見出し画像

「五〇〇書店」Vol.03|〈チーム『文化人類学の思考法』〉が選ぶ「これから読む500冊」


蔦屋書店と若林恵率いるコンテンツレーベル黒鳥社が贈るポップアップブックストア「五〇〇書店」(2019年11月23日(土)〜12月14日(土)、代官山 蔦屋書店にて開催)の第3回。今回は店主に、松村圭一郎さんをはじめ、話題の本『文化人類学の思考法』(世界思想社)に参画された13人の文化人類学者のみなさんを〈チーム『文化人類学の思考法』〉としてお迎えして開催します!文化人類学者は、旅の達人でもあります。旅と読書。未知なる世界に出会うことにおいて、それは似ているのかもしれません。旅する思索者たちのお供となるのはいったいどんな本でしょう。気になります!

【「五〇〇書店」とは】
蔦屋書店とコンテンツレーベル黒鳥社の共同企画によるポップアップブックストアです。毎回変わる「店主」(個人、または集団)が、新刊書を中心に、再読したい本も含めて「これから読む本」を500冊選出し(古本はNGとします)、それを期間限定で販売いたします。好評だった第1回、第2回に引き続き、第3回目も代官山 蔦屋書店の一角をお借りして開催いたします。また、選書リストは無料公開はせず、オンラインで有料販売いたしますので、そのラインナップを無料でご覧になりたい方は、ぜひ店頭にお運びいただけましたら幸いです。

〈チーム『文化人類学の思考法』〉のみなさんを店主にお迎えした第3回は、2019年11月23日(土)〜12月14日(土)まで、代官山 蔦屋書店 1号館1階にて開催いたします。

営業時間などにつきましては、下記ウェブサイトをご覧ください。
http://real.tsite.jp/daikanyama/floor/shop/tsutaya-books/

【選書テーマ】
文化人類学者はこんな本たちと世界を旅する

【選書の意図】

「距離」との対話|松村圭一郎

文化人類学は、現場に長く、ただ「いる」ことを大切にしてきた。フィールドワークは、計画に沿ってたんたんと調査を進めるものではない。偶然の出会いに身を任せ、計画にはない予想外のことが起きるその瞬間に立ち会うために、長い時間を過ごす。行く前から机上で計画できる調査なんておもしろくない、とわかっているからだ。文化人類学者の仕事の大部分は、そうやってひたすら「待つ」ことにある。

朝、目覚めて、顔を洗い、みんなでご飯を食べ、コーヒーを飲み、さて今日は何をしようかとあたりを見渡す。誰かがどこかに出かけると聞けばついて行き、近所で何か起きれば、カメラとフィールドノートを手に駆けつける。文化人類学者は、そうやって現場で起きる出来事になんでも首を突っ込もうとする。

でもだいたい、なにも起きない時間のほうが長い。そんなとき、空の色にうっとりしたり、聞こえてくる鳥の声や乾いた風の音に耳をくすぐられたりしながら、本を読む。日が暮れて、みんなが寝静まったあと、ハイエナの遠吠えやサルのざわめきのなかで、懐中電灯をともして本を読むこともある。

そんなフィールドでの読書体験は、とってもシュールだ。

エチオピア高原の村にいながら、川崎のラッパーたちのルポルタージュを読んで、その遠い距離に目眩がしたり、柳田国男の山人の話が妙に目の前の現実とシンクロしたり、近くで起きた反政府デモの鎮圧のニュースをラジオで聞きながら、水俣で起きたことの普遍的な意味がぱっとわかったような気がしたり・・・・・・。

夢うつつのなかで、そんな「距離」との対話をつづける。大半は、現実の複雑さの前でたじろいで本の世界に現実逃避しているのだけど、どこかでそんな遠い距離の本たちに触発されてアイディアの芽が育まれるのを待っている気持ちもある。

今回の五〇〇書店は、2019年4月に刊行された『文化人類学の思考法』(世界思想社)の執筆者13人が本を選んだ。ずっと読みたかったけどまだ読んでいない本、フィールドにもっていって読みたい本、研究とは直接関係ないけど気になっている本、といったコンセプトから500冊の本が選ばれている。

リストを見ると、文化人類学者の雑種性がよくわかる。フィールドでなにごとにも首を突っ込む習性そのままで、ひとつのトピックやテーマにまるでおさまらない。歴史や民俗から、テクノロジー、科学史、芸術や哲学、考古学に自然科学、チョコレートにロボット、蛇、新宿2丁目、モラル、ユートピア・・・・・・。

世界各地を調査する文化人類学者の鞄には、現地でお世話になる人へのたっぷりのお土産と、いくらでもある「待ち」の時間に読むための本が詰まっている。チーム『文化人類学の思考法』五〇〇書店で、文化人類学者の鞄の中の本たちとの偶然の出会いがあなたにとって予想外の化学反応を引き起こしてくれることを願っている。 

チーム『文化人類学の思考法』を代表して
松村圭一郎

画像1


【チーム『文化人類学の思考法』がこれから読む500冊】

(*品切れや入手困難なものがある可能性を鑑みて、500冊以上を選び出していただきました。上記のうちからおよそ500冊が、11月23日から代官山 蔦屋書店の「五〇〇書店特設コーナーにて販売されています。)


1. 性食考|赤坂憲雄|岩波書店
2. 超芸術トマソン|赤瀬川原平|ちくま文庫
3. 想起の音楽|アサダワタル|水曜社
4. 国富論国の豊かさの本質と原因についての研究(上・下)|アダム・スミス|日本経済新聞社出版局
5. ナチス 破壊の経済1923-1945 (上・下)|アダム・トゥーズ|みすず書房
6. 曝された生チェルノブイリ後の生物学的市民|アドリアナ・ペトリーナ|人文書院
7. 不平等の再検討潜在能力と自由|アマルティア・セン|岩波現代文庫
8. アイデンティティが人を殺す|アミン・マアルーフ|ちくま学芸文庫
9. 前略、離婚を決めました|綾屋紗月|イースト・プレス
10. コミュニズムの仮説|アラン・バディウ|水声社
11. 人民とはなにか?|アラン・バディウ、ピエール・ブルデュー、ジュディス・バトラー、ジョルジュ・ディディ=ユベルマンほか|以文社
12. あなたの体は9割が細菌|アランナ・コリン|河出書房新社
13. スピノザと動物たち|アリエル・シュアミ&アリア・ダヴァル|法政大学出版局
14. ニコマコス倫理学(上・下)|アリストテレス|光文社古典新訳文庫
15. ハンセン病療養所を生きる|有薗真代|世界思想社
16. 情念の政治経済学|アルバート・O.ハーシュマン|法政大学出版局
17. 方法としての自己破壊|アルバート・O.ハーシュマン|法政大学出版局
18. 最後のソ連世代ブレジネフからペレストロイカまで|アレクセイ・ユルチャック|みすず書房
19. インドネシアの農村工業ある鍛冶村落の記録|アン・ダナム|慶應義塾大学出版会
20. 生まれながらのサイボーグ心・テクノロジー・知能の未来|アンディ・クラーク|春秋社

ここから先は

17,237字

¥ 980