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食と健康のエビデンスの見かたを鍛えよう:研究結果が食い違うとき、どう考える?

栄養学や薬草に関する研究を読んでいると、同じテーマを扱っていても、全く逆の結論に至る研究に出くわすことがよくあります。

例えば、「赤肉を食べると心臓病やがんのリスクが高まる」という研究があれば、一方で「適量なら赤肉はビタミンB12やタンパク質の大事な栄養源で、むしろ健康にいい」という研究もあるんです。

「どっちが正しいの?」と迷ってしまいますよね。
でも、これには理由があります。

今回は、私なりのエビデンスの見方のポイントを解説してみました。

ドライになりがちのテーマなんですが、「こんな情報が必要だ」という方に、できるだけわかりやすく伝えることができれば、と思います。

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2016年、オーストラリア🇦🇺とイギリス🇬🇧の調査です


研究結果が変わってしまう理由とは?

研究の条件が違えば、結果も変わる

栄養素の効果を調べた研究でも、「どんな人に」「どれくらいの期間で」行われたかで、結果は変割ます。たとえば、短い期間では分からなかった効果が、長く続けてみると見えてくることもあります。

人数と人それぞれの違い

調査に参加した人が少ないと、そこから導き出される答えには限りがあります。たくさんの人を対象にした方が、信頼性は増します。

でも、その人たちがどんな食生活をしているのか、体質がどう違うのか、文化、そんなことも結果に影響してきます。

研究に関わるお金の問題

研究の背後に企業や団体の名前がある場合、そこから受けた資金がどんな風に結果に影響しているか、ちょっと気にする必要があります。

どこが資金を出したのか、それを調べるのも「ちゃんと知る」ためのひとつの方法です。

このような理由が考えられるからこそ、研究ひとつだけで判断せず、自分の体質や生活スタイルを考慮して、上手に情報を利用するスキルが大切になってくるわけです。

タバコ産業と健康研究、薬品企業と医薬品承認研究、
食品産業と栄養学研究etc,あげればキリがありません

そもそも、エビデンスとは?

エビデンスとは、科学的に検証された証拠のこと。

例えば、サプリメントの広告で「研究で証明されています」と書かれていたら、それはエビデンスがあるという意味になります。

でも、大事なのはむしろ「どんな研究か?」。
信頼できる研究かどうかで、エビデンスの質や解釈が大きく変わります。

そしていちばんの肝は、「研究とは、その結果の提示によって受け手から議論されることを前提とするもの」だということ。

いろんな結果を吟味して、信頼性を高め、結論をソリッドなものにしてゆくプロセスそのものが大事なのです。

素直に疑問を持つことは、批判とは違います。
好奇心を潰さずに、そして配慮を持って、疑問を解明する姿勢はディスカッションを豊かにすると思うんです。


ステップバイステップで読み解く

お魚に含まれる「オメガ3脂肪酸」という成分は、オメガ3は脳の健康にいいとよく言われます。

「オメガ3がうつ病予防に役立つか」を調べた、アメリカの5年にわたる大規模研究を見てみましょう。


研究の方法

  • 対象:50歳以上の男女約2万人

  • 4つのグループ:オメガ3のみ、ビタミンDのみ、両方、プラセボ(偽薬)

  • 方法:誰が何を飲んでいるかは参加者も研究者も知らない二重盲検法

結果

  • オメガ3を飲んだ人のうつ病リスクは、偽薬を飲んだ人と比べてわずかに高かった。(1000人中13人くらい)

  • 毎日の気分には、オメガ3でも偽薬でも大きな変化は見られなかった。

ちなみに、ビタミンDの欠乏や低レベルであることと、うつ病との間には関連があることが、別の観察研究ですでに明らかになっています。


この研究をどう読む?

優れている点

  • 大規模なデータ(約2万人)で、約5年の長期間

  • 二重盲検法で公平性が担保されている。

気になる点

  • オメガ3の服用量は1日1g。

  • ライフスタイル(運動、食事など)の情報が不足。


気になったところを詳しく

心血管系、神経系、抗炎症作用に対して有効な研究結果の多くは、オメガ3の服用量は120003000mgの摂取なので、1日1000mgの服用量では十分に反応が得られない可能性があります。

(オメガ3の必要量には個人差があり、研究で使われている量が誰にでも合うわけではないので注意!)

