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リセット

医者の口から告げられた余命宣告は驚くほど淡々としていた。

「あと半年でしょう」

まるで天気予報のような口調だった。
私はふと曇り空を思い浮かべ雨が降るのかどうか気になった。

家に帰り、これまでの人生を振り返ることにした。
平凡な両親のもとで生まれ、普通に学校へ通い、普通に就職し、普通に結婚して、普通に子供を育てた。
定年を迎え孫が生まれ、気づけば余命半年の老人になっていた。

波乱万丈とはほど遠い穏やかすぎる人生。

「面白くなかったな」

独り言が静かな部屋に響く。
後悔があるわけではない。
ただ、映画にするなら退屈すぎる人生だったと思う。せめてもう少し刺激的な経験があれば。

私は机の引き出しを開け小さな赤いボタンを取り出す。

「リセットボタン」

これは神様がくれたのかそれとも悪魔の仕業か分からないが押せば人生をやり直せる。
今回は平凡すぎる人生だったから次こそ面白い人生を——。


カチッ。


目の前が暗転する。


目を開けると私は分娩室で必死に泣き声をあげている。
今回の母親は底意地が悪そうだ。


これで八回目のリセット。
未だ面白いと思える人生を歩めていない。


終わり


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