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営業職に向いている性格のリアルと本音(※建前なし)

 今回は就職活動ネタです。「営業職に必要なのは、協調性、責任感、コミュニケーション能力です」と説明する採用担当者、書かれているサイトは数多い。──でもそれって果たして本当だろうか?


0.営業職に向いている気質と志向

 筆者は不動産管理会社で営業職をやっている。一応は大手系列だが、身売りを繰り返しながら現在の系列に組み込まれた会社なので、会社のスタイルは中小企業のそれだ。

この仕事を続けていると強く感じることがある。それは計画性・責任感、協調性、貢献性といった「社会人に求められる人物像」は総合職に当てはまるものであって「営業職に求められる人物像」はこの点がかなり異なるのではないかという点だ。

 そしてこの営業職だが、文系大学生が新卒就職活動を行うと大体の人はコレに配属される。特に男性だと避けて通れない職種になるだろう。今回は自身の経験を踏まえて「営業職に向いている人」のリアルとホンネを見ていきたい。

就職活動中の新卒大学生は、この記事を読んでESや面接の参考にしたり、営業職という仕事のイメージの足しにしてほしい。あるいは営業職を新卒採用してもすぐ辞めてしまい、定着率に低さに悩んでいる会社の人事部採用担当者は、これに基づいたペルソナ設定やマーケティングを行って採用活動・選考を行うと、定着率が改善する可能性がある。

ポイントは協調性・共感力・計画性・責任感の高低で、高い人はあまり向いていない。逆に低くて悩んでいる人は営業職として働くと才能が開花する可能性もある。あわせてMBTIに絡めて書いた記事があるので、こちらも自己分析の参考になれば幸いだ。(記事一番下リンクを参照)

※注意
ここでいう営業職は中小企業の営業職を指している。つまり単価が安く、商材は乗換代替が容易なコモディティを扱い、クロージングは1人で完結。研修や教育制度はなくノルマがある。そんな会社を想像してほしい。

大手本体企業になってくると契約金額が億単位になったりチーム営業になったりしてまた別の要素があるため、以下の話はあまり当てはまらない。

1.営業職に向いている気質

①個人主義者

 営業職は個人主義者が向いている。具体的には他人に興味がない人だ。営業職に協調性はあまり求められない。それは1人で単独で行う仕事だからで、チームワークは不要であることが多いからだ。

むしろ協調性はない方がいい。他人に対する興味が薄く、面倒くさい付き合いや共同作業が昔から苦手だったというタイプは営業職向きだ。そして空気はあえて「読まない」人が向いている。空気や顔色ばかり読んでいるとお客様への提案(商材の売り込み)ができなくなる。

 よくある勘違いだが、営業職はメンバー同士で協力したり、ノウハウを共有したり、現在のやり方を変えて仕事をやりやすくしようというような、全体利益の発想はあまり出てこない。なぜならノルマがあるからで、業務改善は個人レベルに終始する。すでにノルマ分を稼げる人間が、稼げない人間のために、わざわざ業務改善やサポートをするメリットがないのだ。

そのため協調性の高い人間は、チームワークや相互理解関係を構築できなかかったり、需要のない商材をお客様に提案できなかったりして、むしろ疲弊することになる。このタイプは非営業職の方が明らかに活躍できる。

②外向型

 営業職は外向性の高い人が向いている。先の個人主義と矛盾しているように思えるが、こちらは表面的なコミュニケーション能力、他人の巻き込み力、レスポンスの速さといったところだ。

外向型の人は悩みや問題に直面した場合、他人や組織・周辺環境といった外部に訴えて解決を図るという特徴を持つ。MBTIでいえばESTJなら交渉、ESFJなら相談、ESTPやESFPなら行動という形だ。そのため彼らのアクションには他者の存在が伴う。外向型の人には、予定が埋まっていないと不安な人、常にLINEやメール・着信履歴を意識している人がいるが、そういう人は営業向きだ。

この点内向型だと頭の中で解決策を思案し、見込みが立ってから行動に移すため、行動量をあまり増やせない。お客様へのコンタクトをためらってしまって予定がスカスカだったり、LINEやメール、着信履歴をあまり意識せず、レスポンスが遅れがちになるので、そういう人はおそらく根本的に営業職には向いていない。


