ひなちゃんの誕生日プレゼントは!

 早い物で先月、ひなちゃんは2歳になった。
 この1年でひなちゃんのできるようになったことはたくさんある。
 自分でスプーンやフォークをを使いご飯を食べられるようになったり、手を繋いで歩けるようになったり、保育園で泣いていた小さな友達の頭をよしよしと撫でられるようになったりと、私たちの想像を大きく超えることばかりだ。
 洗濯を乾しながら
「あれ?ハンガー無いよ。探してきてくれる!」
と私が呼びかけると、タスタスタスと軽やかに足音をヒビカセ畳の部屋に入ってきて
「アンガー、アンガー」
と言いながらぷにゅっとした手でハンガーを差し出してくれるようにもなった。
 そのハンガーというのは、いつかひなちゃんが、ハンガーラックの下から持ち去りリビングのどこか、例えばボールテントの中に隠しておいた物なのだが…。
 表情は分からないけれど、まるで無くなったハンガーを探し出し、救世主とばかりに飛び切りのどや顔でひなちゃんは私にハンガーを手渡してきてくれていることだろう。高度すぎるいたずらを思いつくようになったのかと感心するほどだ。もしかしたら、本人もハンガーを隠したことは忘れていたのかも知れないが。
 そんなハンガーを介したやり取りができるようになるなど、2年前の首も座らず、ミルクをごくごく飲みこんこんと眠っていたひなちゃんからは想像もつかなかった。
 この日、そんな風にただただ生きてひなちゃんが成長できていることに感謝しつつ、夫とおもちゃ屋さんまでひなちゃんの誕生日プレゼントを買いに行った。
 風邪をひいて先送りになっていた誕生日プレゼント探しをようやく決行できたのだ。
 去年、1歳の誕生日にはボールの入ったテントを購入していた。
 私たちは、よく動くひなちゃんのことだから、テントでボールにまみれ思い切って体を動かしてくれるだろうと満を持して数あるおもちゃの中から選び出したのだ。
 ところが、意外と怖がりなひなちゃんは最初テントに一人で入って遊べず、私たちが体を折り曲げ、一緒に入らなければならなかった。
 今となってはひなちゃんも難無く一人でボールテントに入れるくらいの度胸は付いている。
 しかし、今度はぬいぐるみや型はめパズル、オルゴールなど、徐々に増えていったひなちゃんの私物でボールテント内部は埋めつくされ結局物置小屋へと変貌し、入って遊ぶことは難しくなった。
 現在は、たまにひなちゃんがお気に入りのおもちゃを探すため、テントをあさりに入っている姿を見かけるくらいだ。
 早急に、おもちゃの断捨離をしたいところである。
 こんな風にプレゼント1つ取っても、ひなちゃんからこちらが予測した通りの反応が返ってくることは少ない。
 逆に、こちらのちょっとした計らいで思っていた以上にぴょんぴょんとジャンプしながら手をたたき嬉しそうにする様子が見られるとこちらも何ともいえない喜びに包まれる。たまにとてつもない報酬を手にし、止められなくなるパチンコの大当たり!!!的なあれだ。いつも外してばかりの所に来る突然の大当たりという構図には依存性がある。
  今年も懲りずに
(少しでも喜んでくれたらいいな。いっぱい遊んでくれるかもしれない。)
なんてわくわくしながら、決して安くはないアンパンマンの図鑑を選んだ。
 これが「じゃじゃーーん!大当たり!!!」となるか、NHKののど自慢みたく「かーん」と物悲しい鐘1つが響く結果になるかは分からない。
 純真無垢な2歳児へのプレゼント渡しは、一種の博打のようですらある。
 保育園から返ってきたひなちゃんに誕生日プレゼントを差し出す瞬間、それはこの日1番の勝負処だ。

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