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公に開かれる皇居の姿

前回の「再現マップと徒歩で見る江戸城と皇居」では江戸城・皇居の姿を見ていくに当たり、その足がかりとして全容を見ていきましたが、今回は特別な時にしか見られない皇居の姿を見ていきます。もちろん ” 一般人が可能な範囲内で ” です。もし今後皇居へ足を運ばれる予定がありましたら、参考にしていただけるときっとお役立ちできると思います!




一般参賀の参列者は、例年8万人前後も訪れる

一般参賀

皇室に向け国民が祝意を表すことができる機会が一般参賀です。終戦直後の1948年から始まった皇室行事のひとつで、毎年1月2日と天皇誕生日、稀な例としては皇位継承があった際も行われます。
必須アイテムの日本国旗は、馬場先門や大手町駅周辺、皇居前広場でも配っています。大体みんな手荷物検査あたりでクシャクシャかクルクルにしてしまうので注意したいところ。


通称眼鏡橋と呼ばれる石橋とその奥の鉄橋まで人でギッシリ

写真は2017年の新年一般参賀の様子です。全5回に分け行われるのですが、まず注意したいのが門限。最終の14時10分を過ぎると受付を強制終了され、何人たりとも入ることができません。現地でも警察官のアナウンスがあるのですが、まさかこんなに厳格だなんて想像だにしません。自分の後ろに居た人たちの悲しみの声ったら。。。
皇居前広場で手荷物検査と金属探知を受け、石橋の先にようやく正門鉄橋が見えてきます。いわゆる「二重橋」の呼称は、鉄橋に建替えられるまでは13メートルの高さと強度を両立するため木造の橋を二段重ねしていたことに由来します。石橋のアーチが2つあるからではないですよ。


毎年必ずと言っていいほど、元日と2日の東京はお天気がいい

鉄橋を渡って中門の先に宮殿と称される巨大な建物があるのですが、その東側の一部を長和殿といい、ここに皇室方がお出ましになります。その手前の東庭は縦44m横220mほどの広さがあり、1度に2万人が収まります。前方ならお姿が見えやすいですが、後方は全体の雰囲気が楽しめるので、場所取りはそんなに気にしなくても良いんじゃないかな。
話変わりますが、意外なのが「宮殿」の発音は”東電”と同じで頭にアクセントが来ます。


2017年の新年一般参賀の様子

お出ましになる突き出た部分は、なにか風雅で特別な呼称があるかと思いきや宮内庁でも「ベランダ」と呼んでいます。庇の届か無いところまで迫り出しているため、景色がガラスに反射して肉眼ではお姿が見えづらいです。行く時には双眼鏡が必須、お顔までハッキリと撮影したい場合は200mm以上の望遠レンズがあると安心です。


馬車には丸の内口駅舎が良く似合う

信任状捧呈式

新任された外国の特命全権大使(駐日大使)が、元首から託された信任状を天皇陛下に捧呈する儀式です。この時、長和殿南車寄と東京駅丸の内口貴賓玄関への送迎があり、その様子がたまに見られます。


こちらは儀装馬車4号

新任大使は自動車か儀装馬車かを選べるのですが、圧倒的に儀装馬車が選ばれるので自動車を見ることはほぼ無いらしいです。※
儀装馬車は1号から4号まであり、鳳凰を頂く最も壮麗なのが1号で即位の礼などに、つづまやかな2号はそれ以外の儀式、同型の3号は立太子の儀などに使われます。そして信任状捧呈式で大使が乗られる馬車は4号で、この赤い座馭(運転席)が特徴です。


観に行くなら個人的には初夏がおすすめ

撮影したこの日はチリとイタリアの2ヶ国の捧呈式があったため、2度にわたり送迎がありました。頑張れば皇居前広場と東京駅前と両方で儀馬車走行を拝見できます。


皇居前広場から見渡す皇居が一番綺麗ですね

捧呈式が無い月もありますが、おおよそ月2回ほど、おおむね1日に2ヵ国執り行われるので見られるチャンスは結構あります。予定は宮内庁の「宮中のご公務など」で公表されます。警備上やアフターコロナの影響もあると思うのですが、最近は当日にならないと公表されないので、都民であっても狙って見に行くことはほぼ不可能。