③テイカー気質

 営業職はテイカー気質の人が向いている。テイカーは常に自分が得をするように利益誘導を行うタイプの人で、一般社会では嫌われやすい存在だが、営業職ではこの特性が大きくプラスに作用する。

ところで営業職とは会社のエンジンである。エンジンはシリンダーが高速ピストンを行うことで動力を得るのだが、その大きさは排気量×回転数=速度に比例する。大きなエンジンをぶん回せる車は速い。

よく勘違いされがちだが営業職はステアリングではない。営業は機械的な仕事なので、独創性やクリエイティビティはない方が優秀だ。ノルマを達成できない言い訳にしかならないし、営業戦略や業務改善を考えるのは経営陣・管理職の業務であって、一営業職に求められる要素ではない。やり方が合わなければ結果を出して出世するか、辞めて転職するしか方法はない。

 さて営業職の場合、利ザヤ(売上ー原価)×受注数=売上 となる。つまり顧客に価格を吹っ掛け、協力会社や下請けに原価を抑えて利ザヤを多く取れる人、その試行回数を多く行える人ほど営業職として優秀な人材となる。つまり営業職は機械的な仕事となるため、創造性や情緒性は低い人の方が向いている。テイカーが営業向きというのは、そういうことだ。

営業職の本来の在り方は、お客様と向き合い、必要な時に必要なものを、適量提案するのが正しい。だから本質的にはギバーやマッチャーだ。しかしそれだけでは到底数字(ノルマ)を満たせない。そのため、無理をしてでもお客様に提案をする必要が必要になり、そのストレス耐性に一番強いのがテイカーとなる。

(ギバーじゃ)いかんのか?

 ギバーは営業向きと書いてあることがある。自己犠牲型ギバーはダメで、他者志向型ギバーはOKみたいなこともよく見るが、他者志向型ギバーという存在が筆者にはまず腑に落ちない。

ギバーは自分の顔ちぎってカバオにあげてるアンパンマンみたいなものだ。こういう人種が自己犠牲型ギバーとして、他者志向型ギバーはどうするのか?という話だ。顔ちぎらないでどうやってカバオを助けるのか。原資がなければ結局自己犠牲にならざるを得ず、そこまではしないスタンスなら結局テイカー・マッチャーなんじゃね?という矛盾がある。

 ギバー気質の人はこの点ダメだ。利他性や気遣い、自己犠牲が優先してしまい、金にならない余計な仕事をしてしまう。お客様に用もないのに連絡をすること、顧客が特に必要としていない商材を勧めることに「ためらい」を感じ、強いストレスとなるため精神的に持たなくなってしまう。最低でもマッチャー気質でないともたないだろう。

そして前述の通り営業職は個人主義者の集まりであるため、せっかくのチームワークや貢献意欲も生かす場所がない。この仕事は優しさがあるとマイナスとなってしまう。その意味では軍人・警察官にも似ている。

④共感力の低い人

 営業職は共感力の低い人が向いている。一般に共感力は高いことが素晴らしいとされているが、営業職に関してはこの原則から外れている。

営業の仕事をスポーツ・ゲーム感覚でできる人は強い。お客様をゴール、案件をボールととらえ、単純にスコアを競うフィールドとして認識できる人、あるいは言い方が悪いが「お客様がサイフに見える」という人種だ。

軍人で言えば、FPSゲームの感覚で無人機やドローンを操縦できる人という感じになる。それが行きすぎるとサイコパスになってしまうが、営業職とは多かれ少なかれそういう要素を求められる仕事になる。

 共感力が低いと無神経さが目立つため営業の「質」は下がるかもしれない。しかし拒絶、叱責のダメージの少なさから、行動量は担保できるし、失注、解約、未達といった諸々の精神的ダメージが少ないので長く続けられる。営業の世界は一部の大企業を除けば「質」より「量」が求められる。

この点共感力が高い人が営業をやると、お客様のニーズを拾える強さ、誠実さによる信頼の獲得といった、営業の「質」の高さは確かにあるのだが、拒絶、叱責に弱いので行動量を打てない。そして失注、解約、未達といった諸々の精神的ダメージが大きいので結局は長く続かないだろう。

