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マスクの呪縛

薄暗い病室で男は激しく咳き込んでいた。
白いマスクの上には赤い斑点が浮かび上がっている。
医師の藤田はその斑点に見覚えがあった。それは最近流行している謎の呼吸器疾患、通称「マスク症候群」の患者の共通点だった。

「またか…」

藤田は患者のマスクを外し気管支に内視鏡を挿入した。
結果はいつもと変わらず炎症をおこし赤くなっているだけだ。

抜いた内視鏡の先端を無造作に置かれた患者のマスクの内側に置いてしまった時、全てを理解した。
モニターに映し出されたのは無数の白い虫が蠢く異様な光景だった。虫たちはまるでマスクの一部のように白い外骨格を持っていた。

「これは…まさか…」

藤田は親友の昆虫学者である山田に連絡を取った。山田はモニターに映る虫を見て顔色を変えた。

「これは新種だ。しかもマスクの繊維を栄養源にして繁殖しているようだ」

二人はこの虫を「マスクモドキ」と名付け研究を開始した。
マスクモドキは人間の呼気中の二酸化炭素に引き寄せられる性質を持ち感染者にマスクを着用させることで自らの繁殖地を拡大していたのだ。

「人類は知らず知らずのうちに彼らの繁殖に手を貸していたのか…」

藤田はマスクモドキの脅威を世間に公表しようとしたが、政府はそれを阻止した。パニックを恐れたのだ。

しかしマスクモドキの進化は止まらなかった。彼らはより強力な翅を獲得し、飛沫ではなく自らの意思で飛行するようになった。
街は感染者で溢れかえり、医療システムは崩壊寸前となった。藤田と山田は独自に新薬開発を進めるが糸口さえ見つからない状況だった。

そんな中、藤田はマスクモドキの弱点に気づく。彼らは赤外線に極端に弱い性質を持っていたのだ。藤田は山田と共に赤外線照射装置を開発し街中に設置することを提案する。

政府もついに重い腰を上げ、大規模な赤外線照射作戦が開始される。街は赤外線の光に包まれマスクモドキは次々と死滅していく。
人類はようやく反撃の糸口を掴んだのだ。


長い戦いの末、人類はマスクモドキの脅威を克服した。

しかし、世界は大きく変わってしまった。

マスクは感染症対策の象徴から、恐怖の象徴へと変貌を遂げたのだ。

そして人々はあの白いマスクの下に隠された
無数に蠢く小さな昆虫の恐ろしさを決して忘れることはなかった。


終わり


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