返りつつも、島三部作から新たなところへ向かうヨギーが、
島への一旦のお別れを告げているようにも感じられた。

過去曲のMVを見てから、『SISSOU』のMVを見てみると、伏線回収が楽しめます!

2曲目:to the moon

この曲は2019年にe.pとして発売。
テレビ東京深夜ドラマの「ひとりキャンプで食って寝る」エンディングテーマとしてタイアップされた曲。

この曲はライブがめちゃくちゃ似合う曲!!
ボーカルの角舘健悟さんが、ライブ中にリズミカルに踊りながら歌う姿を見ると、観客も自然とリズムに合わせて踊りたくなってしまう。

曲調としては、ギターの音色とギターのボンちゃんが使うトークボックスによる声が宇宙っぽくて浮遊感が感じられる。

ヨギーは深夜が似合う曲がいくつかあるけれど、この曲はデビュー曲の『climax night』のように、深夜の都心をただあてもなく散歩するときに聴きたい。

ライブハウスでのライブのあとに、余韻に浸りながら歩く都心はいつもは人が多すぎて疲れてしまうのに、キラキラして見える。そんな景色に合う。

歌詞では、語尾が「〜さ」という終わり方になっている箇所がある。

「月へ直滑降さ」

MVの角舘健悟さんの服装、曲の浮遊感、語尾と、どこか健悟さんが大好きなFishmansの香りもする1曲。

3曲目:You Make Me Smile Again

アコースティックギターのイントロのちょっぴりカントリーな音色から始まる、旅をしているかのようにリズムが変化していく楽しい曲。

ほっこりしたイントロの次は、一気に雰囲気の変わるギターソロでリズミカルに。
Aメロは健悟さんの伸びやかな声が映えるメロディ、そしてサビはタイトルにもある英語詞をみんなでコーラスしていてラブ&ピース感がある。

後半につれても、リズムの変化や転調があり聴き終わるまでずっとワクワクさせてくれる。
これを1つの曲にまとめてしまう才能!!

ライブでみんなで肩を組んで、サビをシンガロングしたくなるね!
ヨギーの曲がもたらす多幸感が存分に味わえる1曲。

4曲目:Night Sliders

配信ライブでも新曲として演奏されていた、昭和のシティポップの雰囲気をヨギー色に染め上げたような曲。
今作で好きな曲を3つ選ぶとしたら、間違いなくトップ3に入れたいくらい、聴けば聴くほどハマる。

イントロは、山下達郎さんの音楽のような雰囲気で始まり、Aメロの上野さんのベースのちょうど良い重みがありながらもリズムがはっきりしてる感じもめちゃくちゃかっこいい。

サビもあんまりテンション上がらずに、クールなまま進んでいく様も、都会の冷たさやかっこよさがある。

サビを聴いた時、あの有名なドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌にぴったりだなと思った。
都内の高速道路とネオンと共に、ドラマの終盤でこの曲が流れてきたら、めちゃくちゃかっこいい!!

個人的にこの曲で好きなのが、最後に向かっていく部分の優しいメロディの出現部分。

「銀の鍵をねじ込んで 夜の帳を剥いでさ」

ここを聴いたときに、なぜか松田聖子さんがこの部分をラブリーに歌っている姿が目に浮かんできた。

今作には他の曲でも、昭和の歌姫が歌っていそうなメロディが見られるのは、おそらくメンバーが昭和の歌も好んで聴いているからだろうか。

今までかっこよく進んでいたmidnightな曲調から、次第に夜が明けて陽が昇っていく様を描いているかのような、あたたかく開けた感じ。
なんだか映画のような時の流れを、この曲から感じた。

5曲目:JUST

今作を1回通して聴いた際に、真っ先にこの曲が1番好きだと思えた曲。

今年の5月に、角舘健悟さんの弾き語りライブの配信で、エレピを弾きながら歌っていた曲。アルバムではエレピの弾き語りからのシンプルなバンドアレンジが加えられていてさらに深みを増して登場。

