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練武知真第40話『静中動を学ぶ為の武術』
『静中動』。
中国武術や気功の世界において耳にする言葉。
「静かな状態の中にある動き」を表現しています。
色々な解釈で使われるこの言葉。
旺龍堂で教える中国武術「形意拳」を例に挙げてお話しします。
形意拳には最基本練習として『三体式站椿功』というものがあります。
![](https://assets.st-note.com/img/1732100325-Dkr1ERxSu0GMLKVfvd4ybp2m.jpg?width=1200)
脚を前後に開き、
体幹を後方寄りに置き、
前脚側の掌を前方へ向けて推し出す姿勢を維持して立ち続ける練習法です。
同じ姿勢をキープして立ち続けているので、外見上は動きがありません。
しかし、その内側では多くの要求項目を充たすべく、微細な調整を繰り返しているのです。
自分の身体感覚を頼りにして。
体幹や体軸の確立。
腰背部を垂直にする為の骨盤の調整。
鼠径部を開かないようにする為の股関節の内転。
腕と脚の脱力。
首回りや肩、胸のリラックス。
肩甲骨による腕のコントロールなど・・・
物理的な項目だけでもその要求はとても多いのです。
さらに・・・
『発勁(特殊な打撃法)』の為の全身を巡る『勁路(足裏から掌へ至る力の伝導ルート)』を開発する。
『気』の概念の導入よって臍下丹田を開発し、全身に気を充実させる。
『心』を落ち着ける、または、闘志を発生させる。
やがては、頭上に天を感じ、足裏に地を感じて、『三才合一(天人地を一つにする)』を追及する・・・。
外観からはただジッと立っているだけに見えますが、実はこれだけの【動き】を行っているのです。
これらは訓練時における『静中動』です。
そして闘いの場面での『静中動』は・・・
相手との対峙のシーンが分かりやすいでしょう。
あまり動きがなくても、
相手のちょっとした動きも見逃さないように意識を集中したり、
対複数であれば逆に意識を周囲に拡散したりします。
また心が浮つかないように臍下丹田に気を入れて、腹を据えたり、
うなじを立てて、精神を奮い起こしたりします。
反応性と打撃力の向上の為、瞬時にどのようにでも動けるように体を整え、全身に気を充たします。
他にもありますが、ただ向かい合っているだけでもこれだけの【動き】を行っています。
さらに修行が進んでゆくと、深い『静中動』が現れます。
三体式站樁功において、心と体を「放鬆(緊張の除去)」を続けていると、
最初は頭頂部が天へ伸びてゆく感覚が得られ、
次に全身が周囲に広がってゆき、周囲の空気との境界が曖昧となる感覚が生じます。
自分の心が肉体の器から溢れ、自然と一体になる感覚です。
さらに、そうして広がった「自分」を、改めて自分の肉体に戻すことによって、これまでにない充実した心身を得ることができます。
エネルギーに満ち満ちた揺るぎのない「自分」に。
天地の間に確固たる存在として立つ「自分」に。
心も体も静寂そのものですが、奥底に凝縮した強さが宿るようになります。
これらの『静中動』は、武術の枠を越え、人間そのものを開発することになります。
形意拳には次のような言葉が伝わっています。
『静中動、これを真動という』
本当に貴重な『動』は、静かな状態の内側にあり、それは外からは計り知れない・・・という事。
心と体を静寂にし、その奥底にある「心の動き」、つまり、『本心』と向き合い、自分の人生を真に意義あるものとしてゆく。
私もまた『真動』を求める一人なのです。
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2024年11月20日 小幡 良祐
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