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消えた数字

「おかえりなさい、お父さん」

玄関で小学五年生の直人が出迎える。晩御飯の匂いが漂い、温かな日常が広がっている。

「ただいま。宿題は終わったか?」

「うん、でも変なことに気づいちゃった」

直人はリビングのテーブルに広げた計算ドリルを指さした。そこには問題が並んでいたが、なぜかページの隅に書かれた「8」という数字だけが消えていた。

「最初は書き忘れたのかなって思ったんだけど、別のページでも『8』だけが消えてるんだよ」

父親の健二は首をかしげた。印刷ミスかと思ったが、ドリルをめくるうちに寒気が走った。直人の筆箱に貼られていたシールの「8」も、冷蔵庫に貼ってある献立表の「8日」も、まるで最初から存在しなかったように消えていたのだ。

「これは……偶然か?」

その時、テレビのニュースが流れた。アナウンサーが真剣な顔で何かを伝えている。

「本日未明、国立天文台は、太陽系の惑星の軌道に異常が発生していることを確認しました。一部の研究者は、理論上ありえないはずの"8番目の天体"が存在していた可能性を示唆していますが……」

健二はゾッとした。スマホで太陽系の惑星一覧を検索する。しかし、どうしても何かが足りない気がする。

「……お父さん、海王って何の王様?」

直人がふと呟いたその瞬間、健二の頭に強烈な違和感が押し寄せた。何かが、確かにあったはずのものが、完全に消え去っている
——まるで最初から存在しなかったかのように。

テレビの画面が一瞬乱れた。直人はじっとそれを見つめ、つぶやいた。

「……本当に '消えた' のかな?」

その時、健二はハッとした。消えたのは「8」と、それに関連するものだけ。ならば、まだ"消えていない"ものがあるはずだ。彼は急いで自分の腕時計を見た。

「直人、今何時だ?」

「えっと……8時……」

直人が言いかけた瞬間、壁時計のデジタル表示が乱れ8時を示す部分が空白になった。そし健二の声からも「8」という音が消えた。

「……_時……」

健二は理解した。
これは「消失」ではない「隔離」だ。_という数字と、それに関連するものはどこか別の場所に隔離されている。そしてその場所からまだこちらを覗いているのだ。

「直人、お前が感じた違和感は正しい。この世界から_が、いや…」健二は少し口ごもり、「…何かが、どこかに閉じ込められている」

彼は決意したように立ち上がった。
「その場所を探し出し取り戻さなければならない。それができるのは…、_を感じ取れるお前だけかもしれない」

直人は父親の真剣な眼差しを受け止め力強く頷いた。
消えた「8」の謎を解き明かす父と子の奇妙な冒険が始まった。


終わり


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