作曲・編曲183
今日は予告通り、「サビ」について考える上で、実例を元に考えたいと思います。
もちろんその曲は宇多田ヒカルさんの「First Love」です(あと流れで「花束を君に」も少し取り上げます)。
ある意味直球勝負というか、これだけの作品を論評すること自体おこがましいのかもしれません。
というか、コード検索サイトでも、結構この曲のコード進行の解釈、違っています。
これには理由があります。
もちろん、この手のサイト、結構間違いは多い。
サイトに限った話ではなく、ポピュラーで販売されている曲ですら結構間違いは多いです。さすがにコードの構成音(表記が違う=解釈が違っている
ことは多い)間違いはあまりないと思いますが、細かい間違いを上げればきりがないです。
ただ、この曲の場合、そういう問題ではないと考えています。
実はサビ自体がサビサビしていない。
特にサビ頭だと悪い言い方をすると、音が比較的平坦であまり起伏がない。
例えば「花束を君に」だと、ああ、サビが来た、という感じですよね、
だから「花束を君に」の場合、コード進行も解釈がそれほど違わない(というより間違える人がいない)。
でもだからといって「First Love」のサビをだめだという方はほとんどいないでしょう。
もちろんその後でしっかり戻しています。
この理由はBメロにあります。
「First Love」のBメロ、「強い」んですよ。だから一旦落ち着かせないと逆に盛り上がる部分の効果が低くなってしまう。そうすると「緊張」と「弛緩」が曲から失われるからです。もっと言うと聴いていて疲れる。だから「花束を君に」のサビもサビらしいサビだけれども、Bメロの終わりより弱く、落ち着かせるように作っている。
サビだから目一杯に作るのではありません。あくまでも曲で大切なのはバランスです。
だからもっと言うとサビで弛緩したっていいんですよ。それを「サビ」と言うのか、という問題もありますが。
ただどこが「サビ」だっていいんですよ。音楽として聴いて良ければ何の問題もない。
実際「サビ」は日本語ですし、「Aメロ」も「Bメロ」も日本語です(曲の構成を説明する際、「A」や「B」という使い方はしますが、日本語の「Aメロ」や「Bメロ」とは意味が違う)。
結果的に「サビ」の説明にはなりませんでしたが、考えた結果なのでしょうがありません。
明日はこのことをベースにまた今井美樹さんの「潮騒」に戻って、再度この曲を考察したいと思います。