年末と干支と探偵と
夜の街に静けさが戻る中、二人の探偵は古い型の白い軽バンの車内で息を潜めていた。
対象者が動く気配はない。
時計の針が午前2時を回り、退屈と眠気が交互に襲ってくる。
探偵A:「なぁ、干支ってさ順番決めるのに競争したって話知ってるか?」
探偵B:「ああ、あれだろ。ネズミが牛の背中に乗っかって、ゴール直前で飛び降りたってやつ」腕を組んでフロントガラスの向こうをじっと見つめたまま返す。
探偵A:「そうそう、てかネズミが一番って納得いかないんだよなぁ」
探偵B:「はぁ?何が納得いかないんだよ」
探偵A:「だって考えてみろよ、十二支だぞ?もっとデカい動物とか偉そうなやつが一番になるべきだろ。たとえば…虎とか龍とかさ」
探偵B:「それ本気で言ってんの?干支の順番に偉そうとかないだろ。だいたい、龍なんてそもそも架空の生き物だろ。最初から競争に参加してる時点で反則だし」鼻で笑った。
探偵A:「でも龍がいるのに猫がいないのも変じゃね?」
探偵B:「お前、それも知ってる話だろ。ネズミが猫に嘘ついて日付間違わせたって話」
探偵A:「いや、そこがまたムカつくんだよな。ネズミ、性格悪すぎだろ。そんなやつが一番とか道徳的にどうなんだよ」
探偵B:「お前、張り込み中に道徳語るなよ。だいたい干支の話してる場合か?」
探偵A:「だってクリスマスも終わって暇じゃん。じゃあ何の話すんだよ」少しむっとしながら反論する。
探偵B:「じゃあ、どの動物が一番だったら満足なんだよ」軽くため息をつき、車のドアポケットから菓子パンを取り出した。
探偵A:「やっぱ犬だろ。忠実で可愛いし」少し考え込むように腕を組むと、真剣な顔で答えた。
探偵B:「は?犬なんて11番目じゃん。どうやって1位になんだよ」
探偵A:「いや、犬は特別枠で参加免除されてて、神様に『お前は裏番長として好きなときに登場していい』って言われたって設定にすりゃいいんだよ」
探偵B:「お前のその無理やりな設定、アニメのヒーローか何かかよ」パンを咀嚼しながら笑った。
その瞬間、スマホが静寂を破った。
所長:『対象者が動き出した、そっち方面に行ったぞ!!』
探偵Aは白い軽バンのエンジンをかけ、緊張感の中で街へと飛び出していった。
数分間の沈黙の後。
探偵B:「…お前さ、ネズミが嫌いなんだな」
探偵A:「いや、俺、ネズミ年なんだよね」笑いをこらえながら答える。
探偵B:「は?……え?ネズミ年?」
探偵A:「ああ」
探偵B:「じゃあお前、ネズミが一番でいいじゃねぇか!」
追尾中の車内に二人の笑い声がこだました。
終わり
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