引っ越し前の家への追悼
この家の
パスワードを打つ音、解錠の音、
鉄の扉のキーっという音、
「帰ってきた」と感じる匂い、
階段の木が軋む音、
床の肌触り、壁の色、
電気と部屋に反射する灯り、
お風呂の天井、
リビングの天窓、
キッチンのタイル、
身長を測った柱のキズ、
犬たちが走り回った爪の音、爪痕、
ここにいつまでもあると思っていたから
いつでもここにきたら思い出せると思ってた
この家がなくなったら
どんな音だったか、どんな匂いだったか、どんな手触りだったか、どんなふうに過ごしていたのかさえも
きっと忘れてしまう
ここで育ってきた自分の歴史は
全部この家とともにあって
ここで一緒に過ごした友達や
大事な家族との時間
今はいない犬や猫やウサギたちとの記憶も、
ここに置いてきてしまった
この家で寝ていたらよく夢に出てきていた犬も
最近では会いに来なくなった
あの子の魂は、この家に住んでいるのではないか
もうここに住んでいない、住む場所が変わってからの私しか知らない人たちは
きっと私の魂の深いところを知ることはないんじゃなかろうか
そんなふうに思うくらい、
私にとってこの家は、自分の一部だと思う
私の20年分の魂もここに眠る。
R.I.P
そして地縛霊として成仏した私は、新しい場所で生まれ変わる、のかもしれない
この家を愛してくれたみんな、ありがとう
ここでみんなと過ごした時間を、私は忘れない
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