このタイプは営業よりもマーケティングや人事採用業務に向いていると思う。ただ枠が狭く供給過多なのでなかなか入れないが。

⑤責任感の低い人(他責性)

 営業職は責任感の低い人の方が向いている。理由は営業の仕事は不確定要素が多いため、責任感が強いと抱え込んで潰れてしまいやすいためだ。

見積や案件の提案は、無責任かつ適当にやった方が案件受注数自体は上がる。当然受注率は下がるが、スパムメール感覚でとりあえず見積は気軽に送っておくといい。お客様からすると迷惑なので社会悪にはなってしまうが、法律には反していない。見積提案件数は会社からもKPIとして把握されているため、むしろポーズとして自身の身を守るために必要な行為となる。

筆者がそうなりがちなのだが、お客様の迷惑や社会悪になることをためらい、ニーズが見込める確度の高い見積だけを提案するのはオススメしない。数字が取れないしKPIの印象も悪いため、サボっている社員とみなされ印象が悪い。

 それから契約の履行は他責性を発揮できる人が強い。クレームが発生した場合、その履行責任を自社の他部門・協力会社に躊躇なく追及できる人が営業職としては有能だ。

この点他部門や協力会社に気を使って、あるいは紛争・トラブルになることを恐れ、自分自身で対応したり自責として抱え込んでしまうとダメだ。さっきの自己犠牲型ギバーが営業職としてはダメな理由がここにもある。

2.営業職に必要な資質:探索志向

 営業職には探索志向が不可欠だ。着地点は考えずにとりあえず行動に移し、それによってもたらされた状況に臨機応変に対応できる人が向いている。MBTIでいうならばP型(知覚型)の人間が有利だろう。

営業職は自らの営業行為が原因で混乱・トラブルを自ら作り出す面がある。そのためルールを守って身動きが取れない人、リスクを懸念して考え込んだりする人よりも、行動を起こして進んでいく人の方が向いているのだ。

 この点計画志向の人は営業職に向いていない。予定の変更やアドリブ対応が頻繁にあるため計画など立たないし、着地点が見えてから行動するのではアクションが遅く、行動数も打てなくなるからだ。自ら混乱・トラブルを作り出す点も本能に反するだろう。計画志向タイプの人は非営業職向きだ。

難しいので少し詳しめに説明する。

①営業は「着地点」が無い仕事

 営業職は「着地点」を作らない仕事だ。とりあえず行動して着地した場所から臨機応変に対応していくことが求められる。

月ごとのノルマは達成できるかどうかはあくまで見込みでしかない。どんなに仕事ができる人でも、失注、解約、ノルマ未達という失敗は必ずある。受注や成約に確固たる理由はないし、反対に失注や解約に決定的な理由もない。その結果はあくまで偶然のもので再現性がない。

 それゆえ営業職は計画があまり意味をなさないことが多く、状況に合わせた臨機応変な対応・アドリブを要求される。多人数の利害が関わる大型案件とかなら話は別だが、小さい案件は上振れ下振れはよくある。

なのであまり考えこむことなく、とりあえずアクションを起こして探索行動を進めていく人の方が向いている。失注や解約は意外と許されることが多い。それ以上に受注や制約を取って数字を稼げば何も言われない。なぜなら同じ探索思考の人間が上司や管理職をやっているからだ。

②営業職は基本放置プレイ

 営業職に探索思考が向いているのはもうひとつあって、営業職は上司も同僚も概して面倒見が悪い。自分本位かつ数字(結果)しか見ない。そういう人間じゃないと営業職として生き残っていくことが難しい。

これは大学の部活やゼミでチームプレイが前提だった人や、総務人事などの他の職種から 左遷 異動して来た人は、そのドライさ・協調意識のなさに驚くと思う。筆者はブルーカラー出身ゆえにチームワークが必須だったため、やはりカルチャーショックが大きくて衝撃だった。

 なぜそうなのかというと、上司や同僚は同じく探索思考だからだ。上司はプレーヤーとして結果を出した人であるので、反対のマネジメントは才能がない。同僚はプレイヤーとして今結果に追われている人であり、他人に構っている余裕はない。どちらも個人プレイヤーに徹しており、評価項目は売上のみであるため、チームプレイ、情報ノウハウの共有、後進の教育には関心がないのだ。

③習うより慣れろ!

