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「アーモンド」 by ソン・ウォンピン

少し前に渡辺淳一氏が書いた「鈍感力」という本が話題になりました。
その時には、「鈍感力」を身につければ、生きていくうえで避けては通れない様々なストレスを受け流すことができて、もっと楽に生きられるのだから、鈍感になろうと決意しました。
 
HSP(繊細さん)の本が流行った時には、私も繊細さんかも…と思い当ったりもしました。
 
でも、実際には自分が思っているほど私は敏感でも鈍感でもなくて、普通の生活をしている普通の人間です。
 
でもって、この本は生まれつき扁桃体が小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェをめぐる物語です。
 
極端に繊細なことも苦痛なのでしょうが、病的に鈍感であることもまた、苦悩になるのだなぁ…と読みながら想像しました。
 
ただ、私などは凡人なので、「自分が楽に生きるために」鈍感でありたい、繊細さは損なのかも…とけしからん邪念を思いめぐらせていたのですが、読み終えると、「人間が人間として生きていくために」どんな感情も価値がある…と気づかされました。
平凡な私がやり過ごしている「普通の感情」を丁寧に積み重ねながら成長していく主人公には「希望」を感じます。
 
年を取ると「あきらめ」「限界」と向き合いながら生きるのが常ですが、今まではそれにあらがうことなどせずに、鈍感に受け流そうとしていました。しかし、どんな小さな希望でも大切にして、「あきらめ」や「限界」と真摯に向き合い乗り越えていこうと、心に小さな灯を燈してもらった気がします。

#読書感想文

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