(小説)未定④
第四章 この瞬間にしか創れない色
「それで、ソラくんとはその後?」
「それっきりです。私も大学に入りましたし、彼は歌手になったって聞いてます」
「終わりは一瞬ですね」
「そういうものです。どれだけ思い出深くても、あの頃には戻れない」
周りの学生達を眺めながら思う。
儚く、幼く、鮮やかだった思い出は、思い出のままがいい。
私は夢を叶えた。
まだ有名な訳じゃないけど、今は映画監督の勉強と、脚本家をしている。
現状にはそれなりに満足している。
もう私は、正真正銘の大人なんだから。
…ただ、今でも
毎週木曜夜二十時からラジオで流れるシンガーソングライターの単独番組と、蝉の声を聞いてちょっとだけ泣きそうになるのは
まだ秘密にしておきたい。
Fin.