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秋の気配と探偵

10月、空に広がる雲は夏の入道雲から秋のうろこ雲へとその姿を変え、街路樹の葉も少しずつ色づき始めていた。
肌を刺すような日差しはなりを潜め、代わりに冷たい風が吹き抜けるようになってきた。

灰色の雲が低く垂れ込め朝から降り続く雨は、雑居ビル群のアスファルトを黒々と濡らしていた。
その一角、ひときわ年季の入ったビルの入口に二人の探偵の姿があった。

探偵Bはトレンチコートの襟を立て、鋭い視線で対象者のアパートを見つめている。
一方、探偵Aはというとなんとサンダル履きである。

探偵B:「おいおい。いくらなんでもその格好は寒くないか?」呆れたように声をかけた。

探偵A:「へへっ、これにはちゃんと訳があるんだよ。ほら、このサンダルめっちゃ歩きやすそうだろ?それにこの前の調査で足首を捻挫しちゃって、まだ革靴はちょっとキツいんだよね」ニヤリと笑って答えた。

探偵B:「調査で捻挫?そんな話を聞いた覚えはないぞ」怪訝な顔をする。

探偵A:「あ、あの、それは…ちょっと内緒の調査で…えーっと、その…。」慌てて言い訳を始めた。

探偵B:「まあいいよ。しかし、そのサンダルで本当に大丈夫なのか?対象者がダッシュしたらどうするんだ?」それ以上追求せず、ため息をついた。

探偵A:「大丈夫だよ!このサンダル、見た目によらずグリップ力抜群なんだ!それにいざとなったら…裸足になるし」自信満々に胸を張る。

探偵Bは半信半疑ながらも熱意に押されて、それ以上何も言わなかった。


沈黙がしばらく続いた後
探偵B:「ところで、対象者はいつ出てくるんだっけ?」

探偵A:「えーっと、確か…」スマホを取り出そうとしたその時、対象者のアパートから人影が現れた。

探偵A:「あ、出た!俺行ってくるわ!」サンダルで勢いよく駆け出した。

探偵Bも慌ててその後を追う。
探偵B:「お前、捻挫してないだろ。おい、待ってくれよ!」

二人の探偵は、秋の街を駆け抜けていく。

ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ……………』

サンダルがアスファルトを叩く音が妙に軽快に響いていた。


終わり


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