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青撚こん
2020年5月8日 20:34
第四章 この瞬間にしか創れない色「それで、ソラくんとはその後?」「それっきりです。私も大学に入りましたし、彼は歌手になったって聞いてます」「終わりは一瞬ですね」「そういうものです。どれだけ思い出深くても、あの頃には戻れない」周りの学生達を眺めながら思う。儚く、幼く、鮮やかだった思い出は、思い出のままがいい。私は夢を叶えた。まだ有名な訳じゃないけど、今は映画監督の勉強と、脚本家
2020年5月8日 00:08
第三章 蝉は最後に何を見る辺りはもう真っ暗なのに蒸し暑く、ビルの前の自販機でいつものサイダーを買う。そのまま自転車にまたがって、早く冷房の効いた我が家へ帰ろうとペダルに足をかけたその時、私の目にソラの姿が映った。ソラは今日も塾に来た。左の頰に痣と、小さな背中に大きなギターを背負って。そして突然教壇に立ち、「歌います!」そう叫んだ。「何の曲?」「あれですよ、あれ。」「?」
2020年5月9日 09:52
(前に投稿したのを消してしまいました。読んでくださっている方がいたら申し訳ありません)第二章 少年少女よ、鳴き叫べ。思えば、夢とかそういうものに無関心になったのは、初恋を経験してからだった。帰ってからもなんだか落ち着かなかった私は、無意識にあの頃の思い出の、その重い蓋を開けていた。毎日のように書いたラブレター。諦めの言葉を並べながらも、願っていれば叶わない恋なんてないんだと、心のど
2020年5月4日 22:32
(自作小説を投稿してみます)「新幹線まで時間があるし、この辺りで夕食を済ませてしまおうか」「そうですね、あのファストフード店なんて安そうですし」「それ言うとモテないらしいよ」「…もういいですよ」結局、上司のさりげない皮肉を受け流し、手軽なファストフード店に立ち寄ることにした。三階まで上がってようやく空席を確保できるほど、店内は混雑していた。「近頃の学生は本当に勤勉だね」上司