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主婦の私が風邪を引くと毎度我が家はこうなる

 久しぶりに風邪を引いた。下の子(小学生)のがうつったようだ。子どもらしく風邪を引いていても元気な様子でいたので、彼と遊ぶのが大好きな私はついつい近寄って一緒に本を読んだり、楽しくおしゃべりしたりしてしまった。その結果、ひどい風邪を引いた。ある土曜日のできごとである。
 
 風邪を引くと一番困るのは、食事の支度だ。ただでさえ食事のしたくが家事の中で一番やっかいである。苦手でもないし嫌いでもない。ただやっかいのだ。メニューを考え、段取りを考え、材料をそろえ、下ごしらえをして、やっと料理にとりかかる。風邪引きの霞のかかった頭は料理のことを考えるとフリーズする。
 
 それでは、何か買ってきたらいいではないかという意見もある。それは現実的ではない。だって、体調が悪い時に食べたいものは、私の住んでいる国、そして地域では売っていないからだ。贅沢なのかもしれないが、はっきり言って今私はこの国の食べ物を食べたくない。あっさりして温かくて出汁のきいた美味しいものが食べたい。
 
 ソファーで丸まって妄想が始まる。
 ここが日本だったら、夫に頼んでコンビニのうどんを買ってきてもらうんだけどな。火にかけてぐつぐつ煮て、背中を丸めて麺をすする。たっぷりの揚げ玉がカツオだしと相まってたまらない。もちろん汁まで飲み干す。体の芯まで温まる。なんて幸せなんだろう。できればこのあとにガリガリ君ソーダ味で水分補給ができれば最高に幸せだ。
 
 そこで現実に戻る。はいはい、そんなことを考えても何も始まりませんよね。知ってますよ。
 
 次は回想が始まる。
 子どもの時は、風邪を引くとひたすら布団の中でうつらうつらしていた。食事の時間になったら母が卵の入ったおかゆや、野菜のはいった雑炊、出汁のきいたうどんを作ってくれた。熱を測ってくれた。薬を飲ませてくれた。お母さん、ありがとう。お母さんのおかげで立派に育ちました。
 
 そこで現実に戻る。はいはい、分かってるって。私はもう子供でもないし、なんならあの時の母よりもずっと年上でございます。
 そうなのだ。自分で作るしかないのだ。分かっている、もう十数年同じことを考え同じ結論を出して、結局自分で作ってきたじゃないか。
 
 ふらふらしながら冷蔵庫から適当な野菜や肉を取り出し、一口大に切り炒める。水を加えあくを取り、スープの素を適量。塩やみりんで味をととのえ少々煮込んで出来上がり。別の小鍋に一人分とりわけ、ご飯を入れて溶き卵を回し入れる。おいしい雑炊ができあがった。
 やっとの思いでできあがった雑炊を食べ終わり、再びソファーに倒れこんだ。
 すると外出先から夫が戻ってきた。
 
 さかのぼること2時間前、ソファーで丸まっている私を見て、彼は優しく言った。「体調悪そうだね。俺は自分のことは自分でやるから休んでて」。
そして食パンを焼き、マーガリンを塗って、ハーブティーと共に食べ始めた。なんて栄養の偏った朝食なんだろう。彼は決して「おれのメシはどうするの?」なんて言わない。
 そして用事を済ませに外出したのだ。

 私は、横になったまま「お帰り、スープができてるから食べたら?」
 夫「おっ!美味しそう。いただきます!」
 結局こうなるのだ。

 そうやって私は生きている。何にも不自由していないし、飢えてもいない。とても幸せだ。

 

 
 

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