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大みそかと探偵

灰色の雲が低く垂れ込めた大つごもりの午後、冷たい風がオンボロ車の窓ガラスを揺らしている。
張り込みに使われる古い型の白い軽バンの車内では二人の探偵が防寒具にくるまりながら対象者の動きを待っていた。

探偵A:「なあ、今年もあと少しだな。振り返る?」運転席からポツリとつぶやく。

探偵B:「今年もその話か。お前、年末になると振り返りたがるよな」缶コーヒーをすすりながら応じる。

探偵A:「いや、今年は特に振り返ること多いだろ。AIが進化したとか、国際情勢がバタバタしたとかさ」

探偵B:「まあね、今年はニュースが多すぎて追いつけなかったな」

探偵A:「特にあれ、チャットGPTがまた進化してなんか文章どころか絵も描けるようになったとか言ってたろ?」鼻息を荒くして身を乗り出す。

探偵B:「絵とかも秒で作成だろ?でも、俺たちには無縁だよな。AIに張り込みは無理だし」苦笑する。

探偵A:「いや、AIがもっと進化したら張り込みとか含め探偵業務を全部任せられる時代が来るんじゃないか?」

探偵B:「俺たち、職失うんじゃん」

探偵A:「ばか、事務所でモニタリングだよ。それにこんな寒い車の中で夜通し待たなくていいんだから」


探偵A「あと、あれもあったよな。オリンピック、パリの」窓の外を見ながら呟く。

探偵B:「あれも今年だったんだっけ?」

探偵A:「そうそう。でもパリの空港とかダンサーのストライキで結構混乱してたらしいぞ」

探偵B:「へえ。まあ、どこもバタバタしてるんだな」


探偵B:「お前、今年の流行語知ってるか?」缶コーヒーの底を覗き込みながらつぶやく。

探偵A:「え、なんだっけ?大賞は『ふてほど』だったよな」

探偵B:「『トクリュウ』だよ。匿名・流動型犯罪グループ」

探偵A:「ああ、闇バイトね。あれのせいで住宅街の張り込みのしづらさが一段階上がったもんな」



探偵B:「あ、なんか動いたぞ!」急に窓の外を指さす。

探偵Bはデジカメを手に取る。
が、そこにいたのは対象者ではなく、紋付袴の衣装を着た若者がスマホ片手に踊っている姿だった。

探偵B:「……なんだよ、ただのTikTokerか」脱力して言う。

探偵A:「今年もTikTokは相変わらず元気だな」苦笑しながらエンジンをかけた。

探偵A:「俺たちが追うべきなのはAIとか、SNSとか、こうもっと時代に合った何かかもしれないな」深いため息をつく。

探偵B:「お前、そんなセンチな事考えてる暇があったら張り込みに集中しろよ」

冷えたエンジンが唸りを上げ、冷え切った車内に温風が染み渡る。

そして、何も動きのない張り込みの中で
二人の会話だけが続いていく。

2024年最後の夜も
普段と何も変わらない二人の探偵であった。


皆様、良いお年をお過ごし下さい。


終わり


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