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カップ麺と世界の終わり

西日が傾き始めた街角に一台の白い軽バンが打ち捨てられたかのように停まっていた。フロントガラス越しに見える車内は空のペットボトルや書類、工具などが散乱している。
この白い軽バンは4時間ほど前からこの場所に停まったままだ。周囲を歩く人々は時折この車に視線を向けるがすぐに興味を失い足早に通り過ぎていく。まるで街の風景の一部と化しているようだった。

しかし、この白い軽バンはただそこに停まっているだけではない。車内では探偵Aがハンドルに突っ伏したまま目を閉じている。彼の顔には疲れと焦燥感が刻み込まれている。そう、張り込み中なのである。

探偵A:「なぁ、もし明日世界が終わるってなったらどうする?」目を閉じたまま後部座席の探偵Bに唐突に尋ねた。

長時間張り込みの末、対象者がシティホテルに入ったのを確認しあとは出てくるのを待つだけの状態だった。

探偵B:「はぁ?なんだ急に。そんな非現実的な…」面倒くさそうに答えた。

探偵A:「いやだってさ、もし本当に明日世界が終わるってなったら今日まで頑張って浮気調査してた意味なくない?人生最後の日に他人の不倫現場を監視してるなんて虚しすぎるだろ」

探偵B:「まぁ、そう言われればそうだな…」少し考え込む。
確かに、世界の終わりが明日だと分かっていればこんな仕事を引き受けていなかっただろう。

探偵B:「で、お前はどうするんだよ?」

探偵A:「決まってるだろ?好きなだけカップラーメン食う!それも高級なやつをな!」ニヤリと笑って答えた。目を輝かせながら様々な種類のカップラーメンを思い浮かべているようだった。

探偵B:「カップラーメンか…お前らしいな」呆れたように言ったが自分も何かしたいことを考えた。

探偵B:「俺は…そうだなぁ、家族に電話して今まで言えなかった感謝の気持ちを伝えたいかな」

探偵A:「うわ、急に真面目かよ。らしくねーな」茶化すように言った。

探偵B:「いや、だってさ、もし明日世界が終わるなら後悔したくないだろ?家族にちゃんと気持ちを伝えておきたいんだよ」真剣な表情で答えた。

探偵A:「…そうだな。俺も親父に電話してみるか…」少し黙り込んだ後、真面目な顔で言った。


二人の探偵はしばらく沈黙し、それぞれの家族のことを考えていた。車内に流れるラジオからは明日の天気予報が流れている。明日は晴れの予報だった。

探偵B:「なぁ、もし明日世界が終わらなかったらこの調査、ちゃんと終わらせようぜ」

探偵A:「おう!で、終わったら高級カップラーメンをたらふく食おうぜ!」いつもの調子に戻って答えた。

探偵B:「ああ」苦笑しながら答えた。

その時、探偵Aのスマホが鳴った。対象者がシティホテルのフロントを通過したという連絡だった。二人は慌てて車外へ飛び出しいつものようにカメラを構えた。

探偵B:「よし、行くぞ!」
探偵A:「おう!」

二人の探偵は息を合わせ対象者を追いかけ始めた。

世界の終わりが明日だろうと今日だろうと
彼らの仕事は終わらない。
それが探偵という仕事なのだ。

…しかし、二人が追いかける対象者の男はなぜかカップラーメンの箱を抱えていた。

「あれ…?なんでアイツ、カップラーメン持ってんだ…?」
二人の探偵は顔を見合わせ不吉な予感を覚えたのだった。


終わり


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