冬とコーラと探偵
真冬の車内は冷え切っていた。
張り込みというよりも、冷凍庫の中で耐久戦をしているような気分だった。
探偵Aはため息をつきながらボトルの蓋をひねる。
中身はぬるくなったコーヒー。
探偵A:「なあ、コカ・コーラ派かペプシ派かどっちだ?」
探偵B:「それ、今ここで議論する必要あんの?」後部座席で窓の外を見たまま首を傾げた。
探偵A:「いや、別に必要はない。でも暇だろ?」
探偵B:「暇なのはわかるけどさ。なんでそんな質問?」
探偵A:「いや、最近ペプシ派が意外と多いってネットで見たんだよ。俺はコカ・コーラ派なんだけどさ、ペプシ派の言い分を聞くとちょっと揺らぐんだよな」
探偵B:「ネットの記事で揺らぐなよ。お前のアイデンティティはそんなに軽いのか」ようやく顔を向けて呆れたように笑う。
探偵A:「だってさ、ペプシのほうが甘いって言うだろ?でも、甘すぎると飽きるんだよ。コカ・コーラはその点バランスがいい」
探偵B:「なるほど、味覚で語るわけね。でも俺はラベルのデザインで選んでる」
探偵A:「デザイン?」
探偵B:「そう。ペプシの青いラベルが好きなんだよな。なんか未来っぽい感じがする。」
探偵A:「未来っぽいって……そんな理由で選んでるのか」呆れたように首を振り、ボトル缶のコーヒーを飲み干した。
外は相変わらず人通りがなく、目当ての対象者も姿を現さない。
探偵A:「なあ、実際のところどっちが売れてるんだろうな?」
探偵B:「たぶん、コカ・コーラだろ。歴史が違うし」
探偵A:「でもさ、ペプシって挑戦するじゃん。いろんな変な味出してさ」
探偵B:「確かに。キュウリ味とか出してたな。あれ飲んだか?」
探偵A:「飲んだよ。正直、罰ゲームかと思ったけどな」
探偵B:「俺は手を出さなかった。そういう冒険はお前に任せる」
二人はしばらくくだらない会話を続けたが、結局どちらが優れているかの結論は出なかった。
探偵A:「あ、動いた」
探偵B:「あいつ?」
探偵A:「多分」
二人の探偵は一気に真剣な表情になり、車を出す準備を整える。対象者がようやく動き出したのだ。エンジンをかける直前、探偵Aがふと呟いた。
探偵A:「なあ、結局オレたちってコーラは好きなのか?」
探偵B:「簡単だろ」
探偵A:「どういうこと?」
探偵Bはポケットから何かを取り出して、探偵Aの膝に放った。そこにあったのは、どちらでもない栄養ドリンクの瓶だった。
「俺たちは、リポD派だ」
そう言い放つ探偵Bの顔は、妙にドヤ顔だった。
終わり
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