イヤホンで聴くと、エレピのじんわりとした音の残像を感じられ、神秘的な音の響きがより味わえたので、できたらイヤホン推奨。

この曲は、1番最後に作られた曲だそうで、コロナ禍の思いも込められているように感じる。

今までのヨギーの曲とはガラッと変わった新生感と、神聖感がある。
讃美歌のような厳かな、静かなメロディの中で歌われるのは、コロナ禍を通しての健悟さんの内に秘めた感情が、ストレートに愛を込めて表現された詩的な歌詞。

この曲は、コロナ禍を経験した私たちにすごく刺さる歌詞だ。
未知なるウイルスにより、日常生活が大きく変化し、会いたい人にも気軽に会えない寂しさ。いつまでこの日々が続くか、誰にもわからない不安な未来。
そんな暗闇から抜け出すために、必要なのは愛。

健悟さんはすごく愛情の深い人であると、インタビューやライブ、インスタの文章、曲からも感じていたけれど、こんなにもストレートに愛情を表現した曲を出してくるとは!
この曲で特に響いた歌詞を引用します。
まずは冒頭の歌詞。

「今 胸の奥に住む 底冷えする寂しさと
会い 這う」
「今 胸の奥にある かすかな光の線を 
編み始めたところ」

次に、サビの歌詞。

「降り注ぐ時よ 愛していて欲しいのは 
昨日より今日のほうが 輝いて見えるから 
しっかり平らげて 骨まで愛してね」

もうこれは詩集を出してほしいレベルに、素敵な歌詞。
歌詞の一つひとつが心に響いてしまうので、聴くときにほろっと泣ける曲。
1人で歌詞を詩のように読んで、綴られたメッセージを受け取りたい。


ヨギーのメンバーのインタビューでも、この曲に対する思いが伝わってきたので、こちらも合わせてどうぞ。


6曲目:Ana no Mujina


タイトルにもある「むじな」っていう言葉。
私は恥ずかしながらむじなを知らなかったので、早速言葉を調べてみたら、狸やアナグマの俗称らしい。
ことわざで同じ穴のむじな」という言葉があるそうだ。

goo国語辞書によると

「同じ穴のむじな」…一見関係がないようでも実は同類、仲間であることのたとえ。

ヨギーのメンバーの仲の良さや、仲間を大切にするところ、大人になっても忘れない青春感がこの曲で現れているような気がする。

なんだかfunnyで可愛い曲だ。
この曲はなんだか聴いていると肩肘張らずに、だらんと脱力してしまうようなゆるさがある。
休日の晴れた日の朝に聴きたい。

この曲の好きなところは、サビの四季を歌っている部分と、最後のアウトロ。

まずはサビの良さから。
ここの歌詞の表現が、文学的で小説の一文のようで、どんな季節のときも寄り添ってくれそう。
特に秋の歌詞が、ロマンティック。

「春の風はいたずらで もてあそぶ温度だ」
「夏の風は鮮やかで 痛快な気分さ」
「秋の風はしとやかで 君想う温度だ」
「冬の時は寂しさを 温め思うだろう」

最後のアウトロは、突然テンポアップ!
それまでのゆるい雰囲気から変わって、海外のカーニバルに近いような賑やかな音楽が始まる。

世界を旅したヨギーが届けてくれた、現地の風。
コロナ禍で海外や旅行に行きづらい今、曲を通して感じる異国情緒や四季の移ろいは、私たちの日常に彩りを与えてくれる。

今までの曲でも感じていたけれど、ヨギーは四季を大事にするバンド。
四季の表現の仕方も、日本語の良さを素敵に活用していて、温かいのが魅力。

7曲目:あしたてんきになれ

ヨギーの曲で唯一日本語表記のタイトル。
「to the moon」e.pの2曲目としてシングルリリースされていた曲。

モータウン感溢れるイントロから始まり、ヨギーでは珍しいシンプルなリズム構成で歌詞がダイレクトに伝わる。
ちょっと凹んだ日も、夜にこの曲を聴いて聴くと、明日も頑張るか!と元気がもらえる。

ライブでこの曲を聴いたときは、たしかみんなで手拍子をして盛り上がったような記憶が…!

