母の話 - 謎の歌
母から教えてもらった謎の歌がある
「馬子は 馬子歌 下り坂」「も一度聞きたい 馬子の歌」の部分は一番と二番でメロディーも音符の数も違って、なかなか凝ったつくりになっている
人に聞いても誰も知らず、検索しても出てこない
母自身も祖母から教えてもらった歌なので、少なくとも1940年あたりには存在していた歌だと考えられる
他にも手毬唄風の「おいらの後ろの おっさかさかさか 赤坂どのよ 四谷でどのよ 四谷赤坂麹町」というのもある
これは検索したら出てきた、群馬県の手毬唄だった
一部歌詞が微妙に違うのは口伝ゆえだ
というのもあるのだが、どこをどうとってもひどくいい加減な感じなので、これはおそらく祖母が独自につくったでたらめな歌だろう
祖母は新聞の見出しの「し」に横棒を2本足して「も」にして喜んだり、私の絵本の桃太郎にメガネを書き足してめんめんメガネの良いメガネにしたりと、そういう人なのだ
しかし母の姉はこの歌の出どころ探しに妙に乗り気で「らいらいのあたりが中国っぽい」と、何かで知り合った中国人に聞いたらしい
中国人は不審な顔で叔母の歌を最後まで聞き届けると「知らない」と首を横に振った
母から教わったことであと一つ、思い出した
口上である
という調子で続く、ヤクザ者の自己紹介のテンプレートだ
幼稚園児にサイコロ賭博の実演を見せようとした祖母に「変なことを教えないで」と言った本人がこれなのだから世話はない
これを、犬の散歩の途中で犬がうんこをするのを待っているときに教わった
母はわざわざ腰を落として手のひらを差し出したそれっぽいポーズまでとっていた
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