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THE EQUALIZER 3 (邦題:イコライザー THE FINAL)を観て書かずにはいられなかった。

※1、2、3の内容や結末などについて、場合によってはネタバレと読めるような書き方をしてしまっているかもしれません。危ないと感じたら、回れ右でブラウザバックのほど、宜しくお願い申し上げます。


CMを観て、「あ、絶対映画館に観に行こう」と思った。

映画を観終えて感動と衝撃に震えながらこのnoteを書いている。
ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)の流麗にして無駄のなく、冷徹な手技の数々を大スクリーンで目の当たりにして欲しい。とにかく。早急に。直ちに。ASAP.(公開から2週間も経っていないのに公開終了してしまっている館もあるようですので…)

それまで名前を知ってはいたものの、前作前々作未履修のまま映画館へ飛び込み、息つく間もなく過去作を履修した。

“Who are you ? ”

1.”I think you can be anything you want to be. Chage your world.”(君はなりたいものになれるんだ。世界を変えろ。)"Do the right thing."(正しいことをしろ。)

2." Ah, "supposed to do" and "will do"are two different things, Miles. I guess anybody could do it, but nobody does, Miles. Ends up with everybody complaining. because nobody did what anybody could've done or should've done to begin with."(「するべき」と「する」。両者は似て非なるものだ。誰だってできるはずなのに誰もやらない。で、不満が溜まる。本当はできることを誰一人しなかったばかりに。というか、そもそもするべきことを。)

ロバートはとにかく優しい、優しすぎるのだと思う。
自身の歩んできた悪を裁くこと(裁いてきたのは悪ばかりではないとも言われたが)で血に塗れた道を絶ち、違う生き方をしていきたいと決断したからそうなったのか、それ以前から優しかったのかは分からない。
彼が仕事を通して関わり合う街の人々、近所にすむ家族、夜のダイナーで出会う彼女、ほんの少しだけ関わった人。彼らが困難な状態に陥た時、持てる力の限りを尽くして救い出し、彼らを引きずらんとする者と永久に関わることがないよう徹底的にこの世から排除する。
ロバートの凄みを眼の当たりしてしまったら、知ってもどうしようもないことであるのに”Who are you ?”と問いかけずにはいられない。

見出しの1、2から引用したそれぞれのロバートのセリフは、劇中で現状を嘆き、自分の置かれているこのどうしようもない環境は他者のせいだと他責し、何かをする前に諦念に縛られてしまっている青年に向けて(押し付けがましくなく)諭すようにとつとつと語られている。
おじさんがうるさいなぁと、身も蓋もない姿勢を彼らはとらなかったように見えた。
心のどこかにこの言葉たちがすっぽりとはまるところがあったかのように。
親族でも教師でも友人でもなく、近所に住むなんだか不思議な人からもらった言葉。
ロバートは語りかける時に憐れみの情などなく、ただ彼らに伝えたいという真摯な切実さが滲んでいるからグッと胸にくるのだと思う。
こんなご近所さんがいたらなぁ…。

3でお別れなんて言わないで…

冒頭のブドウ農園の空撮シーンは、3Dの上映回だったかな?と思ってしまうくらい立体的で奥行きのある映像だった。
イタリアの街は路地も狭い階段も生活の色が見える角もどこもかしこも美しく、見ていて飽きない。
朗らかで段々と打ち解けていく人々の心も爽やかに情景に色彩を加えてくれる。
それ故、蹂躙していく者たちの情け容赦なさが目に脳に突き刺さる。
どうにかならないのか、搾り取られ、食い荒らされるだけなのか。
しかし彼らにとってはこの街に目をつけてしまったのが運の尽きだった。
この街はロバート・マッコールが心寄せた街だったから。

「モブサイコ100」という素晴らしいサイキックバトルビルドゥングスロマン漫画がある。
作中の主人公であるモブくんは怒りが100%に到達すると想像もつかないほど強力なサイコキネシスを発現させてしまうのであるが、そこに至るまでに彼に積もり重なっていく怒りのパーセンテージが読者に数値化して見える表現がある。
本作はそのように目視できる仕組みはないが、明らかに要所要所でロバートの怒りのボルテージが蓄積され、パーセンテージが上昇し、それが100を振り切る瞬間が見えるのだ。
その時の取り返しのつかなさったらない。
ああ、やってしまったな。もう命乞いもする間も与えられず、しかも楽には旅立たせてもらえないフラグを樹立してしまったな、と。
振り切れた怒りはへし折られた関節たちに、ナイフに、ワインのボトルに、火かき棒に、銃弾に込められて悪に染め上げられてしまった者達の身体に降り注ぐ。
ロバートが敵に語りかける時の表情は暗く沈み、眼には彼らがいなくならないことでしか消火することのできない仄暗い炎のゆらめきを宿している。
その眼に捕らえられてしまったら、もう神に祈っても遅い。

密室での戦闘は、数多あるアクション映画の中でも最もスピーディで、完璧に、誰にも見られず、制裁を遂行する手際の良さは突出していると思う。この現場を誰がなしたのかは、金田一耕助にもコナンくんにも挙げられないのではなかろうか…。
誰にも讃えられない。でも、それでいい。
彼と彼の周りにいる人たちが幸せならそれでいいのだから。
ずっと平和で穏やかに暮らし続けて欲しい。

沢山の方に観ていただきたいと願うが、勧善懲悪のアクション映画の中でも、悪を断絶させるための裁き方に徹底した痛みと“分からせる”見せ方をしている…血も沢山出るし、身体がとんでもないことになるし、息を潜める静寂を切り裂く衝撃的なシーンがあったりするので、苦手な方に手放しにはお勧めはできない。
でも、虐げられ抜いた暗闇を抜けた先に見えるカタルシスで胸がいっぱいになるアクション映画はなかなかないと思う。


鑑賞後購入したパンフレット。税込880円。


デンゼル・ワシントン、そしてアントワーン・フークア監督のインタビューが収録されている。
MUST BUY。作品世界のもっともっと浸りましょう…。

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