0212 わかれ、という号令の悲しみ
私は、今就いている仕事とは別に、学校卒業後に働いていた会社がある。
そこは、初夏にかけて同期が一堂に集められ、寝食を共にして研修を受ける。
そして夏本番を前にして、職場配属となり、全国に散っていく。
それまで仲間とか、友達とか、そういうものを持たなかった私は、同期ができて、日々をあわただしく過ごしているこの生活が、初めての青春であり、生きているという実感のある日々だった。
自由もなく、自分の時間も何一つないのに、楽しいのである。
そんな時間を過ごし、いよいよみんなとお別れという日、研修を統率していた社員が、全員を整列させ、訓示をし、そして最後に言い放った言葉がある。
「本日をもって研修の任を解く、別れ!」
(※実際は言葉が違うのは察してほしい)
言われた後、頭がしびれてしまってね。
職場へ行く車の荷台に座って揺られているうちに、もう二度と同期と生活できないのだと、時間を共有することはないのだと思ったら、そこから一週間、何かの拍子に泣き、しゃくりあげ、ちょっと大変だったのだった。
それからというもの、ここまで大事に思った仲間はいない。
やはり同じ釜の飯を食うという威力はすごいのだと思う。
衝撃的な命令だったから、創作でネタにした。
ただし、主役にこんな悲しい思いはさせないと思ってしまったので、なんだか違うことになってしまい、「売れない」というか「受けない」作品になってしまったのだが、それでいい。
(なんにせよ、売れるものなど書けないのでネ)
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