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チョコレートと探偵

古い型の白い軽バンの中。
内装はヤニで薄汚れ狭い空間にタバコの煙がゆるやかに立ち上る。

探偵A:「なあ」不満げに窓の外を見ながら呟く。

探偵B:「なんだ」窓枠に肘をつきながら煙草をくわえたまま答える。

探偵A:「暇すぎる」

探偵B:「知ってる」

探偵A:「なんか話そうぜ。せっかく長時間一緒なんだし」

探偵B:「お前と話すとろくなことにならないじゃん」

探偵A:「ひどいな!同僚だろ俺たち!」

探偵B:「それとこれとは別の話だ」

探偵A:「……じゃあ、チョコの話しよう」

探偵B:「は?」煙を吐き出しながら、訝しげに探偵Aを見る。

探偵A:「ほら、バレンタインも近いしさ。チョコ好き?」

探偵B:「別に…」

探偵A:「おいおい、適当に流すなよ。お前甘いもの好きだろ?前にカフェでシフォンケーキ頼んでたの見たぞ」

探偵B:「たまに食うくらいだ」

探偵A:「で、チョコは?」

探偵B:「……ビターなら悪くない」

探偵A:「お、いいね!俺はミルク派!」

探偵B:「子供だな」

探偵A:「うるせえ!甘いものは心の栄養なんだよ!」

探偵B:「お前の場合、頭の栄養も必要なんじゃないか?」

探偵A:「うっ、痛いところを突いてくる……。でもさ、チョコってなんかいいよな」

探偵B:「どこが?」

探偵A:「ほら、疲れたときに一粒食べると生き返る感じするだろ?」

探偵B:「糖分の効果だな」

探偵A:「そういうロマンのない言い方すんなよ……」頬を膨らませながらポケットから小さなチョコレートを取り出した。

探偵B:「お、いいもの持ってるじゃないか」

探偵A:「食う?」

探偵B:「じゃ1つだけ」煙草を灰皿に押し付けながら差し出されたチョコを受け取る。包み紙を剥がし一口で食べるとほのかな甘みが口の中に広がった。

探偵B:「悪くない」

探偵A:「だろ?ほら、もう一個あるぞ」

探偵B:「遠慮しとくよ」

探偵A:「えー、遠慮すんなって」

探偵B:「いや、そうじゃなくて……」探偵Aの手に視線を向ける。探偵Aの手には溶けてぐにゃぐにゃになったチョコが。

探偵B:「……お前、さっきからずっと握りしめてただろ」

探偵A:「……」

探偵B:「それ、もうチョコじゃなくて液体だぞ」

探偵A:「……食べる?」

探偵B:「いるか」冷めた目で呟くと再び煙草に火をつけた。

探偵A:「……」
探偵B:「……」

探偵A:「チョコって奥深いよな……」

探偵B:「溶けてるけどな」

こうして、二人の暇な張り込み時間はゆるやかに過ぎていった。


終わり


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