MVもメンバーの仲の良さにほっこり。ぜひMVでこの曲を聴いてほしい。

8曲目:windorgan

今作のアルバムのタイトルにもなっている、インスト曲。

『windorgan』は風のオルガンという意味だそう。
この曲には実際の甲州街道、幡ヶ谷〜初台の道路の環境音が入っているようで、まさに風を感じる1曲。

9曲目:Toromi Days feat.Kuo

台湾のバンド、落日飛車(Sunset Rollercoaster)のボーカルKuoとのコラボ曲。
まったりとろけてしまうようなローテンポで、メロウな雰囲気がヨギーらしいチルな1曲。

台湾と日本の、ちょっと湿度の高い夜のしっとりとした空気をこの曲から感じる。
初めて聴いたとき、Kuoが歌う箇所がまさに台湾の温度感だと思った。

初めて行った数年前の、台湾の情景が脳内で鮮やかによみがえる。
台湾の常にぬるかった風を、この曲が運んでくれた。

10曲目:jungrete


ヨギーとしては珍しく、健悟さんのラップが聴けるので新鮮!
タイトル、個人的な見解だけど東京の「コンクリートジャングル」をイメージした造語のようにも感じ取れる。

次の曲である、『Long Dream』へと繋がる曲。
健悟さんのリズム感あるラップがサラッと流れていきクールだ。

11曲目:Long Dream

大人なムーディー感溢れる曲。
この曲は、ギターのボンちゃんと2人で作った曲で、アンニュイなコードが大人感を醸し出しているそう。

ヨギーは夜や深夜が似合う曲を何曲も歌っているけれど、それぞれ夜の場面が絶妙に違うのがまた良い。
アルバム出す度に、夜が合う曲が必ず入っている。

この曲は、真夜中まではいかないけれど、寝る時間にベッドサイドで目をうとうとさせながら聴くような雰囲気。

寝る前のおやすみソングとして、毎日これを聴いて眠りにつきたい。
いい夢見れそう。

この曲はメロディと音の響きが素敵で音に注目してしまう。
Aメロの和音が特にムード満点で、夢心地。

そして、ベースが珍しくウッドベースを演奏しているので低音がふくよかなサウンド。
イヤホンして聴くとウッドベースの音の良さが、特によくわかる。
そこに注目して2回目以降は聞いてみてほしい。

ラスト曲:White Lily Light

2020年に単曲で配信された曲。
これ本当に令和に出された曲なの!??って思うくらい、
平成生まれの私が聴いても昭和の音楽みたいな懐かしさを感じた。

この曲を聴いたとき、4曲目のNight Slidersの後半メロディで松田聖子さんが歌っていそう!と思ったフレーズと同じように、昭和の歌姫が白いワンピースを着て歌う姿が目に浮かんだ。

健悟さんの歌詞は女性ボーカルでもしっくりくるような、優しさがあるからなのかな。

冒頭の健悟さんの高らかに歌う歌声で始まり、Aメロに入る前のギターメロディへ。
どこか寅さんのテーマにも聴こえてくるような、そんな昭和の懐かしさが心温まる曲。

この曲はタンバリンのリズムがすごく可愛くて、ライブで聴いたらみんなでタンバリンのリズムを手拍子して楽しみたい。

優しくて可愛いらしい曲調で曲が進む途中での、かっこよいギター音のギャップも効果的。

歌詞には「風」という言葉がたくさん見られ、
最後の歌詞では旅を連想させる、遠くの愛する人へ向けての歌詞が歌われている。

「風のような気分で 1000メートル先の 
君のこと歌い」
「水平線見えるような 1000マイル先の 
君にも届く」

「風」と「旅」。

この曲がラスト曲になった理由が、アルバムタイトルの『windorgan』に込められた思いと一致して、すごく納得した。

おわりに

コロナ禍を乗り越えてまた新しい風を吹かせてくれるヨギーの音楽を、これからもずっと追い続けていきたい。

少し長くなりましたが、このブログを読んで、アルバムを聴いてみよう!と思ってもらえたら嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後も、好きな音楽などについての記事中心に更新していきます。
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lemon



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