運動とメンタルヘルスの関係は別にたくさん研究されていて、現段階で改善に有効とみなされています。運動、喫煙、飲酒のありなしなどは、うつ病と大きな関係がありますので、この辺りの情報はもっとあってもいいように思いました。

また、超加工食品の摂取とうつ病のリスクには関連性があることは、これまでの研究でわかっているので、日々の食事の内容も重要な情報となります。


自分のバイアス

予防を考えるなら運動も食べるものも、その人の考え方やストレスの度合いなども入れて、包括的に対応していくと、よりホリスティックです。

バランスの良い食生活に、適度な運動、ストレスをためないメンタルケアが、そもそも前提としてあるのが、サプリメントの存在意義かと思います。

でも、自分で書いていてなんですが、このあたりから自分の職業的な認知バイアスが入ってくるのを感じます。

どんな意見を持ってもいいんだけれど、それを他に伝えるときは、自分のフィルターが入った状態で相手に伝わることを忘れないようにしたいですね。


研究の「素材・モデル」によっての違い

研究にはいろいろな「モデル」があります。
それぞれの特徴と限界を簡単に図解してみました。

薬草や食物の薬効成分に関する研究でよく使われる5つの手法

信頼に値する要素が全て入った研究はなくて、手法によってそれぞれ強みと弱みがあります。

手法の違う信頼できるエビデンスを総合的に見ることよって、得た情報から自分なりの仮説をかため、仮説の信頼性を決めることができるのだと思います。

では、信頼できるエビデンスは、どういうものを指すのでしょうか?

一般的ではありますが、下の5つは挙げられると思います:

  1. RCTやメタアナリシスに基づいていること。

  2. サンプルサイズが十分大きいこと。

  3. 再現性があること(別の研究でも同じ結果が得られること)。

  4. スポンサーのバイアスが入り過ぎていない

  5. 現実的な生活に適用可能な条件で行われていること。

1.ウコン(ターメリック)に含まれるクルクミンの抗炎症作用についてのRCT
2.緑茶に含まれるカテキンが心血管疾患リスクを低下させる可能性
3.地中海食の摂取が心血管疾患や寿命に与える影響を示すコホート研究
4.シナモンに含まれるシンナムアルデヒドが抗菌性を持つこと

オープンマインドで、柔軟に

科学の結果は「完璧な答え」ではなく、もっと良い答えを見つけるためのヒントと考えて、好奇心を忘れず、どんどん疑問を持つこと。

なるべく自分の偏見は捨てたいところです。

研究結果を客観的に解釈する

この研究では、「うつ病予防にオメガ3は効かない」と結論が出ましたが、そうでない可能性もあります。(実際に他の研究では有効と結論づけています

両方の研究を吟味するまで、自分の意見は決めなくてもいいのです。

いろんな研究も見て検証することで知見が広がります。


IMSIのナチュロパシー講座でもっと学ぶこともできます


エビデンスをナチュロパシーに応用する

ナチュロパシーでは、科学的な根拠(エビデンス)と、実際の生活に根ざした知恵を融合させることを大切にします。

オメガ3のような栄養素に関しても、「この研究で良いとされているけれど、この人の状態に合うだろうか?」と、あくまで個人ベースで考えます。

たとえば、論文で「魚を週に3回食べると健康に良い」と結論づけられていても、「魚を食べない文化圏の人はどうすればいい?ヴィーガンは?」とその人に合った方法を頭を捻って考えるんです。

最終的には、その人に合ったバランスの食生活とライフスタイルの融合で状態が良くなるように後押しができることがゴール。

エビデンスに気を取られすぎていると本質を見過ごしてしまうこともあるかもしれない。

また、科学は常に進化しており、今日の「常識」が明日には覆されることも実際あります。

エビデンスは一般的な方向性を示してくれる一方で、直感は「自分にとって本当に何がいいのか」を教えてくれる重要な要素。

どちらも大切に、でも、どちらにもとらわれすぎずに、自分のウェルビーイングを考えて行きたいものですね。

このnoteでは、どなたにも日々役立てていただける食と健康に関する情報を提供していますが、医療専門家のアドバイスに代わるものではないことをご確認ください。効果や結果は個人差があるため、特定の健康問題については医師や専門家にご相談ください。情報は最新を心がけていますが、変更される場合もありますので、自己責任でご利用ください。

また、私のブログ記事を参考にしていただく際は、ぜひ出典を明記していただき、内容はそのまま正確にご使用ください。転載や複製をご希望の場合はご一報ください。どうぞよろしくお願いします。

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