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過剰に群がってくる時代

食べログの百名店の飲食店に行ってみると、だいたい行列になっていて店に入れない現象に直面する。

近年の『サ道』に端を発するサウナブームの影響か、ネットで調べた評判がいいサウナに行ってみると、だいたいサウナ室の中に人が溢れていて、サウナ室や水風呂の前に全裸の行列ができている始末である。

いずれも、スマートフォンの普及の影響と考えている。「流行りすぎ問題」である。万人がインターネットに接続された結果、高速の情報のやりとりが生じ、人気店の情報が一気に拡散する。そして、不特定多数の人間が一気に集まってくる。

ネット炎上も一瞬だから、評判の暴騰も暴落も一瞬で訪れる。そんな、人が集まってくるスピード感が、これまで生きてきた時代とまるで違い、年々加速している。2000年以前には年単位で醸成された口コミが、2021年の今は一晩で形成される。2010年頃から乱高下の傾向が顕著になった株式市場でも同じことが起きているように思われる。人、店、企業、だいたい同じ現象が起きている。

自分もまたその影響下にあり、件の百名店やサウナを訪れたわけだが、そこでの不快な体験が、己を見つめ直す契機になった。スマートフォンで情報を収集し、評判のいい場所に行ってみるという、そんなライフスタイルに疑問を持ち始めている。昔から違和感は抱いていたが、決定づけられた感がある。

ネットを介して、過剰に群がってくる時代、過剰に叩かれる時代。こんな時代に充実した生を送るには、不特定多数に気付かれぬ場所で、こっそり個人的に楽しむことができる条件を整えていく必要があるだろう。厳選した友人、厳選した馴染みの店、個人的なささやかな楽しみ、そういったものを手に入れるための努力が、いっそう必要になると思われる。「こっそり」が2020年代を生き抜くための最重要ワードとなるだろう。

写真の誰もいない入り江で30分ほどボーっと過ごすのは、だいぶ良かった。

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