『あかちゃんがわらうから』おーなり由子
赤ちゃんをありのまま写真に写しとることは、本当にむずかしい。
こぼれ落ちてしまうのです、あの独特の輝きが。
赤ちゃんを目の前にしたときに見たあふれるような輝きは、平面に写しとられたとたん、艶やかさを失う。
あれは、なんでなんだろう。
この絵本では、赤ちゃんはきわめてシンプルな線で描かれます。
にもかかわらず、写真よりもずっとリアルで、おもわずじぃっと見入ってしまう。
そうそう、これこれ、このおてて。
まあるいおしりに、このあんよ。
だっこされているときの、このかんじ。
ふくふくとした生命力、のようなもの。
細かなひかりの粒子をまとったふくらみ、のようなもの。
写真に写らないものを写しとってくれたことが、嬉しくなる。
そして何といってもいちばん嬉しいのは、赤ちゃんの姿かたちだけではなく赤ちゃんとすごす時間の幸福感もまた、ここにはちゃんと写し取られている、ということ。
赤ちゃんがわらうときの、
空気がひかる、あの感じ。
小さないのちを預かるということは、
ときどき、すごく、不安になることでもあります。
わからないことだらけの世界のなかで、
腕の中にいるこのちいさないのちが、
とても儚く見えて、どうしようもなく怖くなるときがあります。
そんなとき、子どもたちのもつ生来のつよさを、この絵本に何度も何度も、思い出させてもらいました。
子育てのしあわせを再確認できる絵本。
おとなのかたへ。