見出し画像

【オランダ移住 vol.38】穏やかな昼下がりの不穏

夏の終わりをヒシヒシと感じるオランダ。

昨日は天気も良かったので、近くの公園で行われた子供向けイベントに昼から行ってきた。

入り口で首から下げるチェックシートをもらい、公園に点在するアクティビティをすべてやり切ればギフトがもらえるという仕組みらしい。

娘もさっそくシートをもらってカメラ撮影、ポプリ作り、野鳥観察などのブースを回りつつスタンプを押してもらっていた。

広い公園に点在するアクティビティのブース

わたしもそれに付き合ってブラブラしつつ、次々とやって来る家族連れをなんとなく観察していた。人種的には6,7割がオランダ人、中東系1,2割、アジア系1割といった感じだったろうか。

その中でちょっと気になったのが、2人の女性に連れられた5,6人の子どもたち。女性2人はヒジャブを被っており、おそらくシリアかアフガニスタンからの移民だろう。
そのうち7,8歳ほどの男の子は「タタタタッ」と疑似的な発射音が出る自動小銃のおもちゃを手に持っており、それを会場にいる人々に向けて撃つ真似を繰り返している。
おそらく祖母と母親だろうか、2人の女性はそれを止める気配もなく、早々にベンチに座って残りの小さい子たちとお菓子を食べ始めた。

こんなのどかなイベントにそんなオモチャを持って来させるなよ…と思いながら、わたしはあまり近くに寄らないように娘と各ブースを回ることにした。


会場の公園は2つのエリアに分かれており、小さなトンネルをくぐって隣のエリアに移動する。

最初のエリアが終わって隣エリアに移動しようとトンネルをくぐると、いきなり出口の天井から銃のようなものが突き出され、「タタタタッ」と何かが発射されるような音が聞こえた。

どうやらトンネルの上に登った先ほどの子供たちがオモチャの銃で通る人を驚かそうとしているようだ。

娘もちょっと驚いたようだが、銃から何も発射されないのを見てホッしたようで無視してその場を通り過ぎた。

トンネルの近くには虫取りのブースが置かれていて、そこでは数組の親子連れが網を使った虫取りの説明を受けていた。

その間も先ほどのトンネルの方からは「タタタタッ」という発射音がずっと聞こえてくる。

その場違いな音を不愉快に感じたのはわたしだけではなかったようで、何人かの親は顔をしかめて音のする方向をチラチラ見たりしている。

が、当の子どもたちは一向にやめる気配もなく、むしろ盛り上がってきたのかさらに執拗にトンネルを通る人たちに向かって上から銃を撃つ真似を続けている。

トンネルの上からオモチャの銃で通る人たちを撃つ真似をする子たち

とうとう一人の父親が我慢できなくなったのかオランダ語で「いい加減にしろ!」というようなことを叫ぶと、彼らは「え、俺じゃないんだけどー」みたいな感じで言い返す。
その父親はしばらく大きな声で叱るようなことを言っていたが、子どもたちはまったく聞く様子を見せない。

諦めて彼が娘とその場を立ち去ろうとすると、まだ銃を持っていた子がその父親の背中に向けて「タタタタッ」と銃を撃つ仕草をした。
それを見ていた人々はみな半分諦めたような表情をして、再び虫取りの説明を聞き始めた。


この一部始終を見ていて、わたしはこの前自分が湖で殴られた時のことを思い出した。

みな不快に思いながらも巻き込まれるのが嫌でとにかく無視を決め込み、叱責した人の行動に心の中では賛同しつつ、終われば何ごともなかったかのように振舞う。
たしかに、それしか対処のしようがないのかもしれない。

あのときわたしに「お前が悪い」と言ったオランダ人の老人が言いたかったのは「(そういう輩を相手にした)お前が悪い」ということだったのかもしれない。

今回はわたしはこの件に巻き込まれなかった、というか早めに察知して近寄らなかったのだが、こういうことが身近で普通に起こり続けるのはけっこうストレスになると思う。
個人レベルでもだが、地域コミュニティレベルでのこういったストレスはきっと今後大きくなっていくのかもしれない。

最近は少しネガティブなことばかり、特に移民や難民に関して書いてしまっているが、これは本当に今のヨーロッパで起こっていることだと思う。

まだ文章にしてはいないが、夏に旅行したベルギーやポルトガルではもっと酷いことになっていて、「オランダまだまだよくやってるな」と感じてしまったほどだ。

人種に関して考えさせられるマレーシアに長く住んだせいもあって、おそらくわたし自身がそういったことを一般の日本人以上に感じたり考えてしまうのもあるだろう。
もちろん「移民や難民問題がある=オランダが良くない」などと言うつもりは毛頭ないし、そもそも自分自身がここでは移民だ。

だからこそ、こういったことがあるのをちゃんと認識しつつ、それについて考えることを放棄せずにいたい…そんなことを思ってしまった日曜日の午後だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?