岐阜県と長野県にまたがる乗鞍連峰。アクセスは乗鞍スカイラインを利用するのですが、マイカー規制のため岐阜県側は「ほおの木平バスターミナル」が基点となります。待つことなくバスに乗り標高2702mの「畳平」まで約45分。一気に標高が上がる分、畳平で体調を崩しやすいと言われています。かつてマイカー規制が敷かれていなかったころ、痛い目にあったことがあります。ま、それはどうでもよいですが…。
乗鞍連峰の主峰「剣ヶ峰」の山頂を目指す人たちにとっては、畳平が最短で登ることができる登山口となります。ただ、ほおの木平と畳平の標高差は1400m強あります。畳平に到着後は高度に順応すべく、急がず慌てず、一休みしてから出発しましょう。今回自分はゆっくり準備をしてお花畑に下りました。元より剣ヶ峰に登頂するつもりはなく、お花畑を散策した後、富士見岳に登り、大黒岳を縦走し大黒岳登山口バス停付近に下山する計画です。
畳平バスターミナルに向かって左側にお花畑に下りる階段があります。お花畑は木道が整備され高山植物を保護しています。木道にも段差がありますので周りに気を取られていると踏み外しバランスを崩します。ヨツバシオガマやシナノオトギリ、シナノキンバイ、ミヤマアキノキリンソウが花盛りでした。
右に恵比須岳、左に不動岳。その間から白山が顔を覗かせています。天気は快晴、どこからともなく「ガーガー」と雷鳥の声が聞こえます。声はすれど姿は見えません。
本来、木道はお花畑を周回するように設置されているのですが、一部で工事(木道のメンテナンス)をしており、途中で引き返すことになります。散策した時間が早朝であり、お花畑が谷間にあることから太陽に当たっておらず、高山植物の活気は今ひとつでしたが満足です。
高山植物がイキイキとし始めたのは山腹に日差しが届いてから。不消ヶ池を右手に見ながら管理道路に合流するころにはチングルマやヨツバシオガマ、イワギキョウが元気よく咲いています。オンダテやコバイケイソウもこの山腹で見られました。お花畑では既に実になっていたチングルマですが、少し標高を上げただけでまだまだ群生も見られました。
管理道路に出て富士見岳に登ります。上の画像で人だかりが出来ているのが富士見岳の山頂(左奥に見えるのが大黒岳)です。富士見岳の標高は2818mですので畳平とは116mほどの標高差がありますが、お花畑に一旦下ってからの登りとなりますので実際の標高差は150m前後になるのかなと思います。
上の画像は左から剣ヶ峰(標高3026m)、蚕玉岳、朝日岳。案の定、蚕玉岳から剣ヶ峰へ向かう稜線に数珠つなぎとなった登山者が見えます。報道されているエベレストやK2の登山者の行列並みとは言いませんが、なかなか見ることがない光景です。
畳平は火口原と言われていますが、この位置から見るとまさに火口。恵比須岳(左)と魔王岳に囲まれた火口の淵にあることがわかります。右に火口湖は鶴ヶ池です。
清々しく富士見岳に登頂。団体さんが降りた後でしたので山頂は少し空いていました。この後、大黒岳に向かう途中、ウエディングドレスの新婦とタキシードを着た新郎とすれ違い少し驚く自分。
富士見岳から「標高2716mバス停」に下りるとコマクサの群生。コマクサは富士見岳で多く見ることが出来ました。今回の乗鞍散策の目的のひとつがコマクサ。なにせ高山植物の女王ですからね。
標高2716mバス停から山麓を望む。リゾート地、乗鞍高原と奥には鉢盛山。
大黒山へは「標高2716mバス停」近くの登山口から60mほど登る。木段を粛々と登ると目の上に大きな岩の塊。巻きながら進むとハイマツが拡がる。その先に大黒岳休憩所があります。パット見ると、大きめで頑丈なバス停といった印象。中にはベンチとテーブルがありますが、屋根からの漏水がありベンチを使う人はいません。多くは休憩所の向こう側にある広場で石に腰を下ろして一服していました。
大黒岳周辺も雷鳥の生息域のようです。立派なカメラを持った大人が群れています。数人の人だかりが出来ていると、その先に雷鳥がいるのは立山も同じですが、ただ、ここに居る人たちは皆、カメラにパイロンのような大きな望遠レンズを着けています。大黒岳ならばジーパンにスニーカーでも登れますからね。
新潟県では純絶滅危惧種とされているようですが、乗鞍では多く飛んでいました。蝶を撮るのもなかなか難しいです。足元に居ても吸水中は翅を閉じる習性なのか、翅を開いても直ぐに閉じてしまうので、シャッターを押すタイミングがつかめません。
いよいよ雷鳥との遭遇です。雷鳥とは思わぬところで遭遇することが多いのですが、これは全く想定外の場所でした。すぐ近くを乗鞍スカイラインが走っています。自転車はともかく、バスや車が頻繁に往来しているような場所です。しかも幼鳥と思われます。親鳥は近くにいるのでしょう。この後出会ったカメラマンによると、今年は産卵数が少ないのか雷鳥のヒナも少ないのだとか。
鳥類では他にイワヒバリやイワツバメがいました。お花畑のイワヒバリは警戒心が薄く番いが目の前で遊んでいました。
標高3000mの岩の隙間でさえ物ともせず生息する高山植物。石垣なんてへっちゃらさと言わんばかりに咲き誇っているのはイワギキョウ、ミヤマアキノキリンソウ、イワウメなど。高山植物の逞しさよ。
乗鞍岳は花の百名山でもあります。
今回撮影したお花は後日記事にして公開します。
撮影日:2022年7月30日