坂下門と宮内庁庁舎を背景に颯爽と馬車が現れます

大使を乗せ皇居へ送る往路と、東京駅まで送る還路は皇居前広場から、空の馬車が東京駅まで大使をお迎えする時は坂下門から出てくるようです。


令和元年に開催された御即位パレードの様子

御即位パレード

2019年5月1日に新元号「令和」に改元され、即位の祝福を受ける「祝賀御列の儀」いわゆる御即位パレードが11月10日に開催されました。天皇皇后両陛下を乗せた車両が皇居から赤坂御所へと移られ、その沿道には11万9,000人もの国民が集まり祝福してました。
当初は10月22日を祝日に定め催行される予定でしたが、東日本台風の被害などを理由に延期となっていました。


桜田門周辺だけでも10,000人は超えてたと思う

15時ごろお通りになる予定の中、12時の手荷物検査開始よりも早い11時44分に霞が関二丁目交差点検査所に並びました。すでに200人は居たかな。二手に分かれた検査所では、左に並ぶと警視庁前、右に並んでいたら旧法務省庁舎前でした。並んでみないとどこに割り振られるかわからない上、あっという間に私の後ろにも大勢が並んでいたので移動する気にはなりません。
それでも、ほぼ最前列に到着したのは12時49分で、混雑し出したのが14時ちょっと前。


とても素敵なお姿でした

14時30分から吹奏楽が始まると気持ちも高鳴ります。15時04分に彼方から歓声が聞こえ始め、皇宮警察の黒服を着た白バイとサイドカー付きの黒バイが通り、周囲の歓声が最高潮に達したその時、センチュリーコンバーチブルが現れ両陛下のお姿が見えました。


振り返ったら国会議事堂の先まで人だらけ

当初お通りになるルートの候補は3ルートありました。現在の上皇陛下が平成の代替わりの際に使われた、三宅坂から青山通りを通過する「平成ルート」、現在の天皇陛下が皇太子時代のご成婚時に使われた、新宿通りから迎賓館を通過する「ご成婚ルート」、そして新たに考案された霞が関・永田町・首相官邸付近を通過する「新提案ルート」でした。
実際には平成ルートを微修正した国会議事堂門前から国会図書館前を抜けるルートでお通りになられています。


旗振りや声掛けよりもみんな撮影に夢中

平成から令和へ、新しい時代の幕開けに立ち会えた瞬間を納めようとするツールもまた新時代になっていますね。朝からお天気はとても良かったのですが、時間が経つにつれ空が明るくなり、好天に恵まれたすばらしい一日でした。


即位の為だけに設営された大嘗宮

ちなみに即位パレードの後、11月21日から12月8日までの間に江戸城本丸跡では、大嘗祭が執り行われた祭場「大嘗宮」が公開されていました。
建設場所は将軍の生活空間があった本丸中奥のあたりです。例年行われるのは新嘗祭ですが、大嘗祭は即位の年のみなので、一代一回限りです。


春季と秋季の2度チャンスがある乾通り公開

乾通り一般公開

皇居東側にある乾通りは、2015年に現在の上皇陛下傘寿のお祝いに特別公開されましたが、これがとても好評だったことから翌年以降、毎年期間限定で特別公開されます。年に2回、3月下旬から4月初旬に公開される春季一般公開と、11月下旬から12月初旬に公開される秋季一般公開があります。


西桔橋門から見た乾通り

公開期間は例年、おおよそ10日間です。
一般参賀の時も乾通りが解放されるのですが、通行できる橋やエリアが毎回微妙に異なります。上の写真は西桔橋門(にしはねばしもん)から撮りましたが、同じ秋季公開であっても、封鎖されている時と解放されている時があります。


お城好きなら是非注目したい

この乾通り公開では、普段見ることのできない宮内庁庁舎、本丸と西の丸の間にある蓮池濠や雄大な三日月濠と石垣群が見られます。
一方、来訪者用のトイレに加え仮設トイレまで増設されているせいで、唯一現存する「富士見多聞」の存在に気づかれず、見落とされがちなのですが、常設トイレの中央から建物の反対側に素通りできるようになっていて、出て見ると圧巻の高さを誇る石垣と共に富士見多聞を見ることができます。


御養蚕所のあるこの地は紅葉山と呼ばれています

乾通りの中ほどに道灌濠という大きなお堀が見えてきます。その堀の左手側は初代家康を祀った東照宮と2代秀忠から6代家宣までの霊廟が置かれていた「紅葉山」と称される小山があります。ほぼ森になっているので、お堀側から山は見えません。
江戸城が創建される以前の紅葉山周辺には、今の平河天満宮・山王日枝神社・六本木久國神社・渋谷千代田稲荷神社・神田江戸神社、浅草秋葉神社・東陽洲崎神社などが鎮座していたとされ、さらに紅葉山に創建した寺院も含めると枚挙に暇がないほどです。驚異的なパワースポットのはずですがスピリチュアルな方たちが江戸城を語ってるとか見たことない。


