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2018/12/13
乗り遅れたバスに引き続いて、別のバスはすぐにやってきた。人々は二人掛けの座席にそれぞれ一人ずつ座っていき、ちょうどすべてが一人ずつで埋まったとき、バスは動き出した。
駅を離れると、おおよそバス通りはたいして明るくないので、敢えて外を眺めなければ景色が視界に入ってくることは無かった。街と街の間に流れる小さな川を渡ったことにも気づかないまま、丘のふもとのバス停に到着した。バスは坂道を上り、国道を横切った先のバス停につぎは止まった。無人精米所の灯りが青々としていた。
もう一人、サラリーマンの男性が前を歩いていた。信号が変わるところだったのか、男性は走り出して対岸へ行ってしまった。その走り方がどこか幼さのある格好で、いとおしく思えた。はす向かいにあったコンビニエンスストアを取り巻くように幟が立っていたが、逆光で文字は読めなかった。
住宅街の一角に小さな小料理屋があった。看板も何もない店だが、そこに店があって、さらに佳い店であることを知っていた。
店の前に、一人の女性が誰かを待っていた。深緑のコートにマフラーを深く巻いて、帽子をかぶっていた。何かを待っている女性の立ち姿というものは美しいと思った。女性は顎をすこし持ち上げると、あたりを見回して、どこか遠い暗がりを見つめていた。