 営業職の仕事は、業務内容・職場の雰囲気共に放置プレイ気味だ。そもそも営業職は会社との結びつきが弱い職種である。これは技能職、現業職など他の直接部門職種も同様といえるし、支店・営業所勤務者はそれをより強く感じるだろう。研修や教育もないので、雑なOJTの後は自分で成長していくしかない。

営業職と会社との結びつきは「賃金」(お金)だけだし、会社に評価される要素も「売上」(お金)だけだ。本社などせいぜい入社時しか行かない。そのため管理部門職のようなチームやファミリー的な結びつきは希薄だし、会社からの扱いも軽く、当の営業職自身も会社(本社)に興味がない人が多い。なので正しく金の切れ目が縁の切れ目になる。

 末端社員ゆえの気楽さもあるが、反面「見て盗め」「習うより慣れろ」ができて「育たなくても育つ人」でないときつい面がある。これができるのは知識の体系化を必要とせず、アドリブやひらめきといった即興対応力に優れた探索型の人間だ。

計画型の人間は思考やパターン、段取りにどうしても頼るので、テキストなり研修なりを使って体系的学習の機会を設けないと役に立たないことが多い。ただし計画型が強みとする資格取得も営業職だと評価は薄いので、飲み込みの悪さ・要領の悪さが足を引っ張ることになるだろう。

3.営業職と親和性の高い人

①スポーツマン(体育会系)

 スポーツマンは営業職に向いている。企業が体育会系を重宝する理由のひとつがこれで、いずれ個別記事で詳しく書きたいと思う。

集団球技スポーツにおける「得点力」と営業職の「営業力」はノリが似ている部分があるし、個人球技スポーツや格闘技における「負けず嫌い」「オフェンス力の強さ」といったメンタル要素もこれに通じる部分がある。

またスポーツマンは「間合い」と「当て勘」に優れている。客先での交渉は腹の探り合い、駆け引きとなるので、相手の機先を制することができる人は強い。

②ホスト・キャバクラなどの夜職

 夜職も営業職には向いている。これも同様でノリが似ているからで、夜職とは売り物が違うだけで売上と競うという点は全く同じだ。営業職は常時人手不足の仕事なので経歴的にも問題はない。むしろ歓迎されるまである。

ホストであれば路上ナンパをできる人もいるが、これは営業スキル(特に新規開拓)に直結する。夜勤でなくお酒も飲まなくてもいいので楽だ。実際に夜職の「アガリの仕事」として生命保険や不動産販売の営業職を進めているサイトはよく見かける。

ただし夜職ほど稼げないので刺激が足りないかもしれない。これはスポーツ選手と同じで、若さが価値となる職業(=引退がある仕事)なので仕方ないだろう。

まとめ

 営業職は一般のサラリーマンとは求められる気質や性格が異なる職種となる。そのため適性を選ぶ仕事で、それゆえなり手が少なく常時人手不足であるため募集が多い仕事となっている。

とりわけ特殊なのは、協調性・共感力・責任感・計画性といった一般の社会人で歓迎される特性は営業職だとむしろ欠点になりえる点だ。逆にこういった部分でうまくいかない人、苦手意識のある人は、営業職を選ぶと職業適性にハマって活躍できる可能性もあるだろう。社会不適合要素があっても、多動性・衝動性・共感力が原因ならば、マッチングする仕事はそれなりにあるので悪くない。営業職はその典型的な職種だ。

 また向いていないとわかっている人でも、営業職を最初から選択肢から外すことはしない方がいい。文系(特に男性)でこれをやると、無職になるリスクが跳ね上がってしまうためだ。また将来的に非営業系職種を目指す場合でも正社員職歴は必要になるし、事実下積みとして重要にはなる。

実際筆者もINFJで向いていないが、なんとか生き残る程度にはやっている。適性を持たない人間がどうやって営業職として生き残るかという生存戦略については、別に機会で書きたいと思う。

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