普段は宮内庁関係者しか通行できないのが桔梗門

皇居一般参観

あまり広く知られていませんが、実は皇居の中を参観できるチャンスがあるんです!まず一般的な参観は、旧江戸城本丸にあたる皇居東御苑内で、日曜日・月曜日を除き9時から17時までで、手荷物検査さえ受ければこちらはだれでも入園できます。
それとはまた別に設けられているのが「皇居一般参観」。こちらは皇居宮殿地区と呼ばれる普段立ち入ることのできないエリアを見学できるというものです。こちらも誰でも参加できるものなのですが、若干条件があります。


桔梗門の先にある窓明館で手荷物検査やツアーの説明があります

まず、事前予約申込をするか、当日開始1時間前に桔梗門前まで来て列に並び140人の定員以内に入る事。そして他とは違い一般参観では、身分証の提示と氏名・年齢・住所を記入した用紙を提出する事です。
外国の旅行ガイド誌に掲載があるのか、日本人よりも外国人旅行客が多い印象です。日本語・英語・中国語・フランス語・スペイン語話者のガイドさんが居て、それぞれグループに分かれて説明を受けながら進みます。


近づくと天守閣と思える程でかい

富士見櫓は新年一般参賀の時も見ることが可能ですが、通常は立ち入ることができない宮内庁庁舎前にあります。
現存する3つの櫓の中で唯一近づいて見ることができます。江戸城内で最も高い位置にある櫓で、当時は本当に富士山まで見渡せたそうです。ちなみに本丸側から見ると、、、


本丸側からも近づくことができます

こんな感じ。ジャングルのようになってて何も見渡せないし、やはり下から仰ぎ見る方がカッコいいです。
江戸城を最初に建てた太田道灌の歌に「わが庵は松原つづき海近く富士の高嶺を軒端にぞ見る」というのが残っていて、この”軒端”というのが、道灌が江戸城内に建てた静勝軒(所謂天守閣っぽいもの)ではないかと思われます。そしてその静勝軒は富士見櫓の位置にあったのではないかともいわれています。


皇居宮殿

一般参賀も含め、様々な儀式に使われる宮殿。めちゃくちゃ広くてデカいです。ガイドさんに拠れば、手前にあるのは「松の塔」といい、式典のある夜に点灯するそうです。また写真右側の入口を入ると赤絨毯を敷いた階段があり、内閣の組閣があった際に記念撮影が行われる場所で、改造内閣ではやらないそうです。


儀装馬車が通ることも

私が参加した時は、たまたま信任状捧呈式のスケジュールが重なっていたため、特別に宮殿で見させていただくことができました。皇宮警察や宮内庁車馬課の方々の凛とした雰囲気や、普段立ち入れない皇居の一部に入って間近に見られるのはとても貴重です。もう、一つひとつの所作さえ儀礼的で厳かです。この時乗車していたコンゴ大使は、逆に私たちが見守っている様子を撮影されていました。


正門鉄橋から見た石橋(めがね橋)と皇居前広場

一般参賀の時もこの橋を渡ることはできますが、群衆にまみれて移動できないし撮影どころではありません。なのでこのツアーがおすすめ。
これ以外にもうひとつ、皇居に入れるツアーがありまして、公益財団法人菊葉文化協会(宮内庁の一部みたいな事業団体)の主催する「皇居参観」というのもあります。旧枢密院庁舎とかはそっちで見られるみたいです。

おわりに

皇居を歩く 第2弾「公に開かれる皇居の姿」はいかがでしたでしょうか。こういう機会が一般に向けて設けられているということを知らないと、なかなかお目にかかれない貴重なものばかりですが、知っていれば出会えるチャンスはグッと近づくと思います。
もっとこういうところが見たかった!などご要望やアイデアなどありましたら、ぜひご教示ください。

※文中の「らしいです」としている部分は、宮内庁のウェブページ・冊子類または皇居参観時のガイドから聞いた話に由る情報です。
撮影日:一般参賀2017.01.02、信任状捧呈式2017.05.14、2017.12.21、御即位パレード、2019.11.10、大嘗宮一般公開2019.11.23、乾通り公開2017.12.07、2023.11.25、皇居一般参観2023.12.27


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