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人類史上初

人類史において最大の瞬間が訪れた。
異星人との初めての会談だ。国連本部に設けられた会場は静寂に包まれ、各国の代表者たちは緊張で固まっていた。
やがて、目の前に現れた異星人の姿を見て誰もが息をのんだ。

彼らは「蜂」の姿をしていたのだ。
黄金の複眼、漆黒の細い肢、そして翅の振動が低い音を立てている。人間の手のひらほどの大きさだがその存在は恐ろしくも美しい。

そして彼らは言葉ではなく、直接頭に響く「音」で語りかけてきた。
「我々は4億年間、この星を見守り続けてきた。我々の同胞はこの地で繁栄し、無数の生命を支えてきた。だがあなたがた人類の出現によってこの星の均衡は崩れた」

会場にざわめきが走る。

「ゆえに、我々の同胞を全て引き上げさせる。我々は地球の未来に関与しない。これが最初で最後の会談だ」

蜂の異星人は小さく翅を振動させる。

「我々はこの星の同胞の守護者であり、彼らこそこの星の真の支えである。しかし、もはや手遅れだ」
そう言い残すと、蜂の姿をした異星人たちは音もなく空間に溶けるように消えた。

こうして会談は呆気なく終了した。

翌日、世界中で奇妙な現象が報告された。昆虫が一匹残らず姿を消したのだ。ミツバチ、蝶、カブトムシ、アリ、トンボ等あらゆる種類の昆虫が一斉にいなくなった。最初は都市部の人々は気づきもしなかったが、農業従事者や自然科学者たちはすぐにその異変に戦慄した。

「蜂がいない! 受粉ができない!」
「作物が育たないぞ! 次の収穫はどうなる?」


数ヶ月後、変化は明らかになった。農作物の生産量は急激に低下し、野菜や果物は市場から姿を消した。
人々は加工食品に頼ろうとしたが次第にそれらも不足し始める。

「昆虫は作物を受粉するだけじゃないんだ」
ある生物学者が報道番組で警告する。
「昆虫は死骸や落ち葉を分解して土壌を豊かにし土を耕していた。彼らがいなければ土は痩せ、作物が育つ土壌すらなくなる。そして、恐ろしい事に彼らを餌にしていた鳥や魚も姿を消し始める」

その予言は現実となった。街ではスズメやツバメが消え、川や海では魚が減少。生態系は音を立てて崩れていった。

そして数年後、人類は次の危機に直面する。

酸素不足だ。

「地球上の植物の約80%は昆虫による受粉に依存している。植物が減れば酸素供給も減少する。私たちは生きられなくなる……」
酸素濃度の低下はゆっくりと、しかし確実に人々を追い詰めていった。


数十年後、地球は荒廃していた。
乾いた土壌、枯れ果てた森、餓えた人々。
その静かな終末の中、かつての国連会談を覚えている者はごくわずかだった。そして彼らは思い出す。

「蜂の異星人は言っていた。彼らの同胞が地球を支えてきたと……」

だが、今となっては遅すぎた。
人類は自らの繁栄の陰で地球の支えを壊していたのだ。

遠く彼方の星で、蜂の異星人たちは沈黙の中
かつての緑豊かな地球を静かに見つめていた。


終わり


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