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絶望的上位互換。

雨の降る月曜日の朝。
僕はいつものように満員電車に揺られていた。窓に映る自分の顔は寝不足とストレスでやつれていた。斜め前の席に座る男は、スラリとした長身で高級そうなスーツを着こなし、顔立ちも整っている。彼はスマホで英語のニュースサイトを流暢に読んでいた。
彼は会社の後輩のAだ。

「ああ、またあいつだ…」

僕はため息をついた。

会社にはAのような僕の上位互換がゴロゴロいる。
仕事ができる、頭がいい、容姿端麗、スポーツ万能、コミュニケーション能力も高い。
彼らと自分を比べてはいつも惨めな気持ちになる。

昨日のプレゼン時もそうだった。
僕が一生懸命作った資料を彼はたった一言で改善してしまった。上司や同僚からの賞賛の目は当然彼に向けられる。
「Aさんさすがですね!あの改善点は私には思いつきもしませんでした!」
「Aくんは本当に頼りになるなぁ。いつも助かってるよ!」
僕はまるで空気のように扱われた。
彼の隣に立つことすら、苦痛で仕方がなかった。

飲み会でも彼はいつも中心人物だ。面白い話で場を盛り上げ、女性社員からは黄色い声が飛ぶ。僕は端っこの席でウーロンハイを飲みながら彼らの楽しそうな様子を眺めているだけだった。

家に帰っても虚しさは消えない。
SNSを開けば同僚と楽しそうにしている彼の姿が目に飛び込んでくる。

「あんな風に生まれたかった…」

心の底から羨ましさを感じ、同時に深い絶望感に襲われる。彼と自分を比べては劣等感に苛まれる日々。
鏡に映る自分はちっぽけで無力で存在価値のない人間に思えた。

雨は、夜になっても降り止まなかった。まるで僕の心の叫びを代弁しているかのように。

僕は明日も会社で彼と顔を合わせなければならないと思うと吐き気がするほどだった。

「もう、どうでもいい…」

僕はベッドに倒れこむようにして眠りについた。
夢の中でも、彼の完璧な姿が僕を嘲笑っていた。


終わり


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