深い眠りの中で
2歳のわたしに、笑っていいんだよって、ちゃんと伝えることができるようになった、今のわたし。
もう無条件で愛されているってわかったから。
頑張って結果を出さなくても大丈夫って知ったから。
今のわたしに辿り着くまで、なんと、半世紀近くを要した。
特に、酷い勘違いをしていたのは、結婚をし、子育てをし、義母と同居をし出した、約10年間だ。
その10年間は、わたしは、深い深い眠りの中にいた。
良い妻でなければ、わたしには価値がない。
良い母でなければ、わたしには価値がない。
良い嫁でなければ、わたしには価値がない。
良い娘でなければ、わたしには価値がない。
頑張らなければ、わたしは誰にも愛されない。
来る日も来る日も、2歳のわたしの勘違いを、最大限に発揮していた。
自分の身体と心を、これでもか、これでもかと、酷使する日々。
休むことなど、決して自分に許さなかった。
そんな事をしたら、大変なことになる。
「自分さえ我慢していれば、全ては上手くいくんだ。」
今、思い返せば、背筋も凍るような思考が、その頃のわたしを支配していた。
それでも、この世界は全てが移り変わるもの。
勘違いという、深い眠りから目覚めるその時が、とうとうわたしにも近づいていた。
結婚から10年が過ぎようとしていた頃、身体の異変に気付いた。
そして、気付けば、心もボロボロになっていた。
知らぬ間に、鬱病がわたしの元へとやって来ていたのだ。