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14歳の選択

中学二年生の優太は息苦しさを感じていた。
生きていても怒られるし、死んでも怒られる。そんな気がしてならなかった。

テストで良い点を取れば、「その点数で満足しているのか!」と怒鳴られる。悪い点を取れば当然のように雷が落ちる。部屋の掃除をサボれば、「だらしない!」と罵倒され、きちんと掃除をしても、「そんなことより勉強しろ!」と怒られる。
学校ではテストの点が悪ければ先生に叱責され、友達とトラブルになれば親に報告されまた怒られる。

「生きているだけで怒られる…」
そんな思いが優太の心を蝕んでいった。

ある日、学校の屋上に立った優太は下を覗き込んだ。
ここから飛び降りたらどうなるんだろう。一瞬、恐怖よりも解放感の方が大きく感じられた。

その時、背後から声がした。「おい、大丈夫か?」
振り向くとクラスで浮いている存在の吉田が立っていた。

吉田はいつも一人で本を読んでいるような静かなやつだ。優太は何も言えずに俯いた。

「…俺も、そう思ったことがある」吉田は静かに言った。

「生きていても死んでも誰かに迷惑をかける。だったら、いっそ消えてしまいたいって」優太は驚いて吉田を見上げた。

吉田は続けた。
「でも、そう思っていた時に面白い小説を見つけたんだ。主人公は俺たちみたいに悩んでいた。でも、最後は自分の力で道を切り開いていく。その姿を見て自分も頑張ってみようと思ったんだ」

吉田はその小説を貸してくれた。優太はその小説を読みながら初めて自分の悩みを客観的に見つめることができた。

主人公は周りの期待に応えようと無理をしていた。
しかし、ある時自分の本当にやりたいことを見つけ、周りの目を気にせず突き進むことを決意する。
そして、様々な困難に立ち向かいながらも最後は自分の力で道を切り開いていく。

「…自分も、そうなりたい」優太は心の中で呟いた。

翌日、優太は勇気を出して母親に自分の気持ちを伝えた。
「お母さん、僕はいつも怒られるのが怖くて何もできないでいる。でも、これからは自分のやりたいことをやってみたいんだ」

母親は驚いた顔をした後、静かに言った。「…そう、わかったわ。優太のやりたいことを応援するわ」

それから優太は少しずつ変わっていった。
勉強も、部活も、自分のペースで頑張るようになった。もちろんうまくいかないことや怒られることもあった。でも、以前のように萎縮することはなくなった。

そして、優太は気づいた。
生きていても怒られるし、死んでも怒られる。

それは自分が生きている証であり、誰かと繋がっている証なのだ。

優太は屋上で吉田に言われた言葉を思い出した。

「生きていれば何か良いことがあるかもしれない」

今はまだその「何か」が何なのかわからない。
でも優太は前を向いて進んでいくことを決意した。
生きていれば、きっと何か良いことがあると信じて。


終わり


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